インボイス増税―苦難は明らか 直ちに中止せよ(「赤旗」22日主張)

2023年11月23日
【赤旗】11月22日<主張>インボイス増税―苦難は明らか 直ちに中止せよ
 岸田文雄政権が消費税のインボイス(適格請求書)制度の導入を10月1日に強行して1カ月半余りが過ぎ、現場は混乱を極めています。新たな税負担、免税事業者の排除、複雑極まる制度による膨大な事務―恐れていたことが、小規模事業者やフリーランスにのしかかっています。営業と暮らしに与える害悪は明らかです。制度の廃止は死活問題です。
排除される免税事業者
 業者間の取引でインボイスがないと、仕入れ分の消費税を差し引くことができなくなりました。インボイスは課税事業者でないと発行できません。年間売上高1000万円以下の免税事業者は、課税事業者になってインボイス登録をすることを迫られています。
 免税制度があるのは、零細な事業者は価格を自分で決める力が弱いからです。課税事業者になれば利益を削り、身銭を切ってでも消費税を納めなければなりません。
 財務省の試算では、免税事業者の年間粗利益は平均154万円であり、課税事業者になった場合、15万円の消費税負担が生じます。税率を上げない増税です。
 「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が導入1カ月にあたって行ったアンケート調査(13日発表)では34・5%が「消費税の負担増や値引きによって手取りが減る」と答えました。原材料費や燃料代の高騰、コロナ禍による仕事の減少の中で新たな税負担を強いられ、廃業を考えているとの声が数多く寄せられました。今年度の納税を機に廃業が多発することが懸念されます。
 免税事業者にとどまった場合、取引先から消費税相当分の値引きを要求されたり、取引を断られたりすることがあります。アンケートに寄せられた訴えは200件以上にのぼりました。「インボイス未登録を理由に取引先から一方的に報酬の値下げを提案された」との回答は16・6%でした。
 「未登録のままだと他の取引先に発注すると言われ、価格交渉にも応じてもらえない。節約して食いつないでいるが、消費税の納税額を確保する余裕はない」(40歳代、神奈川県小田原市)、「消費税分の報酬を下げられたり、免税事業者でいる意思を告げたら次の話が来なくなったりと、すでに不安」(30歳代、福岡市)と言います。
 政府は、優越的地位を乱用して免税事業者を排除したり、不当な値引き要求をしたりしないよう一応呼びかけていましたが、歯止めになっていません。
 企業の経理担当者からは、業務負担の増加で疲弊しているとの訴えが相次ぎました。
消費税の5%減税こそ
 インボイスの導入中止を求める運動では、オンライン署名が56万人を超えて史上最高となりました。声優、アニメーターらが立ち上がり、中小業者の運動と結んで広がっています。岸田政権は国民の声を無視し、複数税率への対応を口実に、インボイス制度に固執しています。
 消費税率を5%に戻せば、複数税率もなくなり、インボイス導入の口実もなくなります。消費税減税こそ、物価高騰から暮らしを守り、経済を立て直す最も有効な対策です。消費税は、所得の低い人ほど負担の重い最悪の不公平税制です。廃止をめざすとともに、5%に引き下げることが急務です。