シリーズ 消費税実施20年目の今を追う(3)
日本の軍拡ささえる消費税
【1】消費税の逆進性と貧困 【2】日本の消費税は5%でもすでに世界一の酷税 【3】日本の軍拡ささえる消費税
【4】 雇用を悪化させ、グローバル企業の繁栄を支えた消費税 【5】 消費税増税を競い合う政党による政権選択では、増税はストップできない  

【3】日本の軍拡ささえる消費税
 
イージス艦「こんごう」
 日本の軍事費はいまや、年5兆円に迫り、国民の血税が注がれています。自衛隊はその軍事費で最新の装備を持ち、憲法違反の海外派兵など、アメリカと一緒になってたたかう軍隊に変貌してきています。かつて消費税導入の時、当時の竹下首相が「これで国際社会に貢献する日本にふさわしい安定的な財源が確保できる」とアメリカで発言したことが現実のものになってきました。消費税がどのように軍事費とかかわるのか、まず見てみましょう。
 軍事費は、消費税導入前の1988年には3兆7千億円だったのが、その後増額され、19年間で増加額累計は19兆6千億円にもなります。この間の大企業への法人税の減収分160兆5千億円と合わせれば、180兆円となり、この間の消費税収188兆円とほぼ一致します。消費税は法人税減税の穴埋めと軍事費に消えたといっても過言ではありません。 軍事費は何に使われたのでしょう

(1)五分の一が兵器・弾薬購入に
 それでは毎年5兆円近くの軍事費は何に使われているのでしょう。07年度の予算をみますと、44%が「人件費・糧食費」で、兵器購入などの「物件費」が56%です。この物件費のなかには、兵器・弾薬購入費が9千億円前後含まれており、軍事費全体の五分の一を占めています。この費用で兵器や弾薬などが購入され、今や自衛隊は「世界で有数の戦力をもつ大きな軍事組織」に変貌しています。
 たとえば、航空自衛隊はF15戦闘機(1機=122億円)を2百機以上、ソ連原潜を探知・攻撃する目的で導入されたP3C対潜哨戒機(1機=135億円)を100機も保有、ソ連の攻撃に対して導入された90式戦車(1輌=10億円)は300輌にも達しています。
 また、残虐兵器として廃絶が叫ばれているクラスター爆弾まで保有しています。

(2)海外で戦える装備をつぎつぎ
 海上自衛隊は最新鋭イージス艦(最高は1隻1400億円)を6隻も導入して世界有数の海軍力となっています。このイージス艦に弾道ミサイルを撃ち落す迎撃ミサイルを装備するなど、ミサイル防衛のため、5年間で7347億円も支出し、2011年までに1兆円も費やす計画です。
 さらに、15年、日米の間で、自衛隊が専守防衛から、「世界規模の防衛」に踏み出すことが、合意された結果、大型輸送艦(1隻=500億円)や対空ミサイルや対潜ミサイルを装備した護衛艦(1隻=1050億円)、空中給油機や空中警戒管制機などが購入され、海外で戦える軍隊への再編強化がすすめられています。

(3)アメリカへの大盤振る舞い その1
―米軍再編強化・グァム  移転などに八年間で三兆円もの血税

 いま、米軍の再編強化のための費用負担が大きな問題になっています。
 小泉内閣が06年5月の日米合意で、米軍のグァム移転費7千3百億円をはじめ3兆円の軍事分担を引き受けたことによります。
 沖縄の海兵隊をグアムに移転させ米軍を再編強化する計画で、日本政府はそれにむけて1万人分の米軍住宅建設(1戸7千万円も)、上下水道、電気設備、廃棄物処理などに7千3百億円も負担するというものです。アメリカ側がつくる家族住宅は約4千8百万円ですから3割以上も水増しされ、過剰請求となっています。  このほか沖縄名護市沖への新基地建設、岩国への空母艦載機移転、横須賀基地への原子力空母配備をはじめ、米軍基地の増強計画などの経費として、合計3兆円もの負担を約束したのです。

その2
―他国に比較してダントツの駐留経費

 日本政府は、日米安保条約にもとづいて米軍の駐留経費を負担しています。その額は毎年6千億円で米兵1人あたり1千3百万円に上り、米軍駐留経費全体のなんと4分の3に達しています。この経費は、基地の地権者に対する地代、騒音対策費用、米軍基地移転のための経費などとともに、米軍基地を維持するための「思いやり予算」が含まれています。
 「思いやり予算」は米軍住宅建設、日本人従業員の労務費、高熱水費、ゴルフ場や野球場建設まで、至れりつくせりで、30年間で5兆円に達します。
 日米地位協定では、米軍の経費は米国が負担すると決められており、「思いやり予算」は日本が負担する義務は一切ないものです。

軍事費に群がる「政・官・財・米」癒着と利権
 膨大な軍事費をめぐって、守屋前防衛省事務次官と、商社の山田洋行との疑惑をきっかけに、兵器購入をめぐって水増し、不正請求、天下りや政治献金など、政・官・財・アメリカの癒着構造が明らかになりました。たとえば、日米の軍需産業が参加している「日本平和・文化交流協会」の会員企業16社にたいする防衛省からの天下りは、2000年からの6年間で201人に達します。防衛省からこれらの企業への発注額は同期間で4兆7979億円にもなっています。そしてこれらの企業から自民党への献金はなんと12億7270万円に上るという癒着ぶりです。

消費税増税阻止は軍備拡大への歯止め
  いま、日本が目指しているのは、アメリカがすすめる中近東からアジア全域での軍事力強化の戦略と一体となって、戦力を増強することにあります。攻撃型の兵器を製造し、輸出も可能に。そのためには憲法9条が足かせになっているのです。
 歯止めなき軍事費の増大、その財源としてねらわれている消費税。06年・グアム移転について日米合意が行われた際に、3兆円の「米軍再編」費用について、当時の谷垣財務大臣は「消費税増税でまかなう」考えを明らかにしました。消費税増税の本音はここにあります。
 国民にとってはいのちにかかわる消費税の引き上げは絶対に許してはなりません。
 兵器はつぎつぎに最新兵器に作り変えられていくため、廃棄された兵器はリサイクルもできない粗大ごみでしかありません。また演習などで短時間のうちに大量の弾薬が使用され、国民の血税が瞬時のうちに捨てられるという無駄づかいです。
 最大のムダ・軍事費にメスを入れよ!、消費税増税反対!は、戦争への道にストップをかけることに直結します。  「消費税・憲法かえれば・戦争税」はいよいよ大きな争点となっています。

(つづく)