あのよう、知ってりゃーすか
税のミニ歴史講座
大島良満さんのお話し
(元愛知県評役員・消費税をなくす愛知の会代表世話人)

【1】税の誕生 【2】日本の税の歴史 【3】酷税と民主主義
【4】所得税のはじまり 【5】日中・太平洋戦争と税 【6】間接税の歴史

【5】日中・太平洋戦争と税
 
 日本のサラリーマンは「税金に弱い」といわれとるわなも。
給料から税金を先取り天引きする源泉徴収制度のせいだげな。

戦争税制として発足した源泉徴収制度

 源泉徴収制度はなも、イギリスで考え出された徴収制度だわー。
 所得税が導入されたとき、イギリスの労働者階級はなも、どえりゃーひどい労働条件ではたらかされとったんだと。
 賃金は、日給か週休で支払われとったんだが、年間所得を計算することは出来なかったんげな。そこで、取りはぐれのないように、賃金を支払うときに、使用者に税金の天引きをやらせたんだと。20世紀の初め頃だったげな。ドイツではナチス政権が採用したんだと。日本では、中国への侵略戦争の拡大にともない、戦費調達の有効手段として、戦争税制として1940年(昭和15年)3月31日から実施されたんだわー。
 この源泉徴収制度の実施によって、税制を変えんでも大幅な税収増があったげな。
 戦後、アメリカは、日本の税制を改革しようとシャウプ博士を中心とする調査団を送ったんだわな。「シャウプ勧告」は、年末調整を含む源泉徴収制度は「税金の使い方について納税者の関心を弱める非民主的な制度」だと批判したんだと。大蔵省側は「徴税コストが安い、国民に税知識がない、誰も文句を言ってこない」などと、調査団側に説明してごまかし、現在まで続いとるんだわー。

年金積立金や郵便局の定期預金まで戦費に

 日中戦争、太平洋戦争の戦費調達には、この源泉徴収制度や、1942年(昭和17年)から実施されとる年金の積立金、愛国債券といわれた国債、郵便局の定期預金などが次々と戦費に使われたんだわなも。
 1936年(昭和11年)、広田弘毅内閣の大蔵大臣の名前から、「馬場税制」といわれる大増税計画が出されとる。
 消費税の原型ともいえる売上税の導入案もあったが、反対意見が強くて実施することは出来なかったんだと。
 敗戦の前年には、勤労所得税が50%も増税されとる。戦争はなも、国民の生活を大きく圧迫したぜーも。
 1ヵ月当たりの一般会計歳出に比べてみると、日清戦争では3・7倍、日露戦争では4・15倍、日中・太平洋戦争では9・61倍も税金が戦争代につかわれとる。
 だから平和憲法では、戦争はやらん、福祉・文化を大切にする国をつくるんだと、みんなできめたんだわー。
 「消費税、憲法変えれば戦争税」に絶対させてはいかんでなも。戦争はなも、どえらりゃーもうかるんだと。死の商人ともいわれとる連中が、昔も今も、権力と組んで愛国心とか、愛国者の仮面をかぶって暗躍しとるぜーも。
 気いつけんといかんわ。

(つづく)