半導体企業に税金投入2兆円―自民に献金4.1億円、 金融政策への信頼揺るがす―日銀保有国債の評価損
2025年2月17日
【赤旗】2月17日 半導体企業に税金投入2兆円―自民に献金4.1億円―出資企業、3年間で―政治と産業のあり方ゆがめる
石破自公政権は、半導体の安定供給が「経済安全保障の観点からも喫緊の課題」だとして、半導体企業「ラピダス」への巨額な支援をしています。本紙の調べで、その「ラピダス」出資企業が2021~23年の3年間で4.1億円もの献金を自民党側にしていたことがわかりました。(藤沢忠明)
ラピダスは、人工知能(AI)などに使われる半導体を開発する会社で、2022年8月に、トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、NEC、ソフトバンク、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行の大手8社が共同出資して設立しました。27年度に北海道千歳市で量産開始を目指しています。
政府は、すでに研究開発費として最大9200億円を投入。24度補正予算で1兆円を追加し、25年度予算案でもラピダスへの出資額として1000億円を計上しています。
政府の巨額支援に対し、8社の出資額は、三菱UFJ銀行3億円、他の7社は各10億円のわずか計73億円。政府の丸抱えぶりが際立っています。
政治資金収支報告書によると、ラピダスへの出資企業は、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に21~23年の3年間で、トヨタ自動車1億5000万円、ソニーグループ5500万円など計4億1040万円にのぼる献金をしています。(表参照)
大企業への2兆円を超す資金援助は、本来、民間企業が投資すべきものを国が肩代わりするという、まさに財界・大企業への奉仕そのものです。
しかも、政府は7日、ラピダスへの支援拡大を可能とする法「改正」案を閣議決定しました。
一方、中小企業対策予算は25年度予算案で、わずか1695億円。石破茂首相は、「企業・団体献金で政策がゆがめられたという記憶はない」などと繰り返し、企業・団体献金を合理化していますが、ラピダス支援は、企業・団体献金が、いかに政治と産業のあり方をゆがめているかを示しています。
ラピダス出資企業の献金(2021~23年)
トヨタ自動車 1億5000万円
NTT 6200万円※
ソニーグループ 5500万円
NEC 5100万円
デンソー 3240万円
三菱UFJ銀行 6000万円
計 4億1040万円
《注》国民政治協会の政治資金収支報告書で作成。※NTTはグループ3社の合計
【赤旗日曜版】2月16日 金融政策への信頼揺るがす―日銀保有国債の評価損
日本銀行は「異次元の金融緩和」で市場から大量の国債を買いました。これにより財務上、大きな問題を抱えています。
日銀の国債の評価損(取得時の原価と時価との差損)は2024年9月末時点で13兆6千億円を超え、史上最高でした。つまり、簿価(買い入れ価格)では585兆5千億円ですが、時価(市場価格)で評価し直すと571兆8千億円になり損失が生じるわけです。
評価損がこれほど膨らんだのは、日銀が同年3月に「量的•質的金融緩和」を廃止し、「正常な金融政策」に復帰するとともに、同月と7月に新目標としての短期政策金利を引き上げたためです。
政策金利が上がると、国債価格は下がります。というのは、政策金利の上昇は市場金利の上昇につながり、市場で国債を買う投資家は、国債価格が下がって市場金利並みの収益が得られるようになるまでは、国債を買おうとしないからです。
ただ、日銀は国債を満期まで保有し続けるという「償却原価法」を採用しているので、国債八日損が発生したからといって、ただちに金融政策の運営に支障が生じるわけではありません。とはいえ、発行額の50%を超えるほどの日銀による国債保有に問題がないわけではありません。
第一に、国債市場の機能に悪影響を与えたことです。この問題は日銀も認識しており、実際「正常な金融政策」への復帰の一因となりました。
第二に、日銀の国債の大量買い入れが「財政ファイナンス」(=財政資金の肩代わり)と化し、政府の財政規律を弛緩(しかん)させたことです。ところが日銀はこれを否定します。24年12月発表の「金融政策の多角的レビュー」で、「金融緩和の目的はあくまで物価の安定であり、政府による財政資金の調達支援が目的の『財政ファイナンス』ではない」と断定しています。
第三に、今後の政寥利の引き上げ過程で、日銀が債務超過に陥る可能性が高いことです。
日銀は今年1月の金融政策決定会合で、政策金利を0・5%程度に上げ、それに伴い、金融機関が同行に保有する当座預金のうち、所要基準を超える分=超過準備に対し0・5%の金利を支払うことになりました。
超過準備は現在500兆円弱です。金利の支払いに充てうる自己資本は、24年9月現在の貸算照表によれば、資本金1億円、法定準備金3兆7千億円、債券取用失引当金7兆2千億円ぐらいしか見いだせません。あわせて10兆9千億円です。政策金利が今後1•0%程度になれば、日銀は金融機関に年間約5兆円の付利(ふり=利払い)を行うことになります。2年強で自己資本を食いつぶす結果は債務超過への転落ということになります。
そのような財務状態に陥った際、はたして日銀は金融政策に対する国民の信頼をつなぎ止めることが可能でしょうか。同行はこれほど重大な問題を抱えているのです。
建部正義(たてべ•まさよし史大学名誉教授)