消費税インボイス1年―重い増税と煩雑経理廃止しかない。 男女賃金格差の公表制度―是正を義務付ける仕組み必要

2024年12月8日
【赤旗日曜版】11月24日<経済 これって何>消費税インボイス1年―重い増税と煩雑経理廃止しかない
 2023年10月にインボイス(適格請求書)制度が始まり、1年が過ぎました。自公政権は「増税ではない」といいますが、その正体は税率変更なしの増税です。
 すべての事業者は、インボイス登録をする・しないを選択しなければなりません。年売上高1千万円以下の事業者は応能負担により免税されてきましたが、登録すると課税事業者となり、赤字でも漏れなく売上高に課税されます。一方、未登録の非課税事業者と取引をした事業者は、仕入れ税額控除ができず、その税を負担しなければなりません。
 開始後初の24年春の確定申告直後、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が実施したオンライン実態調査(回答者7千超)では、フリーランス•個人事業者を含め、インフラを支える「建設•土木•工業」などさまざまな分野・規模の事業者への悪影響が浮き彫りになり、9割超が見直し•廃止を求める結果でした。
 過酷な影響の一つは新たな税負担です。課税事業者になった小規模事業者の多くは消費税分を価格転嫁できず、前年同等の売上高でも利益は減少。納税のために、収入や貯蓄を削ったり借金したりしています。
 登録しなかった小規模事業者は、取引先からの値引き要求や取引排除による売上高減少で先行きに不安を訴えます。公正取引委員会は、通告なしの一方的な値引きは法的問題となる恐れがあると注意喚起しますが、実態調査では減額の強制や連絡なく発注が途絶えるサイレント排除が横行しています。取引先との関係悪化、取引先も納税できず共倒れする危険、廃業を考えざるを得ない苦境も散見されます。
 そして憂慮すべきは、煩雑な経理業務の増大で号す。取引先の登録•未登録やインボイス登録番号のチェック、複雑な経過措置に対処するための残業や、新システム導入の経費も押し付けられ、膨大な負担が生産性を低下させています。国税庁の5月末の発表では、前年比で消費税申告件数はほぼ倍増しましたが税収はわずか9%増。この税収増は事業者と国民のあまたの苦痛の代価です。
 政府の「激変緩和措置」は非常に複雑で、現場を混乱させています。消費税の納税額軽減も、非課税業者との取引での税額控除の一部特認も、段階的になくなります。今後の重税を見越して多くの事善がジワジワと苦しめられています。 
 そもそも日本では複式帳簿の経理が標準で、インボイスなしでも税額算出は正確にできます。政府は「複数税率の下で、適正な課税の実現を図る」と繰り返しますが、複式帳簿とインボイスを併用する国はほかにないと専門家は指摘します。
 58万筆超のオンライン署名も専門家団体からの反対声明も踏みにじった自公政権は、10月の衆院選で過半数を割りました。インボイス廃止を政策に掲げた各党の議員が協力し、いち早く廃止法を通してほしいです。 
                                安田知代(やすだ•ともよSTOP!インボイス埼玉西部•ライター)

【赤旗日曜版】12月14日<経済 これって何>男女賃金格差の公表制度―是正を義務付ける仕組み必要
 2023年の男女賃金格差は、男性1OOに対し女性は74•8です。男性の正規雇用と女性の非正規雇用の格差はさらに大きく、男性•正規100に対し、女性・非正規はわずか55・9です(23年賃金構造基本統計調査)。賃金格差は年金格差にも直結するなど女性の経済的自立を阻み、女性の貧困の原因にもなり、改善は急務です。
 日本では、22年から「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(女性活躍推進法)に基づき、従業員数301人以上の企業と国・地方自治体で「男女の賃金の差異」の公表が始まりました。賃金格差の公表は、男女賃金格差の是正に向けた重要な手段の一つです。一方で、格差の実態を十分把握できないという問題もあります。公表の中身は、「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」という三つの区分で、それぞれ男性の賃金を100とした場合の女性の賃金の割合を示すものです。これでは、正規雇用の男性の賃金と正規雇用の女性の賃金といった、同じ雇用形態間の賃金しか比較できません。
 海外の事例を見ると、欧州連合(EU)欧州議会では23年5月、賃金の透明化を通して男女賃金格差の是正をはかることを目的とした「EU男女賃金透明化指令」が成立しています。
 具体的には、同一価値労働同一賃金原則に基づき、労働者個人が使用者に自分と同じ仕事(同一価値労働)をしている人の賃金の開示を求めることができるほか、使用者は、公表した賃金に5%以上の格差があれば、是正する義務を負うことなどが規定されています。 
 日本政府は、公表の義務化を賃金格差の是正に向けた取り組みの一つに位置付けていますが、EU指令のように、格差の是正まで義務付けているわけではありません。是正するかどうかは企業に委ねられています。
 日本共産党は、23年10月18日に「『非正規ワーカー待遇改善法』の提案」を発表し、その中で、「雇用形態•賃金格差公示制度」を導入することを提案しています。 
 男女賃金格差の大きな要因の一つに、処遇の低い非正規雇用の約7割が女性だという実態があります。雇用形態間の格差が賃金格差にも直結していることから、同じ雇用形態間だけでなく、男性・正規雇用と女性・非正規雇用の賃金の格差を見る必要があります。
 職種により昇進などが異なるコース別人事による格差など、同じ雇用形態の中でも性差別的な雇用管理区分による格差があります。こうした間接差別の実態を明らかにするため、一般職、比較的給与の高い総合職といった、より細かい区分の格差も把握・公表対象とする方法もあります。 
 把握・公表した情報をもとに原因を分析し、是正への具体的計画を策定し実行する―ここまでしなければ、格差は是正できません。そのためにも企業に是正を義務付け、その履行を国が後押しする仕組みが必要です。 
                               佐藤萌海(さとう•もえみ日本共産党国会議員団事務局)