防衛費の急増 膨張に歯止めかけねば(東京新聞 24日)、暮らし壊す軍拡大増税やめよ(「赤旗」18日)、金融緩和修正―生活安定の使命に戻る転換を(「赤旗」22日)

2022年12月24日
【東京新聞】12月24日<社説>防衛費の急増 膨張に歯止めかけねば
 二〇二三年度予算案で防衛費は前年度から26%増え、過去最大の約六兆八千億円となった。防衛費の急激な増加は逆に、地域情勢を不安定化させかねない。来年一月召集の通常国会では徹底的に審議し、膨張に歯止めをかけたい。
 政府は厳しい周辺情勢を踏まえ国家安全保障戦略など安保関連三文書に、二七年度の防衛費を関連予算と合わせて国内総生産(GDP)比2%に当たる十一兆円規模に「倍増」させる方針を明記。
 計画一年目に当たる二三年度は敵基地攻撃能力(反撃能力)としても使える長射程ミサイルの導入に主眼を置いた。国産化の研究開発費に加え、米軍が中東での戦争で使ってきた攻撃型ミサイル「トマホーク」購入に二千百億円余を計上した。数百発規模とみられ、二六年度に配備を始める。
 国家安保戦略には敵基地攻撃能力の行使に関し、情報収集を含めて日米の「協力態勢を構築する」と明記され、自衛隊と米軍との一体化が一層進む可能性がある。
 日米安保条約体制の下、自衛隊が防衛力という「盾」、米軍が攻撃力という「矛」の役割を担ってきたが、自衛隊が攻撃力の一部を肩代わりすれば、日米安保が変質する可能性すらある。
 集団的自衛権の行使を容認した安保関連法に敵基地攻撃能力の保有が加われば、自衛隊が他国と戦闘する米軍を守るための武力行使が法律、装備両面で可能になる。
 台湾有事が起きた場合、日本が米中両国の軍事衝突に巻き込まれる事態にならないか危惧する。
 二三年度予算案では、自衛隊艦船や施設の整備に建設国債を充てることも初めて認められた。多額の国債発行で軍事費を膨張させ、破滅的な戦争に突き進んだ反省から、防衛費に国債を充てることは長らく「禁じ手」だった。
 防衛費を急増させ、財源に建設国債を活用する二三年度予算案は「平和国家としての歩み」を外れる第一歩になりかねない。
 にもかかわらず安保三文書の内容や、防衛力強化に向けた増税を含む財源確保は岸田文雄首相の指示で決められ、これまで一度も国会で審議されていない。首相自身が国会や国民に説明を尽くし、幅広く合意を得られなければ、軍拡や増税など許されるはずがない。
 国会での徹底審議とともに、衆院解散・総選挙で国民に信を問うことを重ねて求めたい。

【赤旗】12月18日<主張>与党税制大綱―暮らし壊す軍拡大増税やめよ
 自民、公明両党が16日、2023年度税制改正大綱を決定しました。同日、閣議決定された「安全保障3文書」が打ち出した大軍拡を実行するため、27年度までに所得税、法人税、たばこ税の増税で1兆円強の財源を確保すると明記しました。コロナ禍と物価高騰で苦しむ国民に、際限のない負担増を押し付ける岸田文雄政権の危険な姿がいっそう鮮明です。
◆不公平税制には手つけず
 所得税に税率1%を上乗せする付加税を創設し、軍事費の財源とします。東日本大震災の復興費に充てている復興特別所得税の税率を現行2・1%から1%下げます。同税の税収の半分が軍事費に回ることになります。現行37年までの課税期間を、期限を示さず延長します。所得税の納税者すべてを対象とした庶民増税です。
 岸田首相は16日の記者会見で「復興財源は総額まったく変わらない」「負担感を払しょくできるよう努力する」と述べましたが、増税と復興財源の流用は、ごまかしようがありません。
 増税以外の財源確保策としては「安保3文書」の一つ、「防衛力整備計画」が決算剰余金の活用や「防衛力強化資金」の創設を挙げました。強化資金の財源には医療関係の積立金やコロナ対策費の未使用分など医療、暮らしの予算が流用されようとしています。
 いずれも一時的な財源にしかならず、増税が1兆円程度にとどまる保証はありません。国債の増発による軍事費調達は将来にわたって国民の負担を増やします。
 「安保3文書」は今後10年間の軍拡推進を宣言しています。財源探しが社会保障費の削減や、消費税増税に行き着くのは必至です。
 増税の実施について大綱は「24年以降の適切な時期」として時期を示しませんでした。来年春の統一地方選挙を前にして、自民党内で世論を恐れる声が上がっていました。手段を選ばない軍拡財源の調達は、国民の厳しい批判を浴びています。増税を阻むうえでも、大軍拡反対の運動を広げることが重要です。
 不公平税制の是正は置き去りのままです。大綱は、高額所得者の「負担の適正化」を盛り込みましたが、所得税を追加されるのは年間所得が30億円を超す200~300人の超富裕層だけです。年間所得が1億円を超すと所得税負担率が下がる「1億円の壁」の打破にはつながりません。富裕層が優遇されている金融所得課税の是正が必要です。
 小規模事業者に消費税の負担を押し付けるインボイス(適格請求書)制度は、23年10月の導入を変えません。
◆今こそ税の再配分機能を
 大綱は、日本の賃金が「主要先進国を大きく下回っている」と指摘し「500兆円に及ぶ企業の内部留保」があることを認めています。しかし、安倍晋三政権の法人税減税で膨らんだ大企業の内部留保の活用には触れません。法人税を軍拡財源に使うのではなく、増えすぎた内部留保に課税し、賃上げに振り向けることこそ喫緊の課題です。
 国民の生活と中小企業の営業が危機的状態にある今こそ、税制に所得の再分配という本来の機能を発揮させる改革が求められています。大軍拡ではなく、暮らしと営業を守れと声を広げましょう。

【赤旗】12月22日<主張>日銀 金融緩和修正―生活安定の使命に戻る転換を
 日銀が20日の金融政策決定会合で「異次元の金融緩和」の一部修正を決めました。長期金利(10年物国債の利回り)抑制の上限を従来の0・25%から0・5%に引き上げました。超低金利政策を手直しする、事実上の金利引き上げと受け取られています。
 大規模な金融緩和が、急激な円安・物価高をはじめ多くの弊害をもたらしたことは隠しようがありません。政府と日銀は破綻を認め、日銀が、国民生活の安定という本来の使命に立ち戻れるよう、転換に踏み出すべきです。
◆隠しようのない悪影響
 異次元緩和は、安倍晋三政権のもとで2013年に導入されました。日銀が市場から国債を大量に買い入れてお金の供給を増やせば、物価や賃金が上がり、経済に好循環が生まれるとの触れ込みでした。株価は上昇し、大企業・富裕層はもうけを増やしました。
 しかし賃金は上がらず、今起きているのは、40年ぶりの大幅な物価上昇と実質賃金の低下です。米国がリーマン・ショック以来の金融緩和から引き締めに転換したことで、緩和を続ける日本との金利差が広がり、円安が急激に進行しました。これが輸入物価を押し上げ、国民を苦しめています。
 6月には黒田東彦日銀総裁が講演で「家計の値上げ許容度も高まっている」と述べ、異常な物価高を国民が容認しているとの認識を示しました。批判を浴びて撤回したものの、「物価の安定」(日銀法第2条)を理念に掲げる日銀の総裁にあるまじき発言でした。
 異次元緩和が財政に与える悪影響も深刻です。日銀による大規模な国債購入は当初から「財政ファイナンス」(国の借金の穴埋め)と批判されてきました。9月末時点で国債発行残高の半分以上を日銀が保有する異常さです。
 金融分野では、超低金利のため地方銀行などの収益が悪化しています。企業の資金を調達する社債の発行にも支障が出ていました。
 黒田総裁は今回の決定を説明した10日の記者会見で「利上げではない」「出口戦略の一歩ではまったくない」と言い張り、政策転換であることを否定しました。「来年度に入ると物価上昇率は低下していく」として、2%の物価目標実現に向けて異次元緩和をさらに続ける考えも表明しました。
 今後、国債の買い入れは増額します。大企業の株式で構成する投資信託の購入も継続します。中央銀行が株式市場に資金を投入して株価をつり上げる、主要国に例のない大企業優遇策です。財政、金融のゆがみがいっそう拡大することになります。
◆賃上げ軸の経済回復こそ
 異次元緩和の危険は導入前から日銀内でも指摘されていました。20年前、それを押し切り、日銀と共同声明を結んで実施に踏み切らせたのは当時の安倍首相です。
 今や異次元緩和は、日本経済と国民の暮らしに重大な打撃を与える危機的な状況を生んでいます。金融政策の見直しは待ったなしです。そのためには、アベノミクスを全面的に継承した岸田文雄政権が方向転換に責任を持たなければなりません。
 何よりも賃上げを軸に実体経済を立て直すことが重要です。内需を活発にすることに本腰を入れてこそ金融政策の正常化が可能となります。