所得税「1億円の壁」―株で得た巨利には不当に低い税率
2025年7月12日
【赤旗日曜版】7月13日 <経済 これって何>所得税「1億円の壁」―株で得た巨利には不当に低い税率
物価高から暮らしを守る施策の財源をつくるため、超富裕層を優遇する不公平税制の是正が必要です。その代表例が「所得1億円の壁」と呼ばれる問題です。
所得税は、給料や商売の利益、あるいは土地を売って得た利益、株式を売って得た譲渡益や株式配当など、あらゆる所得に課される税金です。所得が高い人ほどより大きな負担を求める累進性があり、社会保障給付などとあいまって、所得や資産の再分配を図る役割があります。5%から45%までの7段階で税率が増える超過累進税率(所得が高い部分ほど適用税率が高くなる仕組み)です。
ところが、国税庁の統計では、所得が1億円を超えると逆に負担率が下がってしまいます。2023年分では所得5千万円超~1億円以下の層の所得税負担率は25・9%なのに、所得100億円超の超富裕層は16・2%、50億円超~100億円以下の層では17・5%しかありません。
岸田文雄前首相はこの不公平をただすかのような主張をしましたが、実際には、1億円を超える2万人以上の富裕層のうち2000人程度しか増税にならない改定で、お茶を濁しました。
一般の納税者の所得は、給与や事業所得、年金などが中心です。ところが、所得が1億円を超えるような富裕層の場合、株式の配当や、土地や株式を譲渡して得た所得が多くを占めています。例えば、23年分のデータで所得100億円超の超富裕層43人の所得のうち約91%が株式などの譲渡益による所得です。
株取引などの所得は、他の所得と分けて税金を計算する「分離課税」とされています。しかも税率は低く、所得税・住民税あわせて配当は20・315%(復興特別所得税を含む。一部の大口株主以外の税率)、株式などの譲渡益も20%にすぎません。所得が多い人ほど分離課税となる所得の割合高いため、所得税の負担率が下がってしまいます。
20%という日本の株式配当や株式譲渡所得への課税制度は、欧米諸国に比べても、大資産家優遇です。配当に対する欧米の最高税率は、アメリカ(ニューヨー市の場合)34.8%、イギリス39.4%、ドイツ26.3%、フランス30%です。株式譲渡所得への最高税率も、アメリカやドイツ、フランスは配当と同じです。
配当は少額の配当や低所得者の場合を除き、勤労所得などとあわせた総合課税を義務づけ、富裕層の高額の配当には所得税・住民税の最高税率を適用すべきです。株式譲渡所得も将来的には総合課税とし、分離課税のもとでも欧米諸国並みに高額所得者に50%以上の税率とすべきでしょう。
金持ち優遇税制の是正は、消費税に代わる財源の確保、格差と貧困の是正に向けた税制による所得再分配機能の再建・強化に不可欠です。消費税が5%から10%へ上げられ、消費税収は所得税収を上回ります。消費税は低所得層から中間所得層までもっとも負担の重い税金です。消費税を廃止・減税し税全体を応能負 担で見直すことが必要です。
村高芳樹(むらたか・よしき 日本共産党国会議員団事務局)