「インボイス―地方自治体対応に混乱」、「物価高お年寄り世帯ほど影響」(「赤旗」)
2022年8月28日
【赤旗】8月25日 ―インボイス―地方自治体対応に混乱
政府が来年10月からインボイス(適格請求書)制度の導入を狙うもと、地方自治体で混乱が生じています。地方自治体から商品・サービスを仕入れている事業者にインボイスを発行しなければならなくなるのに、その準備が進んでいません。このままインボイス導入を強行すれば地域経済に大打撃を与える危険があります。(清水渡)
インボイス制度への地方自治体の対応は、総務省が日本共産党・田村貴昭衆院議員に示した資料から判明しました。
◆遅れは明らか
総務省の資料は6月20日付で全国の都道府県・市区町村の税務担当課に対し送付されたもの。3月に総務省が各自治体の一般会計・特別会計・公営企業会計の計1万5431会計のインボイス対応状況を調査したところ、インボイス発行者の登録申請が必要だと認識しているのは6021会計と4割程度。検討中は3645会計で23・6%、不要だと考えているのは5765会計で37・4%でした。
インボイス制度では消費税の課税取引を行う事業者が税務署に課税者登録を行うことが必要です。課税者番号を記載したインボイスを仕入れの際に受け取れなければ、事業者の消費税負担額が増えてしまいます。この制度は自治体でも例外ではありません。例えば、課税業者が自治体の保有するホールを借りて有料の公演をおこなったり、自治体直営店から特産品を仕入れて販売したりする場合は、自治体からインボイスを受け取る必要があります。
自治体の一般会計は消費税法上、消費税の申告義務はありませんでした。一方、特別会計や公営企業会計には消費税の申告義務があります。ただ、その場合でも年間売上高が1000万円以下の小規模な特別会計であれば免税事業者として消費税の申告義務はありません。
そのため自治体の一般会計や、小規模な特別会計・公営企業会計は現在、課税業者登録をしていません。現状のままインボイス制度が導入されれば、自治体から仕入れている課税事業者の消費税納税額が増えてしまうことになります。しかし総務省の調査によると、一般会計では1788会計のうち1088会計しか対応が必要と認識していません。特別会計では8420会計のつち885会計のみです。総務省は各会計
が「原則としてインボイス制度に対応する必要がある」としており、自治体の対応の遅れは明らかです。
◆負担増に疲弊
インボイスは事業者が税務署に課税者登録するだけで発行できるわけではありません。対応したシステムへの改修が必要な場合があります。総務省の調査では、対応が必要だと判断している6021会計のうち、改修不要は384会計、着手中は1068会計と対応しているのは4分の1にも届きません。改修の必要性を認識していながら着手していないのが2475会計と4割を超え、要否検討中が2094会計と3分の1を超えます。遅れは明白です。
同時に自治体と免税事業者との取引にも間題が発生する危険があります。多くの自治体では上下水道事業や公営交通事業などは特別会計で営まれています。これらの事業で地場の小さな工務店などに依頼されてきた、修繕工事などが、インボイスが発行できないという理由で取引対象から外されてしまうかもしれないのです。あるいは取引継続のために課税業者への転換を求める可能性もあります。自治体との取引が地域経済を支えている地方も少なくありません。小規模事業者の消費税負担を増やし、地方経済を疲弊させるインボイス制度は導入を中止すべきです。
【赤旗】8月25日 目でみる経済―物価高お年寄り世帯ほど影響
物価高が家計を直撃しています。今回の物価高はお年寄り世帯ほど影響が深刻です。総務省「消費者物価指数」は、世帯主の年齢別の指数を公表しています。生活実感に近い「持ち家の帰属家賃を除く総合」で2015年を100とした推移を算出すると、19年以降、若い世帯で下がり、お年寄り世帯で上がっています。18年まではどの世帯もおおむね同じ傾向でした。
年齢によって消費者物価指数の動向が変わるのは、消費傾向が異なるからです。子育て世帯は教育費がかかります。携帯電話料金も若い世帯ほど多くなります。お年寄り世帯は消費支出に占める食料費の割合が高くなる傾向があります。在宅時間が長いため、光熱・水道費の変動も大きく影響します。
19年10月、当時の安倍晋三政権は消費税率10%への引き上げを強行する一方、幼児教育の無償化を実施。菅義偉政権は携帯料金引き下げを目玉としました。これらが若い世帯の指数を下げました。一方、食料品やエネルギー価格の上昇は、お年寄り世帯に大きな影響となりました。岸田文雄政権はお寄り世帯の生活を支える年金の支給額を削減しました。消費税減税と減らない年金の実現こそ必要です。(清水渡)