大手メディアの思考―大企業の受益と負担こそ問え(「赤旗」17日)、赤字国債の大量発行―インフレや暴落大混乱の火種(「赤旗日曜版7月20日)
2025年7月17日
【赤旗】7月17日<主張>大手メディアの思考―大企業の受益と負担こそ問え
参院選では、日本経済の停滞脱却のためにも、国民の生活苦にどう応え、内需を活性化するのか問われています。
それに対して大手各紙は共通して、減税も給付金と同様のバラマキで“目先の甘言”だと強調し、▽高所得者ほど減税額が多い▽社会保障を支える財源だ―と石破茂首相と同じ論を展開して消費税減税を否定しています。
しかし消費税は逆進性が強く低所得者ほど負担率が重い税です。「毎日」社説は「物価高の打撃は所得が低くなるほど大きい」と認めます。ならば、すべての物やサービスの値段を下げる消費税減税の低所得者への効果は大きいはずで、強い要求でもあります。
■国民に痛み求める
最大の問題は、消費税は社会保障の財源だという政府の言い分を大前提に、減税は社会保障の基盤を崩すとして減税か社会保障かの選択を迫り、「受益」のために「どんな負担を国民に求めるか」「痛み」の話を素通りするな(「朝日」社説)と国民に痛みを求めていることです。
しかし、消費税は目的税でもなく、社会保障の財源を消費税に限る必要は全くありません。消費税導入と同時期に法人税・所得税が下げられ、その減収分が消費税収に置き換えられてきた事実に各紙とも目をつむっています。
日本共産党は国会論戦でも、史上最高益をあげ内部留保を積み増している大企業には担税力があると明らかにし大企業と富裕層への優遇税制見直しで消費税5%への財源はできると示しています。
「朝日」は、各党が掲げる、税収の上振れ活用、基金の取り崩し、国債発行―を無責任だと批判しますが、日本共産党の財源論には触れません。「税と社会保障の一体改革」と称する2012年の消費税大増税の際、法案通過までの1カ月で「朝日」14本、「読売」16本もの社説で増税を後押ししました。だから税制のゆがみに切り込めないのです。その大増税が内需を落ち込ませ経済停滞を招きました。
■公平なあり方とは
今回、「朝日」は「少子高齢化のもと、歳出と歳入の改革は避けて通れない」「(予算)配分を見直す。財源が必要なら公平な負担を求める」のが政治の要諦だと説きます。問題は、どこから取って何に使うか、何が公平かです。
いま大企業の税負担率は中小企業の半分、所得1億円を超すと税の負担率が下がる不公平、度重なる消費税増税で税の累進性が消えています。「受益と負担」「公平な負担」というなら、大企業・富裕層の受益と負担を問い、不公平税制をただすべきです。
米国の要求に従った大軍拡が他の予算を抑え財政を圧迫しています。各紙ともバラマキは国民にツケを回すと説きますが、軍事費や大企業へのバラマキには言及しません。
いまや政府も長年の大企業優遇は効果がなかったと認めています。現役世代と高齢者を対立させ庶民同士の「配分」を問題にするのではなく、大企業と富裕層の富を再分配し国民の暮らしを温め内需を増やすことが成長への道です。
行き詰まった自民党政治の枠から一歩も出ない大手紙の思考が問われます。
【赤旗日曜版】7月20日<経済 これって何>赤字国債の大量発行―インフレや暴落大混乱の火種
参議院選挙(20日投票)では消費税減税が争点の一つといわれています。「消費税減税は赤字国債でやればよい」と主張する党もあります。これは正しいといえるでしょうか。
国債には「赤字国債」や「建設国債」などと呼ばれるものがあります。財政法の規定は次の通りです。
〃国の歳出は、公債または借入金以外の歳入をもって、その財源としなければならない。ただし、公共事業費等の財源は、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行しまたは借入金をなすことができる〃
この条文中の公共事業に注目して、こうした目的で発行される国債を建設国債と呼びます。
建設国債を発行してもなお歳出が歳入を上回る、つまり赤字の場合に政府が特別の法律(特例公債法)によって国債を発行しています。これは特例国債、または赤字国債と呼ばれます。
いずれにせよ国債の大量発行は、大きな問題を抱えています。
第一は、それを日本銀行が引き受ければ、インフーションを発生させる可能性があることです。財政法はこの点を懸念して、政府が、公債を日銀に引き受けさせることも、借入金を日銀から借り入れることも禁じています。
ところが、第2次安倍晋三政権発足後の2013年に始まった黒田束堅剛総裁時代の日銀は、「量的・質的金融緩和」のもとで国債を大規模に金融機関から買い入れました。同時に、金融機関が引き受けた国債をただちに買い取れる制度も導入しました。これでは、国債の日銀直接引き受けとなんら異なるところはありません。異次元の金融緩和で日銀の長期国債の保有残高は500兆円近く増えました。国債の52%を保有しています。
第二は、国債の大量発行は、日銀という買い手がいなければ、発行金利や市金利を高めがちです。日銀は昨年、金融機関から買い入れる国債の金額を減らすことにしました。すると最近、償還までの期間が10年を超える超長期債の市場価格が下落し、逆に、市場金利が上昇しました。市場金利の上昇は住宅ローン金利の上昇につながります。
国債の積極的な発行を求めるMMT(現代貨幣理論)という考え方もあります。「インフレが起きない限り、政府はいくらでも財政赤字(国債発行)を続けられる」と主張します。しかし、これを日本に適用する場合、大きな見落としがあるように思われます。
日本の国債および国庫短期証券の保有者別内訳をみると、24年末には海外が11・9%にも達しています。もしアメリカの格付け機関が日本の国債の格付けを引き下げた場合、海外だけでなく国内の投資家にも影響を与えるでしょう。大規模な国債および国庫短期証券の投げ売りが発生し、経済が大混乱することも否定できません。
日本の経験では、経済・金融危機は、金・ドル交換停止、プラザ合意とバブルの発生、国際金融危機のいずれのケースでも、アメリカを震源としていることに留意が必要です。
建部正義(だてぺ・まさよし 中央大学名誉教授)