ベトナムが消費税減税(20日)、「富裕層課税強化を」米国の資産家ら提言(同日)、 IMF季刊誌を読む㊤、㊦(いずれも「赤旗」)

2023年4月22日
【赤旗】4月20日 ベトナムが消費税減税―経済回復へ 年末まで
 【ハノイ=面川誠】ベトナム政府は7月から12月末まで付加価値税(消費税に相当)を10%から8%に引き下げます。物価・財政担当のレ・ミン・カイ副首相が17日、財務省の提案を承認しました。カイ氏は財務省に、引き下げ実施のために必要な国会決議案を作成するよう指示しました。
 消費・需要を刺激して生産と事業の回復を促進し、経済回復を目指すとしています。ベトナムの今年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比3・32%。「ウィズコロナ」政策に転換した21年の第4四半期以降、最も低い成長率です。
 ベトナムは昨年も、新型コロナ流行の影響を受けた事業者や消費者を支援するため、2月から12月まで付加価値税を8%に引き下げました。昨年の付加価値税の減税総額は約44兆ドン(約2520億円)。今年の減税総額は約35兆ドン(約2000億円)に達する見込みです。

【赤旗】4月20日「富裕層課税強化を」米国の資産家ら提言
【ワシントン廿島田峰隆】米国の資産家や富裕層でつくる団体「愛国的な百万長者」は同国の確定申告締め切り日の18日、富裕層への課税を大幅に強めるよう連邦議会に要請する提言書を発表しました。不公平な税制が経済格差の原因だと指摘し、「富の集中が持続不可能なところまで来ている」と強調しました。
 同団体のモリス・パール議長は「確定申告締め切り日は超富裕層が税制面で全く別世界にいることを想起する日だ」「われわれ富裕層にとっては税の抜け穴はますます大きく、税率はますます低くなっている」と指摘。「税制を変えないと米国の経済と民主主義は生き残れない。富裕層への課税が必要だ」と述べました。
 提言書は、米国の経済格差は過去100 年でもっとも深刻だと懸念を表明。過去50 年近く、富裕層が潤えば成長が刺激されて恩恵がしたたり落ちるという「トリクルダウン」理論が喧伝(けんでん)されてきたものの「実際はそうはならなかった。富裕層減税は格差を広げた」と批判しました。
 具体的な解決策として、累進課税を強めて年収1億が(約134億円)以上の高額所得層には90%の量局税率を設定し、貧困層には税控除を充実させることを提案しています。資産規模に応じた2~8%の富裕税の導入も要求しています。
 提言書は「この計画はお金持ちに反対するものではない」と指摘。税制を正すことで「何十年も失われてきた経済と民主主義の活力を取り戻すことができる」とし、「米国の民主的な資本主義」を守るよう呼び掛けています。

【赤旗】4月12日 IMF季刊誌を読む㊤―金融政策「一新の時」
 国際通貨基金(IMF)が季刊誌(3月1日公表)で「金融政策の新たな方向性」をテーマにした特集を組み、各国の中央銀行関係者や学識者の寄稿文を掲載しました。世界と日本の金融政策の焦点について群馬大学の山田博文名誉教授に読み解いてもらいました。

 世界各国は40年ぶりの高いインフレに襲われ、通貨や物価の番人である中央銀行の金融政策に注目が集まっています。各国中央銀行は一斉に金利を大幅に引き上げ、インフレ対策に走っています。でも、日銀だけは異次元金融緩和政策に固執し、インフレ対策に乗り出せていません。
 「金融政策の新たな方向性」をテーマにしたIMFの特集には、各国の中央銀行関係者や学識者が寄稿しています。日本から白川方明・元日銀総裁が、「金融政策の基礎と枠組みを見直すとき」と題した英文を寄稿しています。
◆配分中身触れず
 その寄稿文で白川氏は、2013年以降続いてきた日銀の異次元金融緩和政策は物価目標を達成できなかっただけでなく、「資源の誤った配分による生産性への悪影響を深刻化させた」と批判しました。
 世界各国の要人が読むであろうIMFの特集記事において、元日銀総裁が現行の金融政策を批判し、寄稿文の最後に「金融政策の枠組みを一新する時が来ました」と指摘したことは、国際社会へ大きな影響を与えずにはおかないでしょう。各国関係者や経済界は、4月からの植田和男新日銀総裁のもと、異次元金融緩和政策が変更されるメッセージとして受け取ったに違いありません。
 異次元金融緩和政策は、円安と捲昌を誘発し大企業と富裕雇の富の蔭穫に貢静する一方、実体経済の低迷と資産格差の拡大、直近のインフレを誘発しました。白川氏のIMF寄稿文を機会に、この悪名高き政策を国際世論で包囲するような情勢になれば、それは日本経済と国民生活にとって望ましい情勢と言えるでしょう。
 ただ、寄稿文は、「資源の誤った配分による生産性への悪影響」を指摘するだけにとどまり、資源配分の中身については具体的に触れていません。経済・財政・金融・国民生活など多方面にわたる異次元金融緩和の悪影響にも触れていません。
◆通貨のアン力ー
 とはいっても白川氏は、日本銀行の本来の役割について次のように指摘しました。「(自国の通貨価値を安定させるための)通貨のァンカー(いかり)の役割は、インフレ目標を設定するという単純な行為ではなく、金融引き締めによってインフレを抑制し、最後の貸し手になるという中央銀行の確固たるコミットメントによってのみ確立できます」。この指摘は重大です。
 アベノミクスの第1の矢を担った黒田東彦日銀は、通貨価値を安定させるという中央銀行の本来の役割を投げ捨て、異次元金融緩和政策に固執し、「政府の子会社」のように行動してきました。白川氏の寄稿文が、本来の中央銀行に向かって日銀が歩み出すための一歩になってほしいとの期待なのか、寄稿文が3月1日にIMFから公表されると、国内の新聞各紙は一斉に紹介しました。
 白川氏は寄稿文で「中央銀行は現在、インフレと雇用のトレードオフに直面しており、その解消が非常に困難」と指摘しています。それは世界の中央銀行関係者や学識者が直面している大問題でもあります。(つづく)

【赤旗】4月13日 IMF季刊誌を読む㊦―欧米の学者の見識は
 いま、各国の中央銀行は、インフレ退治と金融危機回避の難間に直面しています。
 インフレを退治するには金利の引き上げなど、金融を引き締めなければなりませんが、金融を引き締めると、金融機関や企業の経営悪化を誘発し、場合によっては金融危機や経済不況を深刻化させます。こんな情勢下で各国の関係者はどのような見識を示しているのでしょうか。
◆中央銀行独立性
 米プリンストン大学のサンフォード教授は、「長期にわたる低金利と低インフレの後、世界経済は高インフレと高水準の公的債務と民間債務を特徴とする段階に入っています」と現状を認識します。その上で、インフレの脅威をかわすには金利を上げなければならないが、金利を上げると債務返済の費用が高くなり、政府にとっては財政への悪影響が発生するので政府は反対する、と指摘します。この指摘は、いま世界各国の中央銀行と政府が抱え込んだ深刻なジレンマを表現しています。
 しかしサンフォード教授は、このようなジレンマにもかかわらず、中央銀行は政府の圧力とたたかい、その本来の役割を果たすべきだと強調しています。
 「中央銀行の権力と独立性の最終的な源は国民であるため、世論を自分の側に置いておく必要があります」
 「中央銀行は、特に財政主導のインフレに直面して、国民の支持を維持するための行動の根拠を効果的に伝える必要があります。中央銀行は、債務不履行が発生した場合に公的債務を貨幣化して政府を救済しないと信頼できる約東をすることができれば、最終的にその優位性を維持できます」
 こうした中央銀行の本来の姿勢は、日本では財務省出身の黒田東彦前日銀総裁のもとで無視されました。植田和男新総裁は、日銀総裁としては初めての経済学者で、学位を米マサチューセッツ工科大学で取得しました。学者として、失われた日銀の信頼を取り戻せるか、国民は注目していくことになります。
◆異端だった日銀
 欧州大学研究所のコルセッティ教授は、日銀による国債の爆買いについて、こう警告しています。
 「債券の購入は、中央銀行のバランスシートを損失リスクにさらし、そのような損失は、通貨当局に通貨印刷機を起動させ、その結果、物価安定の使命から逸脱することを余儀なくさせるでしょう」
 米ダートマス大学のブランチフラワー教授は、中央銀行の説明責任と情報発信の重要性を強調します。
 「金融政策は、消費者が支払う商品やサービスのコスト、労働者の雇用機会と賃金、退職者の貯蓄の収益率など、事実上すべての人に直接的な影響を及ぼします。その結果、政策立案者が金融市場参加者の限られた聴衆に技術的な用語で伝えるだけでは十分ではありません。むしろ、これらの政策決定を一般家庭や企業に説明するには、さまざまなコミュニケーションツールが必要です」
 元インド準備銀行総裁で米シカゴ大学のラジャン教授は、中央銀行にとって介入は少ない方がよく、「より集中的で介入主義の少ない中央銀行は、より良い結果をもたらす可能性が高い」と指摘します。
 これらの欧米の経済学者の見識に照らすと、日銀がいかに異端で、非常識な「中央銀行」だったかが証明されます。(おわり)