トランプ高関税 自由貿易を再生せねば(「東京新聞」)、消費税の減税―参院選の審判受け議論開始を(「赤旗」)

2025年8月1日
【東京新聞】7月31日<社説>トランプ高関税 自由貿易を再生せねば
 米国のトランプ大統領と欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長が会談し、関税交渉で合意した。
 米国が日本に続き、EUとも合意したことで、世界経済に漂っていた暗雲は晴れつつあるが、トランプ氏の理不尽な要求は自由貿易の理念に背く。貿易立国である日本は自由貿易体制の再生に、直ちに動かねばならない。
 合意に達した対EU相互関税は日本と同じ15%。関税交渉とは別に欧州駐留米軍の削減に言及した米国の強引な姿勢は、EU側に根深い不満を残したはずだ。
 日本では税率が当初の25%から下がった安心感から交渉は成功だったと評価する意見があるが、友好国に15%という異常な高関税を課すこと自体、外交儀礼を欠き、敵対的とも言える行為だ。
 トランプ氏は合意後「日本は私の指揮で米国に投資し、米国は利益の90%を得る」とSNSに投稿しており、相手国への敬意を欠いた言動を看過してはなるまい。
 トランプ氏の力ずくの交渉に一時的に屈したとしても、自由貿易の理念まで損ねてはならない。
 日本は米国が離脱した環太平洋連携協定(TPP)を主導する立場にある。英国も新たに参加し、域内の貿易量は巨大だ。
 TPPにはEUも接近を図り、中国、インドネシアは加盟を申請し、韓国なども関心を示す。
 独善的な米国をけん制し、自由貿易の旗を守るためにも、TPPの門戸を積極的に開放し、協力関係をさらに深めるべきだ。
 米国で1929年に起きた株価暴落を機に、保護主義が世界中に広がった。自由貿易が阻害されたことで各国の生産性は落ち、不況に拍車がかかった結果、一部でファシズムが台頭し、第2次世界大戦へとなだれ込んだ。
 関税貿易一般協定(ガット)から世界貿易機関(WTO)に発展した戦後の自由貿易体制は、戦前の反省を踏まえたものであり、これ以上形骸化させてはならない。各国との経済連携をさらに進め、保護主義の再燃を率先して食い止めることは日本の役割でもある。

【赤旗】7月31日<主張>消費税の減税―参院選の審判受け議論開始を
 参院選の最大の争点となった物価高対策で、野党はそろって消費税減税・廃止を主張しました。これに対し、「消費税を守り抜く」と反対した自民党や、追随した公明党は大敗しました。
 臨時国会は8月1日に召集されます。日本共産党の山添拓政策委員長は、野党8党の政策責任者協議で「野党各党が公約に掲げた消費税減税の協議を進めていくべきだ」(25日)と呼びかけました。
 参院選で示された民意を真摯(しんし)に受け止めるなら、ただちに消費税の減税・廃止に向けた真剣な議論を開始する必要があります。
■国民の意思は明確
 日本共産党は参院選で、緊急に消費税を一律5%に減税し廃止をめざすとともに、インボイス廃止も訴えました。食料品をはじめ、あらゆるものが値上がりしているからこそ、毎日の買い物にかかる消費税の負担を減らすことが、もっとも効果的な暮らし応援になります。
 立憲民主党、国民民主党、参政党、日本維新の会、れいわ新選組なども消費税の減税・廃止を訴えました。期限付きや、食料品に限定するなど違いはありますが、すべての野党が消費税減税・廃止を掲げ、国民の強い期待が寄せられたことは明らかです。
 「毎日」の世論調査(26、27日実施)では、物価対策として「消費減税」を重視したが49%で、「現金給付」16%を大きく上回りました。参院選の結果を受けて、政府・与党は消費税の減税案を「受け入れるべきだ」と答えた人も58%にのぼります。
 「産経」とFNNの調査(同)では「すべての消費税率を5%に下げる」が32・9%で最多。「食料品の消費税率をゼロに」28・0%、「消費税は廃止」14・2%と合わせると、減税・廃止の声は75・1%にのぼります。
 「毎日」の候補者アンケートでは、参院選当選者の6割超が減税・廃止を主張していることが判明しています。
 各党や候補者が掲げた公約・主張と、選挙で示された民意をみるなら、消費税減税・廃止の道をただちに具体化すべきです。
■財源論すでにある
 石破茂首相はNHKのインタビューで「『消費税を減税しても社会保障や国家財政は大丈夫だ』というのであれば意見を出していただきたい。共通の認識や数字に基づく議論が、どう結実するかにかかっている」と述べています。
 消費税を5%に引き下げるよう提案している日本共産党は、すでに責任ある財源論を示しています。選挙中の党首討論でも田村智子委員長が「大企業の応分の負担という議論がスルーされている」「大企業には、今以上に税金を負担する力がある」(6日)と迫りました。
 これに対し、石破首相も「負担する能力がある人には法人であれ、自然人であれ、負担をお願いする」と答えています。ならば、日本共産党の財源論を「スルー」することなく、議論すべきです。
 野党の一部には、消費税減税を見送るような発言も見られますが、一致して取り組むべきです。民意に応える政治の責任が問われています。