GDP4位に低下、内閣官房機密費―闇金にさせない(いずれも「赤旗})
2024年2月25日
【赤旗】2月25日<主張>GDP4位に低下―内需を温めて「成長する国」へ
かつて「経済大国」などと言われ、米国に次いで世界第2位だった日本のGDP(名目国内総生産、実額=ドル換算)は、2023年、ドイツを下回り4位になりました(15日、内閣府発表)。2010年に中国に抜かれて3位になって以来の“転落”です。
ドイツの人口が日本の3分の2であることを考えると、国民1人当たりでは、ドイツと日本で1・5倍の経済格差がついたことになります。この間の日本の経済停滞を象徴するものとしてショックをもって受け止められています。
◆「コストカット」型経済
世界のGDPに占める日本の割合は1994年の17・8%をピークに低迷しました。1人当たりGDPでは、2022年にイタリアに抜かれ主要7カ国(G7)で最下位です。
日本のGDPが4位になったのは、最近の円安でドル建てだと低く評価されるとともに、「失われた30年」とよばれる停滞に陥り、「成長しない国」になったことがあります。
この間、大企業は「コストカット」のために、リストラと労働者を非正規雇用に置き換える「構造改革」をすすめてきました。日本経営者団体連盟(日経連)が1995年に発表した「新時代の『日本的経営』」は、雇用を短期の「雇用柔軟化グループ」をはじめ、中期、長期の三つに分け、雇用の流動性を高める提起をしました。それを受けて、労働法制の規制緩和が実施され労働者派遣が原則禁止から原則自由に変わり、非正規雇用は4割を占めるまでに拡大しました。低賃金・不安定雇用の非正規公務員や、ギグワーカー、フリーランス、クラウドワーカーなど不安定・無権利状態で働く人の多い職種が広がっています。
非正規労働者の拡大は、非正規だけでなく正規労働者の賃金も下げ、日本を「賃金の上がらない国」にしました。企業の社会保険料負担を減らすことにつながり、社会保障の連続改悪を招きました。消費を冷やす消費税は連続的に増税され、法人税減税の穴埋めに消えました。財界の要求に従ったこれらの政策が暮らしを痛めつけ、GDPの過半を占める消費を抑制し、内需を低迷させました。
自民・公明与党の2024年度の税制改正大綱は「(法人税減税という)近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった」「『コストカット型経済』の下で、賃金や国内投資は低迷してきた。賃金水準は実質的に見て30年間横ばいと他の先進国と比して低迷」とこれまでの自らの経済・財政政策を問題にしています。ところが、両党は、依然として消費税減税に背を向け、社会保障の改悪と大企業優遇の税・財政政策を続けています。
◆賃上げと待遇の改善を
内閣府の2023年度版の日本経済レポート(『ミニ経済白書』)は、「収益など企業部門は好調である一方、これが賃金や投資に十分に結び付かず、内需は力強さを欠いています」とのべています。
内需を温めるためにも、最低賃金を時給1500円に上げることや、ケア労働者の賃金を国の責任で引き上げること、非正規ワーカー待遇改善法(仮称)をつくり待遇改善と正社員化をはかるとともに、暮らしを支え格差をただす税・財政に転換すべきです。
【赤旗】2月22日<主張>内閣官房機密費―闇金にさせないルール作りを
自民党の裏金づくりに国民の怒りが高まるさなか、松野博一前官房長官が、昨年12月14日に事実上更迭されるまでの2週間で、内閣官房機密費(報償費)4660万円を自身に支出していたことが発覚しました(本紙11日付既報)。
◆疑惑から逃げ回る人物が
官房機密費を何に使ったか、会計検査院ですら領収書の提出を求めることができません。まさに使途不明の“闇金”です。
政府は、「取扱責任者である内閣官房長官の判断で支払いが行われるとともに、その使用は内閣官房長官という政治家による優れて政治的な判断の下で決定される」としています。つまり官房機密費が適正に使われているのか担保するのは官房長官です。
松野氏は自民党安倍派(清和政策研究会)の「5人衆」の一人で、政治資金パーティーをめぐり、2018年からの5年間で1051万円を政治資金収支報告書に記載せず、東京地検特捜部の事情聴取を受けています。国民への説明から逃げ回り、弁明したものの派閥に責任転嫁するものでした。こうした人物が官房機密費の適正な使用を管理できるのか。不適格なのはいうまでもありません。
にもかかわらず、多額の官房機密費を持ち出せることは官房機密費の制度的欠陥を示しています。
2018年1月に最高裁は、官房機密費の支出関連文書の一部開示を国に命じました。判決後、原告の上脇博之・神戸学院大学教授ら「政治資金オンブズマン」は菅義偉官房長官(当時)に要求書を送っています。官房機密費を国会議員、ジャーナリスト、公務員に渡すことを禁じることや、一定の期間が過ぎた支出について情報公開を求める内容です。官房機密費が政策買収や世論誘導など民主主義をゆがめるものに使われないための最低限のルールです。
しかし、当時の菅氏から現在の林芳正氏まで歴代4人の官房長官がこの要求書に耳を傾けた形跡はありません。闇金化させないルールづくりすら拒みながら、「厳正で効果的な執行を行っている」(林官房長官)と言われても、信用できるものではありません。
「赤旗」の特報を受け林官房長官は、松野氏の4660万円の持ち逃げを「他の月や前年度の支出と比べても大きく異なるものではない」と述べました。テレビでは、ある政治評論家が「通常の支出」などとコメントしました。
これらの発言は官房機密費そもそもの性格を無視しています。官房機密費は「官房長官のその都度の判断で機動的に使用する」ものです。国民の税金が原資でありながら、支出先や内容を明らかにできない公金だからこそ、その使用はあくまで例外的、機動的なものに限られます。それを、まるで恒常的に使われて当たり前のように言うのは感覚のマヒでしかありません。国民がチェックできない使途秘匿金の垂れ流しを軽視することは許されません。
◆便利なつかみ金許さない
2012年12月に第2次安倍晋三内閣が発足して以降、歴代の内閣は、年間12億3021万円の官房機密費を11年度連続でほぼ使い切ってきました。「機動的」に支出するべき公金が、内閣の便利なつかみ金になっていないか。公表することや党派的・私的流用を許さないルールづくりが急務です。