シリーズ 消費税実施20年目の今を追う(2)
日本の消費税は5%でもすでに世界一の酷税
【1】消費税の逆進性と貧困 【2】日本の消費税は5%でもすでに世界一の酷税 【3】日本の軍拡ささえる消費税
【4】 雇用を悪化させ、グローバル企業の繁栄を支えた消費税 【5】 消費税増税を競い合う政党による政権選択では、増税はストップできない  

【2】日本の消費税は五%でもすでに世界一の酷税
 
 「日本の消費税率は15%以上が主流の欧州諸国よりまだ低い」(「熊本日日」6月30日付け)の報道が相次いでいます。特別シリーズ(2)では、この国民の暮らしの実態を見ない、機械的な議論の問題点を見てみます。

欧州は生活用品は非課税、ゼロか軽減税率
 欧州の付加価値税(消費税)を見てみましょう。イギリスは標準税率が17.5%ですが、食料品や子供服など日用生活品はゼロ税率で、非課税や軽減税率もあります。ドイツも標準税率は19%ですが食料品などは7%です。
 「贅沢な生活をしなければイギリスでは消費税の負担は感じなかった。日本の消費税の方が負担が重く感じる」――イギリスで生活したことのある日本人の少なくない言葉です。

◆17.5%でも日常生活に消費税が影響を与えない◆ ― イギリスの場合―
森紘明さん(大阪・八尾の会、全国の会常任世話人)
 イギリスに娘が結婚して在住しています。
 付加価値税(消費税)の標準税率は17.5%ですが、軽減税率5%、ゼロ税率、免税があります。
 日常生活では消費税が影響を与えない状況です。内税ですので税に対する痛痒感がないというのも考えられます。
 消費税課税業者は、年間の売り上げが5万4000ポンドをこえる業者となっています(法人税については、利潤が1万ポンド以下の零細業者は軽減税率10%です)。
 イギリスではお産は無料です。ただし出産したら翌日は退院させられます。産後のフォローは医師が巡回訪問してくれます。また、イギリスで、日本人の40才の女性が乳癌の手術を受け、3泊4日の入院後、抗がん剤の通院、そしてかつらの支給を受けたが、払った費用は入院時にテレビのコイン代だけだったという新聞記事を最近読みました。
 年金の最低加入期間は、男性が11年、女性は9・75年。年金者は、光熱費や交通費が無料で、映画も半額かもしくは三分の一です。日本人でも、永住権がなくても配偶者がユーロの方であれば、所得制限なしにチャイルド・ベネフィット(児童手当)が支給されます。私の娘も現在一人目は、週18・8ポンド、二人目は週12・55ポンドと支給されています。
 また16歳から59歳を対象に、1万6千ポンド以上の預金がない低所得者や失業中(週に16時間以下しか働いていない人)には、家賃の全額などの生活保護が支給されます。(1ポンド約210円)

税収割合も課税割合も日本はすでにトップクラス
 それもそのはずです。日本は5%でも消費支出の89%に消費税がかかってます。イギリスは62%、スエーデンは58%と低いのです。日本は毎日の食料品を含めほとんどすべてに課税されていることを示すものです。
 税収に占める消費税の割合も、日本が21.6%に対して、イギリスは22・5%、スエーデンは22.1% と、今でも大差はありません。
 このように日本の消費税は5%であってもすでに欧州並みの負担となっているのです。
新鮮な野菜がいっぱいのドイツの朝市
(写真=肥後実枝子さん提供)

◆孫娘の学費も医療費もゼロ◆ ―ドイツの場合―
肥後実枝子さん(埼玉県朝霞市在住 なくす会会員)
 13年前、孫娘が高校を卒業し、トロンボーンを勉強したいとドイツに留学しました。日本でも音楽大学の学費は、150万、200万円もかかるのに息子の負担が大きいだろうと心配しました。
孫娘さん夫婦とスイスのアルプスを背景に立つ肥後さん。現在89歳ですが、地元の平和行進にも参加。お孫さんの結婚式では「9条」バッチをドイツの方々にプレゼントし、平和が大事と話し合いました。
 しかし、学費も医療費もドイツは無料と聞き、びっくりするとともに安心して送り出しました。外国籍の学生も無料とは日本では考えられないことです。6年前に孫を訪ねました。当時、付加価値税(消費税)は16%でしたが、食料品などは軽減税率で7%。日本より物価も安いのですね。朝市に行きましたが、新鮮な野菜をとても安く買うことができました。消費税がかかっているとは思いませんでした。
 今年5月、孫娘が結婚するために再びドイツに行きました。
 現在、付加価値税は3%あがって19%ですが、食料品は7%のままです。「暮らしの安心感が違う」との孫娘の言葉に、これからの幸せを願い、「日本の消費税はヨーロッパより低いなんてとんでもない」と帰ってきました。

欧州は多くが医療費も学費もタダ

 また、日本と欧州とは社会保障や暮らしのセーフテイネットが全然違います。
 欧州では、住宅補助が充実し、医療費や高校・大学の学費もゼロの国が少なくありません。老後も、「蓄えがなくても、年金で、充分暮らしていける」状況です。
 こうした実態を無視して、負担率だけで「増税の余地があるかないか」を論じるのは、「社会の公器」としての新聞社の見識が問われる問題です。



◆「税金という概念がない」!?◆ ― キューバの場合―
臼田弘子さん(全国の会常任世話人)
 5月始めにキューバに行ってきました。
 ハバナ市内の有機農園は共同組合のような形式。青々と野菜や果物が育ち、10・8ヘクタールに167人が働いていました。土地は政府が無料で提供し、収穫物の15%を政府に納め(現物を配給所や学校など公共施設に出荷する)、税金はかかりません。
 障害者施設を訪問した時、丁度施設と地元の学校との交流フェステバルが行われていました。全国に410くらいこういった学校がありますが、いっさい費用はかかりません。子供たちが家に帰るときの費用や、親が会いに来る時の費用も全部無料。1人の子供に年5000ペソ位かかるけど(先生の1ヶ月の給料が580ペソ位)、国家予算の22%はこういった学校に当てられるそうです。
 キューバ人の家庭も訪問することができました。沢山のキューバ料理でもてなしてくれ、まだ配給制度の中で食材を集めるのは大変だったろうなと思いました。おばあちゃんと娘夫婦と孫の4人家族ですが、税金はありません。今は私企業から税金を取るようになったそうですが、一般の人は税金を払っていません。国の財源は、砂糖やニッケルなどの輸出と観光です。
 訪問したお宅で、「政府が無償で古い冷蔵庫を新しいものに替えてくれた」と話してくれました。キューバは長年のアメリカによる経済封鎖で、物資が不足して日常の市民生活には不便もあるようですが、医療・教育は無料、住むところはある、お金はなくても生命の危機にはさらされない、これがどんなに安心なことか。
 日本の姥捨て山のような後期高齢者医療制度、高い税金になおかつ消費税、格差社会と比べると、あまりの落差にがくぜんとします。

(つづく)