税制のゆがみ 小池書記局長の論戦から(上)法人税減税に効果なし、(下)消費税減税の実現こそ

2025年3月20日
【赤旗】3月19日 税制のゆがみ 小池書記局長の論戦から(上)法人税減税に効果なし
 日本共産党の税制問題での論戦が注目を集めています。衆院では、田村智子委員長が2月21日の予算委員会と25日の財務金融委員会で、「103万円の壁」―所得税の課税最低限の引き上げを“焦点”とする議論に対し、消費税の逆進性のため税全体の累進性、すなわち所得の多い人ほど厚く負担するという所得再配分の基礎が失われていると指摘。生計費非課税の原則も壊す消費税の負担にメスを入れることこそ重要だと主張しました。
 小池晃書記局長は3月6日の参院予算委で、田村氏の論戦を引き継ぎ、大企業・富裕層優遇の税制のゆがみを追及。消費税の見直しに向かうべきだと主張しました。
●税調も財務省も認める
 小池氏はまず、消費税増税の一方で、一貫して進められた法人税減税がどのような成果をあげているか、今年度の与党の税制調査会の資料の内容を示すよう求めました。
 財務省主税局長は次のように読み上げました。「経済界には、法人税改革(減税)の趣旨を踏まえ、国内投資の拡大や賃上げを求めてきたが、企業部門では、収益が拡大したにもかかわらず、現預金などが上がり続けた。法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ず、法人税の在り方を転換していかなければならない」
 小池氏は「法人税改革は、賃上げにも設備投資にもつながらず、内部留保を積み上げただけだ。これは、毎年だ」と指摘。独自の推計によると、法人税率の引き下げや租税特別措置、大企業優遇税制によって、2023年度に2兆円の減税となっているとし「大義なきバラマキであり、見直しが必要だ」と迫りました。
 石破茂首相は、内部留保が積み上がり、賃上げ、設備投資などにつながらなかったことを認め、「それが単なる大企業優遇だと批判を受けないよう努める」などと述べました。
 小池氏は「具体的にどうやるのか」として研究開発減税の問題をとりあげました。
 研究開発減税とは、大手製造業を中心に、新技術や新商品開発のため研究開発費を設けた場合、法人税から研究開発費の一定割合を控除する仕組みです。
 小池氏は「研究開発は必要だ。しかし、研究費を維持しただけ、減らした場合にも減税される。増やさなければ減税はなかったのを経団連の要求で変えてきた」と指摘。23年度の研究開発減税の総額とそのうち資本金1億円を超える企業の減税額と割合をただしました。
 加藤勝信財務相は「総額9479億円、資本金1億円超企業の適用額と全体に占める割合は、8672億円、91・5%だ」と答えました。
 続けて小池氏は、適用額1位の企業名と割合を質問。加藤財務相が「872億円、約8・7%だ」とだけ答えたのに対し、小池氏は「トヨタ自動車だ。研究開発費は発表されている。外に出しちゃいけない数字じゃない」として、企業名を明らかにしない加藤氏の態度を批判しました。
●不公平な研究開発減税
 小池氏は23年度の政府税調の「我が国の税制の現状と課題」で研究開発減税など租税特別措置の問題点についてどう述べているかを質問。財務省主税局長は「企業の一つの目的が利益の最大化にあるとすれば、政策税制がなかったとしても利益をもたらす経済活動は自ずと行われるはずであり、そういったものを政策税制の対象とすることは、費用対効果の観点からは正当化されない」と読み上げました。
 研究開発減税を活用している企業の大半は、自動車メーカーや製薬産業です。これらの分野では各企業が、生き残りのための激しい新技術の開発競争を常に行っています。特別な減税措置があるかないかで、研究開発が止まることはないということです。
 小池氏は「その通りだ。トヨタにとっても研究開発は大事だが、30兆円を超える内部留保がある企業にわざわざ(研究開発)減税するのか」と首相に迫りました。
 石破首相は「(税の)公平からすれば、何だという指摘があることは認識しておきたい」と答弁。小池氏は「不公平だし大義がない。これだけの内部留保があって減税する必要はない。『効果がない』と税調が言っている」と批判しました。(つづく)

【赤旗】3月20日 税制のゆがみ 小池書記局長の論戦から(下)消費税減税の実現こそ
 小池晃書記局長はさらに、所得税における富裕層優遇を取り上げました。所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がるという、金融所得課税における「1億円の壁」の問題です。
●「1億円の壁」取り払え
 「『1億円の壁』をなぜ取り払わなかったのか」と小池氏。加藤勝信財務相は「『極めて高い水準の所得』を対象として、25年所得分から追加的に負担を求める措置を導入した」と述べました。
 小池氏は「『極めて高い』というのは30億円だ。所得30億円を超える人は何人か」と追及。加藤財務相は「おおむね200~300(人)程度ではないか」と答えました。
 小池氏はさらに「所得1億円を超える人は何人か」と質問。加藤財務相は「2万8400人と推計されている」と答えました。
 これを受けて小池氏は「見直したと言うが、2万8000人のうちの200人だ」と指摘。石破茂首相が昨年9月のテレビ番組で、金融所得課税の強化を実行したいと言ったことを挙げ「なぜ実行しなかったのか」と批判しました。
 加藤財務相と石破首相は相次ぎ「税負担の公平性のほか、『貯蓄から投資へ』の流れを推進しなければならない」と述べました。
 これに対し小池氏は、「アメリカの税率はうんと高いが投資は活発だ。しかも投資家全体の負担を増やせとは言っていない。所得1億円を超える人の税率を引き上げるべきだと言っている」と批判。石破首相は「『貯蓄から投資へ』の流れと、国民の理解を充足するよう努める」と述べました。
●法人税見直し財源を
 小池氏は「不公平な税制に切り込めば、消費税減税の道も開ける」とし、石破首相がかつて格差拡大の中で消費税もタブー視しないと言っていたことを挙げ、「法人税や所得税のあり方全体を見直す中で財源をつくって消費税減税を実現していくことが必要だ」と迫りました。
 ところが石破首相は「全体として(見直す)ということで、消費税減税とか廃止という議論に論理的につながらない」と発言。これに対し小池氏は「論理的につながる」と反論。消費税を増やしてきたことで税の累進構造が壊れているとの日本共産党の田村智子委員長の追及を否定できなかったことを挙げ、「そうであるなら、トータルで税のあり方を見直す議論をやろうじゃないかと。そうすればもっと国民の手取りを増やす議論ができる」と迫りました。
 石破首相は、消費税の逆進性を認めつつ「低所得者には厚く給付されている。直接税に比べて安定的な財源である」と強調。小池氏は「安定的ということは、どんなに国民の暮らしが大変でも取り立てるということだ」と批判。「給付に回すからいいというのは、貧しい人から税金を取って貧しい人に回すのは自己責任であって再分配ではない。お金のある人、もうかっている大企業からいただいて、しっかり庶民に回すのが再分配だ。全く考え方が間違っている」と重ねて厳しく批判しました。(おわり)