「目でみる経済」―広がる経常利益と営業利益の差
2025年3月12日
【赤旗】3月12日 ワイド版「目でみる経済」―広がる経常利益と営業利益の差
企業の経常利益が営業利益を大きく上回る傾向が続いています。財務省「法人企業統計」によると、製造業の大企業(資本金10億円以上)の場合、2023年度は営業利益が16兆円だったのに対し、^経常利益は29・5兆円と2倍近くに上っています。その賞を考えます。(清水渡)
営業利益とはいわゆる本業の利益です。一方、経常利益は営業利益に営業外損益を加えたものです。営業外損益は企業の本業以外の活動によって発生する損益のことです。
本業以外の損益
労働問題研究者の藤田宏さんはこの営業外損益を金融収益としています。それは重外損益が受器息、配当金などの営業外収益から、支勒息、有緡券売却損などの営業外費用を差し引
いて算出するからです。
1960年〜2000年くらいまでは営業利益と経常利益はほぼ同じか、営業利益が上回ってきました。しかし2
000茬以降は逆転傾向が顕著となり、現在では経常利益が営業利益を大きく上回っています。
「経常利益に占める金融収益の比重が高まる中で、大企業はそれまでの本業中心の経営で営業利益中心に利益を確保する経営戦略から金融収益を増やすことによつて利益を確保する金融収益重視の経営に軸足を移しています」(藤田さん)
大企業は金融収益重視の経営のもとで金融投資を大幅に増やしました。製造業でも株式、公社債、その他有価証券の保有額(固定資産•流動資産の合計額)は比較可能な1975年度の7•2兆円から、2023年度の125•5兆円へと急速に増やしていす。そのうち固定資産の株式は100・8兆円と8割を占めます。
背景に優遇税制
藤田さんは「固定資産の株式とは関係子会社の有価証券が中心です。背景に子会社からの配当に課税しないという大企業優遇税制あります。企業の経常利益が急増しているのは子会社から配当を得ているためとみられます。政府が金融収益重視を推進していす」と述べます。
企業は金融投資の財源として内部留保を活用しています。製造美企業の内部留保は1960年度の1•3兆円から2023年度は187•8兆円へと大幅に増えています。「大企業は内部留保のうち金融投資に投入する部分を増やす一方、設備投資への比率は減らしています。本業での利益より金融収益を重視する姿勢のあらわれです」(藤
田さん)
株主窖や内部留保は企業(労働者)が新たにつくり出した騎価値が元手です。藤田さんは金融収益重視の経営のもと、付加価値配分の変化がと顕著だと指摘します。
「労働者への分配(人件費) が減り企業への分配(営業純益)が増えています。賃上げにはこの構造にメスを入れることが必要です。企業の付加価値配分を変えて企業配分率を引き下げるとともに、大企業の内部留保に課税し、中小企業での賃上げ支援に回すなどの政策が必要です」(藤田さん)