政府の経済対策―場当たり減税 見抜かれている(11月4日「赤旗」主張)
2023年11月5日
【赤旗】11月4日<主張>政府の経済対策―場当たり減税 見抜かれている
岸田文雄政権が17兆円規模の総合経済対策を閣議決定しました。1人当たり4万円の所得税・住民税の定額減税を「第1の柱」に掲げましたが、発表前から世論調査で「評価しない」との回答が6割前後を占めています。効果のない、場当たり的な減税であることを国民は見抜いています。
◆焼け石に水
軍拡増税も 所得税減税は2024年度の1回だけです。労働者の実質賃金(年収)がピーク時の1996年から64万円も減っているもとで、焼け石に水でしかありません。
しかも岸田政権は、大軍拡の財源を確保する所得税増税の方針を決めています。24年度の実施は見送るものの、こちらは恒久的な増税です。現在、所得税に上乗せされている東日本大震災の復興特別所得税の徴収期限を延長し、増収分を軍事費に流用します。
2日の記者会見で首相は「今回減税することと防衛力強化の税制措置は矛盾するものではない」と述べました。軍拡増税を実施する方針に変わりはありません。増税路線が批判を浴び、内閣支持率が下がると、1回だけのわずかな所得税減税で批判をかわそうとするのは、誰が見ても無定見です。
首相は、税の増収分を国民に返すと言います。しかし低所得者を含めて国民すべてが負担している消費税の減税はかたくなに拒んでいます。
直接物価を下げるという点で消費税減税は、国民に届く、最も効果的な経済対策です。経済専門家からも消費税減税によるGDP(国内総生産)の押し上げ効果は所得税減税より大きいとする試算が出されています。
にもかかわらず首相は「そもそも消費税を下げることは考えていないので、効果についても考えていない」(参院予算委員会での答弁)として、検討すら拒否しています。
総合経済対策は、消費税のインボイス(適格請求書)制度についても推進するとしています。零細な免税事業者に課税事業者になることを迫っています。税率引き上げを伴わない増税です。
物価高に苦しむ暮らしを支えるために、消費税こそ減税すべきです。税率を5%に下げれば、複数税率もなくなり、政府のインボイス導入の口実もなくなります。
総合経済対策が「第2の柱」とする「持続的賃上げ」に掲げたのは、何年実施しても一向に効果が上がらなかった法人税減税です。赤字のため課税対象にならない多数の企業は使いようのない施策です。これまで法人税を下げても賃上げに回らず、大企業の内部留保が増えるだけでした。「賃上げ減税」を続ける意味はありません。
◆大企業優先の転換こそ
物価上昇を上回る賃上げを実現するには、500兆円を超える大企業の内部留保の活用が欠かせません。政治が力を発揮する必要があります。日本共産党が提案している内部留保への課税を真剣に検討すべきです。
総合経済対策には、暮らしを支える肝心な政策が欠ける一方、先端半導体への投資促進や宇宙分野の戦略基金など、大企業支援を拡充するメニューは豊富です。
根底にあるのは、国民の暮らしより大企業・財界の利益を優先する政治です。このゆがみを正す、政治の転換が迫られています。