消費税5%減税―物価高から暮らし守る緊急策(17日付「赤旗」主張)、6月受給分マイナス0.4%変わる年金事情(FNNプライムオンライン)、新自由主義の熱源①~④(「赤旗」)

2022年6月18日
【赤旗】6月17日<主張>消費税5%減税―物価高から暮らし守る緊急策
 深刻な物価高から暮らしと中小企業の営業を守るために消費税率を5%に引き下げる減税が急務となっています。税の不公平をただし、格差を是正することは成長が止まった日本経済を立て直すためにも欠かせない課題です。
◆低所得層ほど大きな負担
 物価高騰は食料品、水光熱費など生活必需品を中心に、あらゆる品目にわたります。
 総務省の家計調査をもとに物価高騰の影響をみると、所得が低い層ほど大きな打撃を受けています。
 日本共産党の大門実紀史参院議員によると、年収200万円以下の層では物価上昇による家計の負担が年収比で4・3%増えます。消費税を5%増税したのと同等の影響です。年収1500万円超では0・7%増です。家計に占める消費税の負担も低所得層に重くのしかかっています。それだけに、すべての物価を一気に引き下げる消費税減税は最も効果的な物価対策です。
 実際に、コロナ危機や物価高から暮らしや営業を守るために何らかの消費税・付加価値税減税を実施した国・地域は、同議員によると、世界で89にのぼります。
 日本共産党は立憲民主党など野党4党共同で消費税減税法案を衆院に提出しました。岸田文雄政権は「消費税は社会保障の安定財源」として消費税減税をかたくなに拒んでいます。
 消費税の税収総額は1989年の消費税導入以来34年間で476兆円にのぼります。ほぼ同時期に法人税と所得税・住民税の減収は合わせて613兆円です。消費税がその穴埋めに消えたというのが実際の姿です。「社会保障の安定財源」などではありません。
 歴代の自民党・公明党政権は法人税率の引き下げなど大企業への減税を繰り返しました。所得税については最高税率の引き下げや大株主優遇の税制で富裕層ほど有利な仕組みを続けてきました。
 もともと消費税は、法人税、所得税など直接税が税収に占める比率を減らし、間接税の比率を増やすという財界の要求を受けて導入されました。間接税である消費税が税収全体に占める割合は、今や所得税、法人税を上回り、最大の税目となっています。
 特に安倍晋三政権のもとでは2度も税率が引き上げられました。個人消費はそのつど落ち込み、日本経済の成長を止める大きな要因となっています。消費税の減税はこの流れを転換させる大きな一歩となります。
 大企業は円安のもとで空前の利益をあげ、大株主などの富裕層はコロナ危機の中で資産を大幅に増やしました。ここに応分の負担を求めることは、税の再配分機能を強化し、格差を是正するうえで避けて通れない課題です。
◆不公平税制ただす転換を
 自民党の参院選公約には不公平税制に関する記述が何もなく、岸田首相が就任前、「1億円の壁」に言及していたことにも口をつぐんでいます。現行税制で大株主、富裕層が優遇されているため、所得が年1億円を超えると税の負担率が逆に下がってしまいます。金持ち金融所得課税の強化を公約していたことにもいっさい触れていません。企業・財界献金に依存している自民党ではゆがんだ税制にメスを入れることはできません。政治の転換が必要です。

【FNNプライムオンライン】6月15日 きょう(6月15日)から“減額”6月受給分マイナス0.4%変わる年金事情
◆1年で1万4000円の減額に
 食品代など物価の高騰が続く中、6月に支払われる年金が前年と比べて0・4%減額する。
 年金は2月、4月、6月、8月、10月、12月と年6回に分けて支払われるので、減額となる今年度の年金(4月・5月分)は、6月15日に初めて受け取る形となる。年金の保険料を納める現役世代の賃金が新型コロナの影響などで減ったためで、引き下げは2年連続となる。
 日本に住む20歳以上60歳未満全ての人が加入する「国民年金」の支給額は月額6万5千75円から6万4千816円に259円減少、会社員らが入る厚生年金は22万496円から21万9千593円に903円減少する。(平均的な収入のある夫婦2人の世帯)年額にすると1万3千944円減額する計算だ。
 また、物価の変動に応じて変動する老齢年金生活者支援給付金(65歳以上で同一世帯全員が住民税非課税の人が対象)も、5千30円から5千20円に引き下がる。
(以下 略)

【赤旗】6月7日 新自由主義の熱源① 財政審建議を読む
 2000 年代初頭に極端な新自由主義路線を進め、日本の雇用や-社会保障に深刻な爪痕を残した小泉「構造改革」ー。その再来を思わせる建議が5月、財政制度等審議会(財務相の諮間機関)から出されました。岸田文雄首相が幻想を振りまいてきた「新しい日本型資本主義」の危険な本質が、これ以上ない形であらわになっています。
 財政審の建議は毎年6月前後に、政府の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)の策定に向けて出されます。委員は財界人や政府に近い立場の学者らが占め、社会保障費の増大を「財政悪化の最大の要因」とするなど、「骨太」策定過程で社会保障改悪の議論を先導する役割を果たしてきました。
◆医療給付費抑制
 今回の建議でひときわ目を引くのが、医療給付費の伸びを日本の経済成長率に合わせるべきだという主張です。今後高齢化などで医療需要がいくら高まっても、日本経済が成長しなければ社会保障給付は増やさないという考えです。
 日本の医療給付費は2000~21年度の間に26・6兆円から40・7兆円へと、毎年約2%のペースで増えています。一方同時期の名目国内総生産(GDP)は537兆円から541兆円と完全な横ばい。自民党の「次世代のための財政戦略検討小委員会」が「主要先進国の中で最低レベル」と認めざるを得ない状況です。
 75歳以上人口の増加で医療需要の高まりが見込まれるなか、日本の低い経済成長率に給付の伸びが抑えられれば、さらなる負担増・給付減は必至です。
◆経団連など提言
 こうした発想のルーツは小泉政権にあります。05年6月の経済財政諮間会議に、奥田碩経団連会長(当時)ら民間議員4 氏は、「経済規模に見合った社会保障に向けて」と題した提言を提出。社会保障給付費の伸びを名目国内総生産の伸びに合わせるのが「妥当」と主張しました。
 あまりに過激な案には政府内でも反発が強く、給付削減の対案として浮上したのが「予防」でした。当時、厚生労働省は、メタボ健診など生活習慣病対策と病院の平均在院日数の短縮を進めれば、25年度には6兆円の医療費削減が可能との試算を発表しました。
 今回、財政審建議は05年の議論を振り返り、予防による給付削減論を「エビデンス(事実)に基づかない実効性を欠くものであった」と批判。今度こそ経済成長率など明確な指標に基づく医療給付抑制策が必要だと主張したのです。文字通り小泉「構造改革」路線への回帰宣言です。
 建議を受けて経済財政諮間会議が5月31日に出した「骨太」原案には、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造」を見直すため、公的医療保険や介護保険の国民負担について検討を進めるとの文言が盛り込まれました。(つづく)  

【赤旗】6月8日 新自由主義の熱源子② 財政審建議を読む
 医療給付費の伸びを経済成長率の範囲に抑えるべきだと主張する財政制度等審議会(財務相の諮間機関)の建議―。給付抑制のための具体策もかつてない危険な中身となっています。そのーつが、認定「かかりつけ医」の法制化とセットになった受診時の患者負担増です。
◆受診控え手遅れ
 現在の日本の公的医療保険制度は、健康保険証があれば原則「いつでも」「だれでも」必要な医療を受けることができます。実際には窓口負担が現役世代で3割、高齢者も1~3割かかるため、窓口負担を懸念して受診を控え、手遅れになる事例が後を絶ちません。
 建議は、〝飛び込み受診〟を可能にする医療制度が日本の財政悪化の主因かのように敵視。10月から紹介状なしで大病院を受診した際の定額負担の引き上げ(5千円から7千円に)を評価して、「こうした定額負担を一般的な外来への受診にも拡大」することが重要だとしています。
 そこで出てくるのが法律に基づく認定「かかりつけ医」制度です。この認定「かかりつけ医」は〝普段よくいく顔なじみの医師〟とは違います。
 そもそも建議は、全ての開業医が認定「かかりつけ医」になることを想定していません。建議は、認定「かかりつけ医」の要件として①地域の医師、医療機関と協力②休日や夜間も患者に対応③在宅医療を推進―を設定。通院中の医療機関が要件を満たさなければ、たとえ全幅の信頼を寄せていても認定「かかりつけ医」にはなりません。
 日本医療総合研究所の寺尾正之研究委員は「休日も、夜間も、在宅も対応を、となれば認定『かかりつけ医』は365日休みなく働くことになる」とし、多くの開業医にとってあまりにもハードルが高いと指摘します。
 「認定『かかりつけ医』かどうかで診療報酬に差がつけば開業医の選別と淘汰(とった)になる。『かかりつけ医』への認定を通じて、いずれは2次医療圏ごとの医師数の定数管理にもつながっていきかねない」(寺尾氏)
◆なし崩し負担増
 建議は、認定「かかりつけ医」の診療に定額報酬を設けたうえで、事前に服薬や既往歴といった医療情報などを登録せずに受診した患者に定額報酬の「全部または一部」の負担を求めることを提案。認定「かかりつけ医」以外の医療機関を情報登録せずに受診した患者にも、本人情報の取得などにかかった費用を保険の適用外として自己負担させる考えを示しています。将来にわたり窓口3割負担を維持するとした健康保険法の制約を、なし崩しにするものです。
 事前登録の手間や患者負担を増やすことで気軽な受診を控えさせ、医療給付を抑制する狙いです。建議は「かかりつけ医が『緩やかなゲートキーパー』機能を発揮する」とあけすけです。外出先で気分が悪くなって診察を受けたら、従来の窓口負担に加え、定額負担や保険外の自己負担が襲うという事態も生まれます。
 日本医師会の中川俊男会長は4月27日の記者会見で、財政審での認定「かかりつけ医」の議論を、「医療費抑制のために国民の受診の門戸を狭めるということであれば認められない」と批判しました。(つづく)

【赤旗】6月9日 新自由主義の熱源③ 財政審建議を読む
 医療給付抑制へと財政制度等審議会(財務相の諮間機関)の建議が新たに打ち出したのが、医療給付の約2割を占める薬剤費を経済成長の枠内に押しとどめる「薬剤費マクロ経済スライド」です。
 マクロ経済スライドは、憲法が保障する健康で文化的な生活に必要な給付水準という観点を無視して、社会や経済の状況を口実に社会保障給付を削減する考え方です。公的年金ではすでに、少子化や高齢化が進むと自動的に給付水準を削る仕組みがマクロ経済スライドの名で導入されています。
◆後発薬引き下げ
 薬剤費マクロ経済スライドは、名目国内総生産(GDP)の伸びを日本全体で1年間にかかる薬剤費の上限として設定するもの。ネタ元は民間研究機関「新時代戦略研究所」の研究会が2021年5月に出した報告書です。研究会には国内製薬大手の武田薬品工業やマルホに加え、ノバルティスファーマ、ファイザー、MSD の日本法人が協賛。いずれも新薬開発に巨額の資金を投じる大規模製薬企業です。
 報告書の眼目は、薬剤費の伸びが名目GDPの伸びを上回った場合、診療報酬上の薬剤費の価格(薬価)を引き下げることです。その際引き下げられるのは後発医薬品(ジェネリック医薬品)など「成熟製品群」。革新的な新薬開発を阻害しないためとの理屈で「イノベーティブ新薬群(新薬創出等加算品)」には手を付けません。
◆多くの患者影響
 名目GDPに基づく機械的な薬価切り下げはジェネリック製薬企業に打撃を与え、医薬品の安定供給を損なう恐れがあります。 ジェネリックは数量シェアで医薬品の8割を占めており、安定供給が崩れれば多くの患者の診療に深刻な影響が及ぶことは、企業不祥事に端を発した昨夏以来の供給不足でも明らかになっています。
 報告書はまた、窓口負担割合を医薬品でとに変えることや、湿布や風邪薬といった市販品類似薬を保険から外すことを今後の論点としてあげ、財政審の建議にも取り入れられています。
 協賛企業に名を連ねるような大規模製薬企業の利益は保障しつつ、ジェネリック医薬品などは薬価を引き下げるか、保険から外すかして完全な患者負担にする方向です。経団連のこれまでの主張とも完全に一致します。
 建議は医療分野ではほかに、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の財源に占める保険料の割合を「介護保険制度も参考」に高めるよう求めます。後期高齢者医療制度の財源に占める保険料の割合は10%。介護保険の給付対象である65歳以上の保険料の割合は23%です。仮に介護保険に負担割合を合わせれば、全国平均で月6400円の後期高齢者医療制度の保険料は1万5千円近くにはねあがります。
 岸田政権は10月から、原則1割の75歳以上の窓口負担を所得に応じて2割に引き上げる計画です。建議はその着実な実施を迫るとともに、社会保険は年齢に関係なく「公平な給付率(患者負担割合)を目指すのが本来の姿」だと主張。現役世代の3割負担を基準に、さらなる高齢者の窓口負担の引き上げを求めています。(つづく)

【赤旗】6月11日 新自由主義の熱源④ 財政審建議を読む
 社会保障を敵視する財政制度等審議会(財務相の諮間機関)の建議は、介護保険給付の伸びが2000年の介護保険制度創設時の予測を上回っているなどと問題視し、公的責任を投げ捨て家族や地域に負担を押し付けようとしています。
◆総合事業へ移行
 給付抑制の最大の柱が、要介護1、2の利用者を介護保険給付から外し、市町村が実施する総合事業(地域支援事業)へ移行させることです。
 介護保険制度は、介護の必要度に応じて利用者を軽い順に要支援1、2と要介護1~5に分けます。自公政権は14年の法改悪で要支援の訪間・通所介護を総合事業に移行。さらに、要介護1、2の訪間介護のうち、掃除や洗濯といった生活援助サービスを総合事業に移行させることを狙ってきました。
 建議は今回、第9期介護事業計画期間が始まる24年度に向け、生活援助だけでなく要介護1、2の訪間・通所介護全体を総合事業へ移すよう主張しました。
 総合事業は自治体の裁量で実施されるため、サービスの種類や提供体制は自治体間で大な差があります。政府がボランティアなど無資格者を担い手として想定し、報酬単価を低く設定したため、介護従事者の賃金を引き下げ、担い手不足にも拍車をかけています。要介護1、2 の総合事業への移行は、介護従事者の賃上げの面でも逆行しています。
 建議はまた、10月から一定所得以上の75歳以上の医療の窓口負担が2割に引き上げられることを引き合いに出して、介護利用料についても現在の原則1割を原則2割にすべきだと主張。一定所得以上の3割負担の対象者拡大や、現在無料の介護計画(ケアプラン)の作成の有料化も求めています。
 介護利用料を原則2割とすることでサービスの利用を抑制するとともに、ケアプラン作成の有料化で介護保険サービスにつながる入り口の敷居を高くする狙いです。
◆職員配置を緩和
 介護老人保健施設(老健)や介護医療院、介護療養病床の室料を保険給付の対象外にすることや、要介護度でとの保険給付の上限額(区分支給限度額)の厳格化などでも給付の抑制を狙っています。
 建議は、介護保険事業は「人件費のウェイトが高い」ので給付抑制のカギは「効率的な人員配置」にかかっていると強調。人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)などの新技術の活用を口実にした職員配置基準の緩和を求めています。すでに21年度の介護報酬改定で、特別養護老人ホーム(従来型)などで職員配置基準の緩和が進んでおり、この流れを加速させようとしています。
 全日本民医連の林泰則事務局次長は、経団連が1月の提言で見守りセンサーなどを使えば職員削減が可能だとし、入居者3人に対し職員1人という介護施設の職員配置基準見直しを求めたことを指摘。「給付抑制は、社会保険料負担を軽くしたい大企業の求めに応じるとともに、軍事費2倍化のための財源づくりだ」と批判します。(おわり)(この連載は佐久間亮が担当しました)