利益増えても負担が減った大企業(【赤旗日曜版】4月7日)
2024年4月13日
【赤旗日曜版】4月7日「経済これって何」利益増えても負担が減った大企業
1989年の消費税導入から35年、財界の強い要望で法人税率は当時の40%から現在は23・2%へと半減、一方、消費税率は3%から10%まで増税されてきました。
2024年度の与党税制改正大綱(昨年12月) は、法人税率の引き下げで「前向きな投資や継続的・積極的な賃上げ」を目指したものの「賃金や国内投資は低迷」し、企業の内部留保や現預金が大幅に増える結果となったことを指摘。「累次の法人税室は意図した成果を上げてこなかった」と失敗に終わったことを認めました。岸田首相も「企業収益が投資や賃上げにしっかり振り向けられてこなかった」と失敗を認めました。
しかし、実際の24年度税制改定では、その反省もなく、消費税減税には触れず、大企業優遇税制を拡充する施策が数多く盛り込まれました。
法人税減税の実態はグラフの通りです。法人税は法人の所得に対してかかるものです。所得が大きくなれば、法人税収も増えるはずです。法人所得は1989年に46兆円だったものが21年には99兆円と倍増しています。ところが法人税収は89年の19兆円から21年には14兆円と逆に減っています。なぜでしょうか。
第一に、法人税率が大幅に引き下げられたことです。
第二に、受取配当や研究開発減税などの大企業 優遇税制があるために、大企業は税率の半分も税金を払っていないことです。(利益上位20社の法定実効税率は約30%なのに、実際の税負担率は14%でした)
第三は、日本の法人税率は所得が増えても一律23・2%となっていることです。大企業の利益が倍増しても、それほど法人税収は増えないのです。日本でも所得税と同じような累進税率を導入すべきです。大企業は増税になりますが、中小企業は減税になります。
国の税収を1990年と20年を税目別に比較してみると、法人税は18・4兆円→ll・2兆円で7・2兆円減少。法人税収は4・6兆円→21兆円で16・4兆円増加。法人税減税による減収分は消費税増税で穴埋めされたのです。税収全体は60・1兆円から60・8兆円とほとんど同じでした。
なぜこんな不公平が起きるのでしょうか。原因は企業・団体献金です。 経済同友会の石原俊代表幹事(日産自動車社長=当時)は「企業が議員に何のために金を出すのか。投資に対するリターン(見返り)、株主に対する収益を確保するのが企業だから、企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待する」(「日経」89年6月3日)と述べていました。トヨタ自動車の22年の自民党への献金額は5千万円ですが、22年度決算の法人税減税額は5211億円ありまし た。リターンは1万倍以上です。
大企業優遇税制を廃止し、利益を上げている大企業は応分の税負担をすべきです。公平な税制をゆがめる企業・団体献金は禁止すべきです。
菅隆徳(すが•たかのり 不公平な税制をただす会共同代表・税理士)