GDPマイナス―停滞打開する改革待ったなし(「赤旗」主張)

2023年11月20日
【赤旗】11月16日<主張>GDPマイナス―停滞打開する改革待ったなし
 2023年7~9月期の実質国内総生産(GDP)が前期比0・5%減と、3四半期ぶりにマイナスになりました。GDPの5割強を占める個人消費が0・04%減と、前期に続いて落ち込んだことが主な要因です。企業の設備投資も0・6%減と2期連続のマイナスでした。物価高騰から暮らしを守る緊急の対策をとるとともに、経済の長期停滞を打開する改革が待ったなしです。
賃上げに政治が責任を
 内需でプラスになったのは政府消費だけで、ほかの項目は軒並みマイナスか横ばいでした。消費の不振が響き、経済をけん引する要素が見当たりません。
 消費が減っている最大の原因は物価上昇に賃上げが追い付いていないことです。総務省の家計調査によると、23年に入って家計の実質消費支出が前年より増えた月は2月だけで、他の8カ月はマイナスです。食料、家事用品といった生活必需品まで買い控えざるを得なくなっています。
 岸田文雄首相は30年間の「コストカット型経済」から転換を図るとの触れ込みで、総合経済対策と補正予算案を閣議決定しました。中身はまったく貧弱です。
 首相は、税の増収分の一部を還元すると言って、1年だけの所得税減税を盛り込みました。実質賃金が26年間で年64万円も減っているもとでは「焼け石に水」にもなりません。その一方、消費税減税はかたくなに拒んでいます。賃上げ対策に掲げているのは、長年実施しても賃上げにつながらない企業減税です。
 こうした政策しか打ち出せないのは、国民に「コストカット」を押し付けてきた政治に反省がないからです。労働者の権利を守る法制度を切り崩し、低賃金の非正規雇用を拡大したのも、大企業を優遇して法人税減税を繰り返してきたのも自民党政治です。社会保障費は自然増まで抑え込む異常な切り下げが行われています。
 賃上げを実現するためには、政治の責任で何をやるのか、具体的に示さなければなりません。
 日本共産党は内部留保課税を提案しています。500兆円を超える大企業の内部留保の一部を、中小企業と大企業の労働者に還元し、時給1500円の最低賃金を全国で実現する抜本的方策です。
 名ばかりの個人事業主など、労働者の権利を保障されていない働き手を含め、非正規ワーカーの待遇を改善する法律をつくることも喫緊の課題です。非正規の多くは女性です。男女の賃金格差をなくすうえでも非正規ワーカーの権利保障が不可欠です。
格差正す税財政の役割
 暮らしを守り、格差を正す税財政本来の役割を取り戻すことも重要です。
 消費税率を緊急に5%に下げることは最も有効な物価対策です。所得の少ない人ほど負担が重い消費税を減税することは、公正な税制を築く上でも前進となります。
 「増える年金」をはじめ、安心できる社会保障を実現することや、重すぎる教育費負担の軽減は、消費を活発にし、経済の好循環を生み出します。
 将来に希望が持てる社会を実現するためには、経済の持続的発展が必要です。そのために、財界・大企業の利益を最優先させてきた政治の転換が欠かせません。