シリーズ 消費税実施20年目の今を追う(4)
雇用を悪化させ、グローバル企業の繁栄を支えた消費税
【1】消費税の逆進性と貧困 【2】日本の消費税は5%でもすでに世界一の酷税 【3】日本の軍拡ささえる消費税
【4】 雇用を悪化させ、グローバル企業の繁栄を支えた消費税 【5】 消費税増税を競い合う政党による政権選択では、増税はストップできない  

【4】 雇用を悪化させ、グローバル企業の繁栄を支えた消費税

この20年間に雇用はどう悪化したか
 この20年間、非正規雇用 の労働者は817万人から1737万人に、2倍以上に激増し、労働者全体でその比率は34%にもなっています。 (図表1)
 正規労働者と非正規労働者の賃金には大差があります。とくにパートタイマーの賃金の低さは目に余るものです。 (図表2)
 非正規労働者の激増は、労 働者派遣法の改悪によっても たらされました。85年に労 働者派遣は原則禁止、対象業 務は限定、としてつくられま したが、99年に対象業務は原則自由化され、さらに04年から製造業にも派遣が導入 されたからです。
 それは日本経済団体連合会(経団連)の強い要求によるものでした。雇用する労働者の間に差別を持ち込み、労働組合の力を弱めて、賃金を大幅に引き下げることに大きな狙いがありました。この20年間、賃金引き下げによって、大企業の収益はバブル期以上に大きくなりました。
 非正規雇用の労働者は、安い賃金で働き、いつでも首を切れる。健康保険・厚生年金・雇用などの社会保険料の企業負担もない。企業の利益が大きくなるのも当然です。

非正規労働者の増加を税制面から推進した消費税
 大企業に奉仕する政府は、企業のリストラに補助金を出し、企業が非正規雇用の労働者で代替することを援助しました。さらに、消費税が非正規労働者増加を税制の面から推進したことも事実です。
 消費税は、売上げにかかった税額から、仕入れにかかった税額を差し引いて、差額を納税する仕組み(仕入税額控除)になっています。つまり粗利(あらり・正規労働者の賃金はこれにふくまれる)にかかるのが消費税です。
 正規労働者を非正規労働者に切り換えれば、賃金は外注費となり、消費税を控除される外注商品に化けることになります。
 ですから企業にとっては消費税が、正規労働者を減らし、非正規労働者に切り換える動機の一つになることは確かです。
 そのうえ、輸出は免税になっていますから、輸出依存度の高い大企業は「輸出戻し税」の増加となって、莫大な利益を上積みすることになります。トヨタ自動車は、この仕組みによって〇五年には一九六四億円も還付されています。大企業にとって消費税は「おいしい税金」であり、税率が上がれば、こうした利益 はさらに増えるのです。

消費冷え込ませ内需を抑制した消費税
 日本経済はバブル期の後遺症である不良資産問題を処理し、自公政権の「構造改革」によって、長期の「好況」を続けることができたと大宣伝されてきました。しかし、国民の目線で見れば、事実は違 います。
 たしかにグローバル大企業は膨大な利益を上げ「好況を謳歌」しました。しかし、その背後にはワーキングプア(働く貧困層)の急増、生活保護世帯の増加、貯金の無い世帯が二割を超えるなど、格差と貧困の広がりが深刻になりました。額に汗した国民の労働で、大企業がいくら輸出の増大で外貨を稼いでも、それは国民の生活向上による内需の拡大につながらず、逆に国内市場を縮小させ、今日の不況となっているのです。
 内需の縮小と、消費税のかかわりは重大です。国税庁の統計によれば、サラリーマン(所得税が源泉徴収される正規雇用労働者)の平均年収は、橋本内閣が消費税を5%に上げた97年度には467万円 でしたが、それ以降下がり続 けています。消費税率の5%への引上げがデフレ不況の引 き金となり、賃金総額減少の一因になったのは事実です。
 OECD(経済協力開発機構)は、08年7月に「対日経済審査報告書2006」を公表しました。それによれば、日本はアメリカについで第二の貧困国であること、税と社会保障を通じる富の再配分の比率がきわめて低い国であることを指摘しています。それは雇用の悪化をつくりだした自公政権に対する厳しい批判です。

増税ストップ  生活費非課税に
 「02年2月からの長い景気拡大局面が結局は外需頼みだったことの限界を浮き彫りにした…(景気回復のためには)…規制改革や起業の促進など中長期的な『内需力』を高める政策を強化するのが本筋だ」(日本経済新聞、8月8日、社説)。
 「(景気対策のためには)GDPの六割前後を占めている家計消費を増加させることは需要の増加につながり、経済成長に不可欠であることは言うまでもない。成長のために家計所得を増加させること、すなわち、労働者の賃金を上 げることである」(橘木俊詔同志社大学教授、「週刊東洋経済」3月1日号)。
 多くの識者が、「構造改革」政策を是正し、国民所得を拡大し、内需中心経済に政策を転換せよ、と述べています。
 日本経済の危機を打開するために求められる税制面での政策は、国民生活をまもるために、消費税増税計画をストップさせるとともに、日常生活に必要な商品やサービスに消費税をかけない、消費税率も下げる措置をとることです。
 また、非正規労働者を商品扱いにするような税制の適用を許さないことも、非正規労働をなくすことを促進するでしょう。労働者の所得の拡大は、国民の消費力を大きくし、景気回復の力になります。消費税をなくすことをめざす私たちの運動は、日本経済の危機を打開するために重要な役割をはたしているのです。
(つづく)