トランプ関税25%―国際協調と世論で撤回を迫れ(「赤旗」)、対日関税25% 冷静に妥協点探らねば(「東京新聞})
2025年7月10日
【赤旗】7月10日<主張>トランプ関税25%―国際協調と世論で撤回を迫れ
トランプ政権の米国とどう向き合うのか―大きく問われています。トランプ大統領は日本時間の8日未明、貿易相手国に新たな関税率を一方的に通知しました。日本には8月1日から米国への輸出品すべてに25%の関税を課すとしています。
国際ルールを無視した一片の道理もない要求は到底受け入れられません。トランプ政権の横暴に断固抗議し、改めて無条件での完全撤回を強く求めます。
こうした身勝手をやめさせるには、米国との2国間交渉だけでは駄目です。日本共産党の田村智子委員長は8日、「多くの国が一方的な関税措置に遭っており、多国間の国際協調で撤回を迫るべきだ」と強調しました。
■有権者欺くやり方
トランプ政権のやり方は世界から孤立し、各国に脅しをかけても思うようにすすんでいません。この間、正式に合意したのは英国、ベトナムの2カ国にとどまります。米国内でも批判が高まっています。国際的な協調と国際世論でトランプ政権を包囲してこそ、理不尽な措置を撤回させる道が開かれます。
石破政権は交渉の中身を明らかにしていませんが、自動車への関税引き下げと引き換えに、トウモロコシなど農産物の輸入拡大をのむことが取り沙汰されています。トランプ政権はコメの輸入拡大、軍事費GDP比3・5%を日本に要求しています。
参院選前にだんまりを決め込み、選挙後に農産物の輸入拡大や軍事費の大幅増を差し出すのは有権者を欺くものです。「国益を守る」という以上、絶対に許されません。
すでに発動されている自動車などへの上乗せ関税の影響を大企業が下請け企業や労働者にしわ寄せするのを防ぐ必要があります。トヨタなど大企業は巨額の内部留保を抱えています。政府は、自動車工業会などに強力に要請し、監督体制を強め、大企業のリストラや下請けたたきを許してはなりません。
トランプ関税を口実にコストカットに走れば、内需を冷やし日本経済のいっそうの停滞を招きます。それはトランプ関税の被害を増幅し大企業にとっても打撃となります。
景気の悪化を防ぎ上向かせるには消費と内需の喚起こそ必要です。大企業に責任を果たさせ、消費税の5%への緊急減税と物価高を上回る賃上げ実現が不可欠です。緊急融資などで中小企業を支えることも求められています。
■自主外交へ転換を
トランプ政権の国際ルール破りや国際法違反は関税問題にとどまりません。イスラエルのパレスチナ・ガザ地区でのジェノサイド(集団殺害)を支援し、自らも国連憲章に反してイランを先制攻撃しています。石破政権は毅然(きぜん)と批判できず容認しています。
それに対し日本国内でも、このまま米国に付き従っていていいのかという疑問を持つ人が増えています。日本共産党は「日米同盟絶対」の思考停止から抜け出し、米国と対等の友好関係を築き、自主的な平和外交に転換することを訴えています。参院選で自公政権を少数に追い込み「米国言いなり」から脱しましょう。
【東京新聞】7月10日<社説>対日関税25% 冷静に妥協点探らねば
トランプ米大統領が石破茂首相への書簡で「8月1日から米国が輸入するあらゆる日本製品に25%の関税をかける」と表明した。4月発表の24%を1%上回る。
圧力を強めて譲歩を引き出す狙いだ。日本政府は米政権の意図を冷静に見極め、粘り強い交渉で妥協点を探り出さねばならない。
トランプ氏は4月5日、各国に新たな相互関税を課すと公表したが、直後に貿易赤字額に応じた上乗せ分を90日間停止。今回は停止期限を8月1日に延期した形だ。
米国と各国との関税交渉は英国とベトナムを除いて最終合意に至っていない。停止期限の再延長には米側の焦りも読み取れる。
ただ、日本側が楽観できる状況にはない。
日銀が公表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数は自動車で5ポイント下落した。
日本の自動車産業には、今回の相互関税とは別に25%の税率が課されており、影響がすでに出始めたことが読み取れる。
自動車産業は裾野が広く、全体で500万人以上の雇用を担う基幹産業だ。この分野が大きな打撃を受ければ国内経済の屋台骨が揺らぎかねない。高関税の回避は日本政府にとって最優先課題だ。
トランプ氏の対日関税交渉において自動車産業は最大の標的であり、米国産の自動車が日本で売れていないことを問題視する。
しかし、これは誤解であり、米メーカーが日本の事情に適した自動車の生産努力を怠り、市場を攻略できなかったことが不振の要因だ。日本政府はトランプ氏だけでなく、全米の有権者にこうした現状を広く伝える必要がある。
トランプ氏は書簡で「日本企業が米国でモノをつくれば関税はゼロだ」と対米投資も求めた。
日本政府は、国内企業の対米投資増額などの条件を示し、交渉の軟着陸を目指す以外に道はない。加えて、米国産日本車の逆輸入や農産物の輸入の増加も提案し、米国の対日貿易赤字削減に協力する姿勢を示してはどうか。
トランプ氏の関税を巡る強硬姿勢は、米国の有権者に分かりやすい形で実績を上げるためであり、条件次第では柔軟に対応するのではないか。日本政府は自国の国益を守るため、官民が協力して、トランプ氏を説得するための知恵を絞り出してほしい。