パート主婦「年収の壁」㊦ (「赤旗日曜版」)

2023年7月15日
【赤旗日曜版】7月16日 経済 これって何―パート主婦「年収の壁」㊦
 「106 万円の壁」については、事業主への補助金で保険料負担を穴埋めする方策を、政府が検討していると報道されています。しかし、これでは「130万円の壁」は害されません。これを解決するには、どつしたらいいでしょうか。
 「130 万円」を「146万巴とか「150万円」に変えて「壁の位置を動かせば、当座のしのぎにはなります。しかし、賃金が上がれば問題が繰り返されます。しかも、「壁の位置」が大きくなるほど、それを超えた場台の保険料負担、すなわち「壁の高さ」も高くなります。保険料は年収に比例する場合が多いからです。
 また、年金の「3号」はサラリーマンの配偶者だけで、独身者や自営業者の配偶者には適用されません。健保の扶養家族も、自営業者の家族や、挟鶴してくれる親などがいない独身者には適用されよせん。「壁の位置」を動かすのでは、こうした不公平さが増すことにもなります。
さらに、「壁」の範囲に働く時間を抑えていることが、女性のキャリア形成や社会進出の妨げになっているという批判もあります。
 本来、健康保険や厚生年金への加入は、労働者にとって医療や老後保障を確保するうえでの「権利」でもあります。パートも労働者である以上、これらの保険に入れるようにするのが当然です。多くのパート労働者が「壁」を気にせずに、条件と能力に応じて働きたいだけ働けるようにすべきです。
 「壁」を乗り越えて働けるようにするには、「壁の高さ」を低くする対策が必要です。
 「壁の位置」が現在の130万円になったのは1993年、今から30年前のことです。この30年間には、健保や年金の保険料が大きく引き上げられてきました。
 2000年には介護保険が創設され、その保険料も追加されました。(介護保険料の対象は40 歳以上ですが、パート主婦の多くはその年齢です)この結果、年収130万円を超えた場合の保険料負担も、表のように、93年当時に比べて軒並み増加しました。職場の社会保険に加入できる場合でも、保険料負担は30年前の14・7万円から現在の19・6万円に、5万円近くも増加しました。国保や国民年金の場合はさらにひどく、東京23区の場合だと16・2万円から31万円に、2倍近くにも増えています。30 年間に「壁の高さ」が2倍になったのです。
 政府が検討しているのは、パート主婦の保険料負担を補助金で穴埋めする方法です。しかし、パート主婦だけを補助するのでは、独身者などとの不公平が拡大します。
 独身・既婚や配偶者の職種に関係なく、低所得者の保険料負担を引き下げることが必要ではないでしょ「つか。例えば、日本共産党が提案しているように、国保料の均等割・平等割を廃止することも、そのーつです。こうした方策を、真剣に議論すべき時だと思います。 垣内亮(かきうち・あきら日本共産党政策委員会)