〃GDPプラス〃の実態―停滞下の物価上昇 深刻な事態
2025年3月2日
【赤旗日曜版】3月2日 〃GDPプラス〃の実態―停滞下の物価上昇 深刻な事態
2024年10〜12月期の実質GDP (国内総生産)が前期比0・7%増(年率2・8%増)でした。24年1〜3月期までの3期連続のマイナスの後、今期までの3期連続のプラス成長です。これをもつて日本経済が停滞から脱出したとは言えません。
今期のプラス成長の主な要因は、輸出が前期比1•1%増と伸び、逆に輸入が2 •1%減となり、輸出入の差額が開いたことによるものです。輸出増は円安や海外からの旅行客の増大のほか、米国トランプ大統領の追加関税措置を見越して駆け込み需要が発生したことが影響しています。
GDPを構成するその他の主要項目を見ると、GDP全体の5割超を占める個人消費は前期比0•1%増とわずかの伸びにとどまっています。しかも、これは主に賞与月であったことによるものです。その他、東京都による省エネ家電向け補助の拡充などが要因として挙げられます。
もう一つの主要項目である設備投資は0・5%増となりましたが、中身は半導体製造装置など一部に限られ、広がりに欠けています。
つまり、日本経済は停滞から抜け出してはいないということです。このことは、GDP以外の経済指標によっても裏付けられます。
企業倒産件数は、22年から急激に増え始め、昨年にはついに11年ぶりに1万件を突破し、今もなお増え続けています。
実質賃金は、昨年5月まで26カ月連続でマイナスを記録した後、6〜7月、11〜12月
にプラスとなりましたが、これは賞与月によるものです。当然ながら、消費支出も落ち込み続け23年度は3・2%減、24年通年では1•1%減となっています。日経株価も盛り上がりに欠け、4万円を天井に抑え込まれています。1月17日、IMF (国際通貨基金)は今年の世界の経済見通しを発表しました。世界全体では3・3%増、中国4•6%増、米国2 • 7%増、ユーロ圏1•1%に対して、日本はドイツと並んでわずか0・3%増の予測です。
日本経済の停滞は、政策担当局の混乱となって表れています。1月、日銀は日本経済はインフレ状態にあると発表しました。政府は逆に、デフレ状態にあると反対の見解を示しました(後にインフレに修正)。このちぐはぐな見解は、インフレ、デフレの使い方の混乱が原因です。
インフレを物価上昇とするなら現状は確かにそうですが、デフレを経済の停滞とす
るなら政府の見解が正しいということになります。実質賃金がマイナスを続け、消費も停滞している状況を見れば、明らかにデフレということになります。
つまり、日銀と政府の見解は、ともに経済現象の一面については的を射たものですが経済実態を正しくとらえていません。日本経済の実態は、単なるインフレ、デフレを超えた経済停滞下の物価高騰という深刻な事態に陥っていると言えます。しかも、今後は物価の高止まり、長期金利の上昇、「米国第一」を掲げるトランプ政権による一方的な経済政策の洗礼を受けるなど、日本経済はさらに深刻な事態に陥ると予想されます。
工藤昌宏 (くどう.まさひろ東京工科大学名教授)