Q&A 消費税を知ろう

なっちゃん

博士、こんにちは。聞いてよ。物価高で毎日の買い物が大変なのよ。レシートを見て10%の消費税の負担が重いなあとあらためて感じているのよ。

博士

そうですね。10%の消費税の負担は大きいですね。消費税は1989年4月1日、税率が3%で実施されました。今年は実施から36年目の年です。35歳以下の人たちは生まれた時から消費税が当たり前になっています。この35年間、税率は97年に5%、2014年に8%、2019年に10%と3度引き上げられました。買い物のたびに10%(飲食料品など8%)を取られる消費税は重い負担です。「でも、社会保障のために必要じゃないの」「消費税がなくなれば、国の財政は厳しくなるのでは」と思っている人も多いと思いますね?

たく君

僕も生まれた時から消費税があるんだけど、何も疑問を感じずに消費税を払っていた。でも、消費税の仕組みがどうなっているのか、よく分からない。消費税はどんな税金なの?なぜ、導入されたの? 博士、教えて。

皆さんの暮らしはどうですか?

博士

それじゃ、消費税について一緒に考えてみましょう。まずは今、皆さんの暮らしはどうですか?

なっちゃん

買い物するたびにため息が出ているわ。一度、手にした商品の値段を見て棚に返したり、夕食のおかずを一品減らしたり…。

たく君

僕は定食屋を経営しているから、材料が上がって悲鳴を上げているよ。値段は上げられないから、利益がますます減っているよ。

博士

食品等が3万2千品目以上値上げされた23年に続いて24年も1万品目が値上げされそうです。「生活意識に関するアンケート調査」では、1年前と比べて現在の暮らし向きについて「ゆとりがなくなってきた」の回答が6割近くに達しています(日本銀行24年1月13日発表)。
世論調査では消費税減税を求める声が約6割を占めていますね(JNN23年11月調査)。ところが政府は、消費税減税に背を向けています。物価高対策とともに被災地を支援するため、今求められているのは、消費税減税なんですよ。世界では109の国と地域が、日本の消費税にあたる付加価値税の減税を実施・予定しています(各界連調べ24年1月15日現在)。

なぜ、賃金が上がらないの?

なっちゃん

家計が苦しいのは、働く人たちの賃金が上がってないからでしょう。大企業の業績はいいって聞くけれど、どうして賃金が上がらないの?

博士

大企業の内部留保は539兆円に膨れ上がり、過去最高を更新しました(財務省2024年9月2日発表)。賃金が上がらないのは、賃上げをせずに内部留保をため込んでいるからなんですよ。この30年間、日本は「賃金が上がらない国」になってしまいました。実質賃金は1996年をピークに年74万円も減っています。自民党が政権に復帰した2012年から23年を見ても年33万6千円も減少しています。30年前の水準になりました。

たく君

どうして、そうなったの?

博士

その原因は利益を優先する財界の要求に応え、低賃金でいつでも首を切れる非正規で働く人たちを4割まで増やしてきたからなんですね。非正規雇用の人はモノ扱い、中小企業に対しては大企業が単価たたきなどの下請けいじめによって、中小企業の労働者の賃上げを難しくしてきました。

消費税ってどんな税金なの?

なっちゃん

そもそも消費税ってどんな税金なの?

博士

消費税は、買い物をするたびに課税されますね。1989年4月1日の導入時、3%だった税率は3度引き上げられ、現在は10%です(飲食料、定期発行の新聞は8%)。食料品や日用雑貨など生活に必要な商品にも消費税がかかり、所得が低い人も富裕層も税率は同じです。そのため、年収200万円以下の人の負担は10・5%。ところが、年収2千万円を超えると負担はわずか1・8%。逆進性が強く最も不公平な税制です。
今年は能登半島地震が起きました。被災者は所得税や住民税の減免があります。しかし、消費税は申告・納付期限は延長されても減免は一切なく、被災者には過酷な負担がのしかかります。

なぜ導入されたの?

博士

消費税は、「直接税と間接税の比率を見直して、法人税を引き下げてほしい」という財界の要望に応えて導入されたんですね。 この35年間、大企業や富裕層の税金はどんどん減税され、導入後、消費税収は509兆円に上る一方で、法人3税は317兆円、所得税・住民税は289兆円減収しました。消費税は大企業や富裕層減税の穴埋めに使われたのです。消費税は2020年度から税収に占める割合が一番高くなっています。

たく君

そんなこと、知らなかった。新聞やテレビでも報道してないよね。

博士

大手新聞は、消費税を批判しません。むしろ、政府が税率引き上げ見送った時、「なぜ増税をしないのか」「先送りは許されない」という論調ですからね。
しかしですね、国民の暮らしを苦しめ、経済を落ち込ませた最大の原因は消費税の増税なんです。税率が上がるたびに物価が上がり、個人消費が落ち込み、景気が良いか悪いかを表す国民総生産(GDP)は低下しました。23年の名目GDPは世界3位から4位に落ち込みました。GDPの支出の半数以上を占める個人消費の落ち込みによって、経済が成長しない国になってしまったのです。
GDPの推移をみると、日本だけが経済が成長できない国になってしまいました。2000年から22年間、アメリカ、ドイツ、フランスが200%を超えているのに、日本は横ばい・低下です。

なっちゃん

でも、「消費税は社会保障を充実させるために必要」と思っている人も多いわよ。

たく君

そうそう、消費税がなくなったら国の財政は大丈夫なの?って心配する人もいるよ。

「消費税は社会保障のため」は真っ赤なウソ

博士

実は「消費税は社会保障のために必要」というのは、真っ赤なウソなんですよ。消費税は財界による要求で導入され、「社会保障を守るため」と増税されてきました。それで、社会保障は守られてきたでしょうか? 消費税は社会保障に使われていないばかりか、社会保障制度改悪の連続です。この30年間、国民年金保険料は2倍、国保料・税は1・5倍、介護保険料は2倍になりました。社会保障費自然増(高齢化に伴う社会保障費の伸び)はこの10年間、1兆6400億円も減らされました。

たく君

そう言えば、うちのおばあちゃんが今年75歳になって、後期高齢者保険になって保険料が2倍になったって嘆いていた。

博士

消費税がどんな問題があるのか、あらためて見てみましょう。

消費税7つの大罪

◇景気を底から冷やす

 消費税の税率は3度引き上げられ、その度に物価が高騰しました。買い物をする度に10%の税金分が上乗せされるので、消費者の財布のヒモがぎゅっと締まり、個人消費が落ち込みました。個人消費が落ち込むと経済が回らなくなり、中小業者の営業も苦境に立たされています。消費税は景気を底から冷やす税金です。

◇低所得者ほど負担が重い

 消費税は食料や日用品など生活必需品まで課税され、 所得が低い人も裕福に暮らしている人も税率は同じです。税金は支払い能力に応じて負担するのが原則ですが、消費税は所得の低いほど負担が重い、逆進性が強い不公平な税金です。

◇暮らしと営業を壊す

 消費税は年間の売り上げが1千万円を超えれば、事業者が価格に転嫁できなくても、赤字経営でも納めなければならない税金です。インボイス制度によって免税事業者が課税事業者を選択すれば消費税を納税しなければならず、フリーランスや中小業者、農民にとっては「営業破壊税」です。

◇大企業のリストラを促進させる

 消費税は人件費は仕入れ税額控除をできないので、正社員を増やせば増やすほど納税額が膨れ上がります。大企業は仕入れ税額控除ができる派遣社員や外注扱いに切り替えて消費税の納税額を減らしています。

◇大企業を優遇する税

 トヨタ自動車などの輸出大企業は、海外に車を販売すると、「外国から消費税をもらえない」との理由で国が代わって毎年、莫大な還付金を輸出大企業に払っています。輸出大企業20社の消費税還付金額は1兆9千億円に達します(22年度 湖東京至税理士試算)。
 しかし、「相手から消費税分をもらえない」というのは、医療機関も同じです。診察や治療、薬の処方などの医療行為に対して医療機関に支払われる診療報酬はゼロ税率ではなく非課税であるため、患者さんから消費税をもらうことはできません。
 しかし、「患者さんからもらえない」といって国が医療器具や診療機器購入時に払った消費税分が国から還付されることはありません。

なっちゃん

?? ゼロ税率と非課税はどう違うの?

博士

そこが消費税の仕組みのややこしいところです。自動車などを輸出した売り上げはゼロ税率が適用されています。算式で示すと還付金=<輸出売上高×0%>+<国内売上高×8%>-<仕入れなどに含まれる消費税分>です。輸出企業も還付のない非課税にすべきだと考えています。

たく君

輸出大企業に莫大な還付金が支払われている仕組みは分かった。でも、診療報酬が非課税だと、医療機関は仕入れ分の消費税を負担していることになるよね。

博士

そうですね。医療機関に「損税」が発生します。保険診療は非課税となっているので患者さんは病院の窓口で消費税を支払いません。そのため、医療機関は医薬品や診療材料、医療機器の購入にかかった消費税を転嫁できず、控除対象外消費税(損税)として負担しているのです。税率が10%に引き上がっているので、医療機関の経営を脅かしているので解決しなければならない問題です。医療機関は、診療報酬は非課税のままとし、診療などにかかる仕入れ税額控除を100%認めることが適切と訴えています(全日本民主医療機関連合会の件かい)

◇膨大な滞納を招く欠陥税制

 国税の最大の滞納は消費税です。22年度の新規発生滞納額7196億円のうち、消費税は3630億円、5割以上を占めています。滞納件数は45万件(21年)で8人に1人が滞納していることになります。

◇消費税は戦争税

 消費税の始まりは軍拡財源です。 付加価値税(消費税)の前身といえる売上税は古代ローマでもありました。近代ではドイツが第1次世界大戦の戦費調達のために導入しました。日本でも中国侵略の財源(1936年)として一般消費税が立案されました。

たく君

岸田首相が政権を投げ出したね。裏金や統一教会の問題で噴き出した国民の怒りに追い込まれた結果だね。でも、だれが総裁になっても岸田自公政権を引き継ごうとしているし、何よりも軍事費を増やそうとしているのが怖いね。

博士

そうなんですよ。自公政権は、物価高騰にあえぐ市民生活を犠牲に戦争への準備を着々と進めています。防衛省は25年度の概算要求で、防衛省は8兆5389億円を要求しました。過去最大です。

なっちゃん

えっ、そんなに!

博士

22年12月16日、当時の岸田自公政権は安保3文書の「防衛力整備計画」を閣議決定しました。この計画は、他国の領域内にあるミサイル発射拠点などを直接たたく敵基地攻撃能力の保有と、軍事費をGDP(国内総生産)の2%へと倍増する大軍拡を打ち出したものです。これに基づいて27年度までの5年間で軍事費を総額43兆円に増額することを決めました。その額はさらに増える可能性もあります。
アメリカから爆買いする敵基地攻撃用の巡航ミサイル「トマホーク」は最大400発を購入し、その額は3500億円に上ります。高額兵器の購入費などを複数年度に分割で支払う軍事ローン「後年度負担」が総額13兆7488億円に上り、過去最大になることが明らかになっています。日本、英国、イタリアによる次期戦闘機の輸出は国益だと言い放し、共同開発をめぐって、物品輸入に伴う消費税を免除します。

たく君

そんなの許せないよ。国民・中小業者には消費税やインボイスを押し付けながら、戦闘機には消費税を免除するって、おかしいよ。

消費税の税収は導入時の5倍超

博士

2019年10月から消費税は10%に引き上げられましたね。20年のから国税収に占める割合が一番高くなりました。
消費税導入時の1989年は、消費税収は3・3兆円、税収に占める割合はわずか6%、法人税収は19兆円で、税収に占める割合は34・6%でした。ところが、24年度の一般会計予算は112兆5717億円で、税収は69兆6080億円で、そのうち消費税は23兆8230億円となり、税収に占める割合は34・2%。法人税は17兆460億円で24・5%です。税収に占める割合は、消費税は5倍超になりました。

なっちゃん

消費税の税収が3割以上、占めているんだったら、消費税を減税したり、廃止したりすれば、国の財政は厳しくなるんじゃないの?

博士

財界や政府は「財源が足りないので消費税の増税が必要」と強弁し、法人税や所得税はカヤの外におきます。無駄な支出に手をつけず毎年、社会保障の削減だけを行っているのです。しかし。税金の集め方と使い方を改めれば子育てや社会保障を充実させる財源を生み出せます。消費税が導入された時、法人税(基本税)は40%以上でしたが、自公政権は23・2%まで引き下げました。所得税と住民税を合わせた最高税率は65%でしたが、55%まで引き下げられました。法人税や所得税・住民税の最高税率を元に戻すべきです。
歳出では、米国から攻撃型兵器の爆買い、原発・石炭火力発電推進、リニア新幹線の大型開発、大阪万博などの無駄を省くことです。これらによって、消費税減税、廃止への展望も開かれます。

税金のあり方はどうあるべきなの?

なっちゃん

そもそもの話なんだけど、税金の姿ってどうあるべきなの?

博士

日本の憲法は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する(25条)」と定めています。このため税金を負担する力があるかどうかを判断する基準として、少なくとも生活費には税金をかけないという「生活費は非課税」が原則です。
さらに、憲法に導かれて、税金は能力に応じて公平に負担する「応能負担」の原則が求められます(13条個人の尊重、14条法の下の平等、25条生存権)、29条財産権)。
しかし、実際には所得1億円を境に所得税負担率が低くなり、高額所得者ほど負担が軽くなっています。これは、所得1億円を超えるような富裕層の所得は、株や社債の配当所得によるものが多く、所得と分離して税金を計算できる優遇税制があるからです。
労働者が働いて得た所得には軽い税金、株式譲渡や配当所得などには重い税金をかけるのが税金あり方です。

憲法にもとづく民主的税制の原則
◇生活費非課税
◇総合累進課税で応能負担
◇勤労所得には軽い税金

裏金づくりに怒りが収まらない 今こそ減税の声を

たく君

19年10月から消費税10%が強行されたけど、15年10月、17年4月と2回延期させてきたんでしょう?

博士

そうなんです。増税反対の世論と運動で1200万人を超える署名を提出して国会で野党が追及し、自公政権は増税すれば選挙で国民の審判が下されることを恐れたためです。
外国の例では、マレーシアが2018年5月の総選挙でマハティール氏が率いる野党が勝利し、同年6月から消費税を廃止し、現在も消費税は復活していません。日本でも戦後、取引高税(売上税)を廃止させたことがあります。今、世界では109の国・地域が日本の消費税にあたる付加価値税の減税実施・予定しています。

なっちゃん

いま、パーティー券による裏金づくりで自民党政治への怒りは収まっていないわよね。今こそチャンス! 次の総選挙で各野党に「消費税減税、インボイス廃止」を公約させるために私たちの声を届けましょう。