高収益が最優先 認証の人員不備―トヨタに初の是正命令

2024年8月25日
【赤旗 日曜版】8月25日<経済 これって何>高収益が最優先 認証の人員不備―トヨタに初の是正命令
 自動車の大量生産に必要な「型式指定」の取得で、国土交通省は7月31日、新たにトヨタ自動車の7車種で不正が見つかり、道路運送車両法に基づく是正命令を出しました。トヨタでは初です。
 トヨタはこれまで型式指定の申請試験で、7車種で不正を行い、生産中の3車種の出荷停止の指示が国から出ています。
 トヨタは内部調査の結果、新たな不正はなかつたと7月5日に報告しました。しかし国交省が本社に立ち入り検査し、同省認可の1車種と海外当局認可の6車棚で新たに不正を確認しました。この間トヨタは「(国の)基準より厳しくしている」「認証制度に問題がある」と強弁と責任回避を繰り返していました。
 是正命令は、2019年の法改止で新設された行政処分です。自動車生産で不正をした企業に、国交省が「組織体制の抜本的な改善が必要」と判断した場合に出し、再発防止策の策定と進展状況の報告を求めます。
 過去の是正命令(表)はいずれもトヨタグループ企業でしたが、今回はトヨタ自動車本体です。
 国交省は再発防止策として「経営層による認証ルールの理解・順法意識の向上」「開発から認証の全体統括管理」を求めています。つまり経営陣にこれらが欠如しているということです。
 型式認証は、新車の大量生産のために安全・環境性能と品質の均一性の審査を受ける制度です。車の安全管理体制の完備、十分な人員や開発、検査を確保すべきです。
 豊田章男会長は6月の自社調査不正公表中間報告で「(認証業務の)全体像を把握している人は一人もいない」と認証業務全体のずさんさと体制不備を認めています。
24年8月25日

 グループ企業ダイハツと豊田自動織機の不正には共通性があります。「世界ートヨタ」の世界戦略で、多種多様な新車の開発期間を極端に短くしています。開発と認証の体制も混然一体とし、開発段階のデータを認証試験に使うなどの不正行為に対するチェック体制がありません。人員を大幅に削減し、少人数に膨大な業務を担わせ、現場で声が出せず問題を指摘できない実態を調査報告書は指摘しています。
 トヨタ本体も開発試験データを無断で認証試験に流用するなどの不正をしています。グループ企業の不正の根源は、トヨタ本体の高収益最優先の経営姿勢にあることが、今回の是正命令で明らかになりました。不正は企業利益最優先による新車短期開発、開発工程数と認証制度への予算を削減した結果です。安全・安心の確保を最優先して守るべき型式指定認証の国際基準・国内基準を軽視し、違反したのです。
 安全・安心で高品質の自動車生産は、社会的責任です。それは、認証制度を「トヨタ都合」ではなく法の定める基準で確実に守り、開発と認証の制度を確立し、自動車生産全体を管理する体制をとり、安全・安心な車づくりへの国民の信頼を得ることです。国はその責任を果たさせるべきです。
 佐々木昭三(ささき・しょ「っぞう労働運動総合研究所理事)