強欲インフレ―価格つり上げ、利益は大企業に
2024年9月17日
【赤旗日曜版】9月15日 強欲インフレ―価格つり上げ、利益は大企業に
猛暑も値上げラッシュも、とどまるところを知りません。今月値上げされる食品は、約1400品目で、5ヵ月ぶりに1千品目を超えました。さらに10月も3千品目前後となる予測です。
欧米では価格つり上げ過剰な利益を得ている大企業を「グリード(酒欲)+インフレーション(物価上昇)=強欲インフレと呼んで避難していますが、日本でも同様に「強欲インフレ」が起きているからです。
原油価格が下落するなど輸入物価は落ち着ました。それで今年の飲食料品の値上がりは1・5万品目に達します。 大企業の利益は3年連続で最高利益となり、値上げで利益を増やした企業も数多くありま。一方で、2023年の実質 賃金は21年に比べて13万円も減少しました。
各車種の値上げをしたトヨタは、昨年度5兆円もの利益を上げ、2兆円を配当などで株主に回しました。にもかかわらず賃金の総額はわずか46億増、利益の1000分の1にすぎません。
大企業の強欲インフレは国会でも取り上げられました。日本共産党の小池晃参院議員が「物価上昇のほとんどを企業収益が占め、賃上げに回った分はごくわずかだ」と追及すると、植田和男日銀総裁は「企業収益が最高水準で推移しているのに名目賃金の上昇率はゆるやか」と答え、企業収益が賃金に十分回っていない実態を認めました。
中小企業への影響はどうでしょうか。この半年で物価高による倒産は過去最多484件でした。 日産による下請けへの支払いの30億円減額など、大企業の下請けいじめも次々起きています。
強欲インフレの実態はGDP (国内総生産)デフレーターという物価指標が裏づけています(グラフ)。この指標は輸入価格など海外の影響を除貯き、国内要因による物変動を示しています。
22年は、デフレーターはゼロ近辺でしたが、海外要因も反映する消費者物価指数は上昇しました。つまり物価上昇は主に海外要因でした。
23年は、原油値下がりなどで消費者物価指数は低下する一方、海外要因を除いたデフレーターは急上昇しました。物価上昇の要因が海外から国内に変化したのです。
物価上昇の国内要因は、企業収益要因と賃金要因に分かれます。23年10~12月期は、物価上昇分(約3 • 9%)の大半が企業収益(約3 • 8%) で、賃金(約0•1%)は わずかです。これは、大企業が大幅値上げでもうけを増やしながら、賃金に十分還元していないことを示しています。
強欲インフレで物価上昇が続けば「消費を通じて景気を下押しする可能性」が指摘されています。
日本共産党の「経済再生プラン」は、値上げでため込んだ大企業の内部留保へ課税して中小企業に直接支援を行い、最低賃金を1500円以上に引き上げるなど、大幅な賃上げの道筋を示しています。この提案こそ強欲インフレに対する最も有効な対策です。
湯浅和己(ゆあさ・かずみ 日本共産党政策委会)