知りたい聞きたい 消費税減税1~6
2025年6月18日
【赤旗】6月12日 知りたい聞きたい 消費税減税(1)
食料品非課税の方が助かる?
一律5%だと2倍程度の効果
消費税の減税を望む国民が多数となり、減税が現実的な政策課題となってきている中で、消費税減税をめぐって、読者の皆さんからさまざまな質問が寄せられていますので、連載形式で解説します。
Q 「低所得者は食料品の支出が多いので、税率を一律5%にするより、食料品を非課税にした方が助かるのでは?」
A 年金世帯や生活保護世帯の場合、「毎日の買い物は、ほとんど食料品だけ」という方も少なくありません。でも、日々の買い物とは別に、口座引き落としの水光熱費や電話代、交通費など、食料品以外の支出も実際にはかなりあります。
総務省の「家計調査」のデータを集計すると、年収200万円未満の単身者や、年収300万円までの勤労者世帯(2人以上世帯)でも、食料品以外の支出がかなりの額になっています。このデータから、一律5%にした場合と、食料品だけを非課税にした場合の減税額を計算すると、一律5%の方が1・5~2・3倍の減税効果があることがわかります。一律5%にした場合の世帯あたりの減税額は低所得者では年間5万円前後ですが、年収に対する減税額の比率で見れば、平均的勤労者世帯より高くなります。(つづく)
【赤旗】6月13日 知りたい聞きたい 消費税減税(2)
なぜ「一律5%」がいいの?
インボイスの口実も消え去る
Q 「インボイス廃止のためには、一律5%の方がいいと聞いたけど、どういうこと?」
A 消費税は、売り上げにかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を差し引いて、その差額を税務署に納税する仕組みです。これまでは、売上額や仕入れ額を記載した帳簿が整っていればよかったのに、23年10月からは、仕入れの際に仕入れ先から受け取ったインボイス(消費税の領収証のようなもの)を保存しておかないと、仕入れ分の消費税を差し引くことができなくなりました。インボイスは、国税庁に登録した課税事業者しか発行できないため、これまでは免税業者だった年間売り上げ1000万円以下の零細な事業者や、フリーランスで働く人までが、課税事業者にならなければなりません。
インボイス制度が導入され、個人事業者(フリーランスを含む)も、200万人あまりがインボイス発行事業者として登録しました。その結果、それまでは年間110万件前後だった個人事業者の消費税の確定申告件数が、図のように2倍近くにまで増えています。これまでは消費税の負担がなかった人に、過酷な増税がのしかかっています。低所得者を苦しめるインボイスは、ただちに廃止すべきです。
10%と8%という複数の税率があることが、政府のインボイス導入の口実となっています。一律5%にすれば、この口実は消え失せます。食料品ゼロ税率となれば逆に、10%、8%(新聞)、ゼロ%(食料品)と、さらに税率が複雑になり、インボイスの押し付けがますます強まるおそれがあります。(つづく)
【赤旗】6月14日 知りたい聞きたい 消費税減税(3)
レストランは値下がりする?
値下げ強要すれば破綻も
Q 「食材の消費税がゼロ%になれば、レストランなどのメニューも値下がりするのでは?」
A それは違います。現在の8%の軽減税率でも、外食や酒は対象外で税率10%です。食料品をゼロ%にする場合も、一般的には外食と酒は対象外となるでしょう。「それでも、食材費が安くなれば、メニューの値段も安くできるのでは?」と思う方もおられるでしょうが、それも間違いです。消費税は、「売り上げにかかる消費税(図のA)から、仕入れにかかる消費税(図のB、C)を差し引いて、差額を納税する仕組み」です。食料品の税率がゼロになれば、食材の仕入れ額が消費税分(図のB)だけ安くはなりますが、税務署への納税額は図のように「A―(B+C)」と計算されるので、Bがゼロになると、かえって納税額が増えてしまいます。このため、食料品の消費税率がゼロ%になっても、レストランにとっては1円の恩恵もなく、値下げはできないのです。
でも、そんな仕組みをよく知らないお客さんからは、「なぜ値下げしないの?」と責められ、やむなく値下げせざるを得ない店も出てくるかもしれません。「そんなことになったら、店の経営が成り立たない」と心配している経営者も少なくありません。(つづく)
【赤旗】6月16日 知りたい聞きたい 消費税減税(4)
食料品ゼロ% 農家など困る?
被害防ぐ対策が不可欠
Q 「食料品をゼロ%にすると、農家などが困る場合があると聞いたけれど?」
A その通りです。花などを栽培している場合を除けば、ほとんどの農家の売り上げは食料品です。ですから、食料品の税率をゼロにすれば、売り上げにかかる消費税はゼロになります。一方、農家が仕入れるものは、種子や苗、肥料、農薬、農機具、燃料など、税率10%のものばかりです。これまでは、仕入れにかかった消費税は売り上げにかかる消費税から回収していましたが、売り上げ分がゼロになってしまうと仕入れ分の消費税が取り戻せなくなるのです。
もっとも、輸出企業の場合と同じように、仕入れにかかった消費税を「還付金」として税務署から戻してもらえる仕組みをつくることも可能です。ただし、これができるのは、現行法では通常の課税方式を選択した場合だけです。
多くの農家は規模が小さいため、免税業者(年間売り上げ1000万円まで)や、簡易課税業者(5000万円まで)を選択しています。免税業者は、そもそも税務署に消費税に関する申告をしないため、還付金の申告もできません。簡易課税の場合は、仕入れの際に消費税をいくら払ったかに関係なく、売り上げにかかる消費税の一定割合(食料品生産農家の場合は20%)を納税する仕組みです。売り上げの消費税がゼロなら納税額もゼロになりますが、仕入れ分の還付は受けられません。こうしたことになるのは、漁業の場合も同じです。
農業用ハウスを建て替えたり、漁船を買い替えたりすれば、何百万円もの消費税を払う場合もありますが、この消費税を還付してもらえず、自己負担になってしまったら、経営に大打撃です。免税や簡易課税をやめて、通常の課税方式を選択することも可能ですが、インボイスの保管など事務負担が増え、小規模な農家にとっては大変です。食料品ゼロ%を実施するのであれば、こうした事業者が被害を受けないようにする対策が不可欠です。(つづく)
【赤旗】6月17日 知りたい聞きたい 消費税減税(5)
長期の準備期間が必要?
長くても2~3カ月で実施
Q 「消費税の減税は長期の準備期間が必要で、緊急の物価対策にならないという意見があるけれど…」
A そんなことはありません。減税を国会で決めさえすれば、長くても2~3カ月程度の準備期間で実施できます。そもそも、消費税を最初に導入したとき、法律が成立したのは1988年12月のクリスマスイブの日でしたが、それから正月休みをはさんで3カ月ちょっと、翌年の4月には実施したのです。税率を引き下げるだけなら、もっと短期間で可能でしょう。
石破茂首相は「レジの調整に最長1年かかる」などと言っています。食料品非課税などの新たな制度を導入する場合は、そういうこともないとも限りませんが、税率を変えるだけなら、そんなにかかりません。実際、この間に税率は5%から8%、10%と2回も引き上げられましたが、レジの切り替えは一晩でいっせいに行われ、何の混乱も起きていません。税率を下げるのも同じです。
Q 「減税前に『買い控え』が起きて消費が冷え込むという意見もあるが?」
A 住宅建設や自動車の購入、家電製品やスマホの買い替え、旅行や結婚式など、減税後に延期する動きが出る可能性はないとは言えません。でも、それは減税の準備期間の数カ月だけの話です。これらの品目は、消費税の増税のときは増税前に激しい「駆け込み」が起きて、増税後は長期にわたって消費が落ち込みました。増税のときに比べれば、減税時の影響は小さいものです。
自動車やスマホなどは、減税後に需要が大きく増えると予想できれば、数カ月間は多少の在庫が増えても、企業は対応可能でしょう。ホテルや結婚式場など、在庫で対応できないものもありますが、短期間なら「減税前割引セール」などで対応することも可能でしょう。減税のせいで景気が落ち込むなどというのは、ためにする批判にすぎません。
なお、増税の際には、前記のような品目に加えて、酒やたばこ、調味料なども「増税前のため込み需要」が発生しましたが、減税のときに買い控えは起きません。「減税されるまで数カ月は禁煙しよう」などという人はいないからです。(つづく)
【赤旗】6月18日 知りたい聞きたい 消費税減税(6)
給付金の方が効果的?
一回限りで不公平も発生
Q 「消費税減税より低所得者への給付金の方が迅速で効果的だという意見があるが…」
A 低所得者への給付金も、物価対策として効果があることは確かです。ただ、必ずしも迅速とは言えません。給付金は減税と違って法改正が不要で、国会にもはからずに政府が決めるだけでできますが、予算がなければできない点は変わりません。
今回も、石破茂首相が2万円の給付金を言い出しましたが、これも予算があるわけではなく、参議院選挙後に臨時国会を開いて補正予算を決めなければできません。仮に決まっても実施は年末くらいになってしまうかもしれません。
また、給付金はそのとき限りで、次がどうなるか見通しが立ちません。あてにならない給付金と違って、消費税減税は毎年確実に続きます。
最近の給付金は「住民税非課税」を基準にしている場合が多く、不公平が生じます。高齢者の場合、「年金+給与」で年収200万円でも非課税で給付金がもらえるケースがある一方、無年金で給与年収105万円だと住民税課税となり、給付金がもらえないからです。「あの人は私より年収が多いのに、給付金をもらった」などと低所得者どうしがいがみ合うような事例もみられます。消費税減税は誰にでも届くので、こうしたことにはなりません。
Q 「消費税減税はお金持ちも減税額が多くなってしまうのでは?」
A 石破茂首相が消費税減税を拒否する理由に、この点をあげています。消費税は生活必需品にまでかかる税金なので、「収入に対する負担率」で比べれば低所得者に重い税金です。でも、税額それ自体で比べれば、たくさん消費する人ほど多いことは事実です。年収が何億円もあるお金持ちで、毎日のように高級レストランで食事したり、高級車を乗り回したりしている人は、年間数千万円も消費し、消費税も数百万円になるかもしれません。その場合は、減税も百万円を超える金額になるでしょう。
でも、日本共産党の減税提案ならば、消費税が「金持ち減税」になってしまう心配をする必要はありません。日本共産党の提案では、消費税減税の財源を、大企業や富裕層への優遇税制を見直すことなどで確保します。富裕層の株取引の利益への課税を強化したり、所得税・住民税の最高税率を引き上げたりすれば、年収が何億円もあるお金持ちは、所得税などが増税となります。たとえ、消費税が数百万円規模で減税になっても、それを上回る所得税が増税になれば、全体として見れば「金持ち減税」にはなりません。(おわり)