大企業内部留保528兆円(「赤旗」11月30日)、賃上げと格差是正―停滞破る責任を政治が果たせ(「赤旗」12月2日主張)

2023年12月2日
【赤旗】12月2日 大企業内部留保528兆円―過去最高を更新 賃金は実質減少
 財務省が1日に発表した2023年7~9月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を含む全産業)の内部留保は527・7兆円と過去最大を更新しました。前年同期にくらべ22・3兆円(4・4%)の増加でした。
 第2次安倍晋三政権が発足した12年7~9月期からの伸び率をみると、内部留保は1・64倍と急拡大する一方、労働者1人あたりの賃金は1・12倍にとどまります。12年7~9月期から23年7~9月期に消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は15・1%の上昇と賃金の上昇率を上回ります。実質的には賃金が減少したことになります。役員報酬は賃金の上昇率を上回る1・33倍でした。

【赤旗】11月30日 <主張>賃上げと格差是正―停滞破る責任を政治が果たせ
 物価高が続き、実質賃金が18カ月連続でマイナスとなる異例の事態です。長期的にも実質賃金はピーク時の1996年から年間64万円も落ち込み、30年前の水準です。岸田文雄首相は、賃上げと経済の好循環に「ようやく明るい兆しが出てきた」と、現実を見ない姿勢です。財界・大企業に“お願い”を繰り返しても賃金は上がりません。政治の責任で、低賃金や格差の構造を変える改革に踏み出す必要があります。
女性の間接差別解消を
 岸田政権の経済対策は「企業の稼ぐ力」が賃上げの原資だとして、「供給力強化」の名で大企業優遇策を拡充するというものです。
 賃上げの原資は十分すぎるほどです。大企業の内部留保はこの10年間で180兆円近く増え、510兆円に膨らんでいます。活用の具体的な手だてを講じないのは、政府の怠慢です。
 内部留保に課税して賃上げに活用する日本共産党の提案に対して、岸田首相は「内部留保は経済の好循環の中で活用されていく」として、背を向け続けています。
 賃金格差の是正にも後ろ向きです。岸田政権は公務員での差別の実態を認めようとしません。
 日本共産党の田村智子副委員長が28日の参院予算委員会で示した調査結果「国の公務員の男女比」によると、「任期の定めのない常勤職員」(正規)は男性約20万人に対し女性は約5万9000人と、女性は正職員全体の22・7%です。非正規職員は男性約3万人、女性約6万人です。女性の非正規職員の平均賃金は254万円で、民間の非正規労働者の平均より50万円も低くなっています。
 しかし河野太郎国家公務員制度担当相は「非常勤職員については各省庁の業務状況に応じて適切に任用されている」「給与は給与法などに従って適切に定められている」と言い張りました。
 正職員は8割が男性、非正規は女性が7割近いことを正当化できる理由は何もありません。「適切な任用」を表向きにした間接差別は歴然としています。自らの政府職員に対する差別を放置するところに岸田政権の姿勢があらわれています。
 労働者全体でみても、非正規の7割近くが女性です。非正規の賃金は男女合計で見て正規の7割弱です。有給休暇など賃金以外の待遇にも正規と非正規で大きな差があります。人権の上でも、賃金水準を上げるためにも、男女格差の是正は極めて重要です。政府が差別の解消に率先して取り組み、非正規職員の時給を直ちに1500円以上に引き上げるべきです。
希望持ち働ける社会こそ
 公務の非正規職員を3年で雇い止めにする、細切れ雇用の仕組みも改めなければなりません。
 自治体では、公立保育所の保育士の6割、消費生活相談員の8割、図書館司書の7割が非正規です。いずれも専門性の高い仕事を担当して国民の暮らしを支えています。恒常的業務の細切れ雇用を禁止するのは当然です。正規化を望む非正規公務員が正職員になれる仕組みと財政措置が必要です。
 内部留保課税も、公務分野での格差是正も、政府の姿勢にかかっています。人を使い捨てにする働かせ方をやめさせ、誰もが希望を持って働ける社会を築くため政治の転換が欠かせません。