GDP 2四半期ぶりマイナス、GDPの特徴―藤田実さんに聞く 「成長しなく国」是正を(いずれも19日付「赤旗」)

2022年5月21日
【赤旗】5月19日 GDP 2四半期ぶりマイナス
2022 年153月期の国内総生産(GDP)速報値は物価の変動を除いた実質で2四半期ぶりのマイナス成長となりました。新型コロナウイルスの感染再拡大に伴う個人消費の低迷が響きました。足元ではウクライナ危機や円安危機が物価高騰に追い打ちをかけており、経済回復の足かせとなっています。(小村優)
 日銀が4月1日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、対面型のサービス業を含む大企業非製造業は新型コロナの感染者が高止まりした影響で大きく低迷。旅行業や遊園地などの「対個人サービス」は前回から12㌽悪化のマイナス14、「宿泊・飲食サービス」は5㌽悪化のマイナス56と突出して落ち込んでいます。
◆雇用にも波及
 サービス業は非正規雇用労働者の受け皿となってきただけに経営悪化は雇用にも波及9都内に住む59歳の男性は、飲食店への再就職が決まった矢先「まん延防止等重点措置」が出され、就職の話がなくなりました。「2回も就職を断られました。あれだけ人手不足と言っていたのに」
 コロナ禍も終息しない間にロシアによるウクライナ侵攻が発生、物価高騰が企業経営と国民生活を直撃しています。
 日銀の黒田東彦総裁は5月13日、内外情勢調査会における講演で「春先以降は、ウクライナ情勢を受けた資源価格の上昇の悪影響が、企業の業況感などにみられ始めている」と警戒感を示しました。
 足元では、日米の金利差を主因とする円安が進行。輸入物価が上昇し、物価高騰に拍車をかけています。民間信用調査会社の帝国データバンクが、上場する食品主要メーカ1105社を対象に実施した調査によると、4月14日までに累計6167品目で値上げの計画があることが判明。このうち6割超にあたる4081品目は1~4月の間にすでに値上げされました。エネルギーや食料などを輸入に依存してきた日本経済の弊害が一気に噴き出しています。
 光熱費や食料品など生活必需品で物価上昇率が高いため低所得者ほど影響は深刻です。総務省「家計調査」を基に本紙が試算すると、年収200万円未満の低所得世帯では4・7%もの負担増になりました。年収1500万円以上の世帯の6・7倍です。
◆消費税減税を
 消費税減税を求める声が民間エコノミストからも出ています。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは10日、「岸田政権の物価高対策に対する評価①」と題するリポートで消費税減税がGDPに与える効果を検証。消費税の減税額の半分以上がGDP押し上げ効果になると分析しました。
 物価高騰から暮らしを守るため、消費税の減税が喫緊に求められています。
◆貧困層に容赦なく
 14日、東京都庁前で開催された「新宿ごはんプラス」による食料支援には配布開始1時間前から160人以上が列を成しました。
 生活保護を受給する54歳の男性は、食費を削るため1日1食レトルトカレーのみの生活を長く続けています。
 一方、水光熱費の負担は増すばかりです。電気代は去年の4、5月に月2500円ほどだったのが、今年は3 350円へ1・3倍値上がりしました。夏にかけてエアコンの使用頻度も増えます。電気・ガス代の値上がりは痛い。「シャワーで我慢。利用回数も減らすしかありません」この日並んだのは518人。先週から12人減ったものの依然500人以上で推移しています。子ども連れも3~4組参加しました。アベノミクスによって広がった貧困に物価高騰が容赦なく襲いかかっています。

【赤旗】5月19日 1~3月期GDPの特徴―藤田実さんに聞く 「成長しなく国」是正を
 内閣府が18日に公表した2022年1~3月期国内総生産(GDP)の特徴について、桜美林大学教授の藤田実さんに聞きました。

 1~3月期は新型コロナウイルスの感染拡大や原材料高騰、半導体不足による製造業の停滞などに見舞われました。加えてロシアがウクライナに侵略して世界経済が混乱しました。経済が好転する材料は全くありませんでした。
 個人消費を詳しくみると、家計最終消費支出は持ち家の帰属家賃を除いた成長率が昨年10~12 月期の3%増から今期は0・1%減へと急激に悪化しました。報道ではコロナ感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置」による消費の抑制などが要因とされています。同時に賃金低迷も要因です。3月の毎月勤労統計では現金給与総額が実質0・2%減、パートの賃金も同1・6% 減でした。今期の雇用者報酬も実質0・4% 減です。このことが家計消費を冷え込ませました。
◆内外需とも低迷
 民間企業の設備投資は0・5%増ととても弱々しい結果となりました。内需の柱である消費も投資も低迷しているのです。
 一方の外需は成長率を押し下げました。輸出は増加したのですが、それ以上に輸入が増加しました。新型コロナ対応でワクチン輸入の増加などが指摘されています。この先を展望しても半導体や部品などの供給が不安視され、原材料高騰も続きます。輸出が大幅に増える見通しは薄く、外需にも期待できません。
 内外需とも崩れて成長要因は見当たらず、日本経済は深刻な状況です。その上、物価高騰が日本経済を襲っています。欧米ではインフレ進行が懸念されていますが、日本の場合、景気悪化のもとでの物価高騰というスタグフレーションに陥るおそれがあります。
 年度のGDPも気がかりです。21年度の成長率は2・1%増でしたが、20年度は4・5%減でした。回復の足取りが弱いと思います。海外の多くの国では経済がコロナ前を上回っています。日本はいよいよ成長できない国になってしまっていると感じます。
◆もうけ還流せず
 一方、大企業の3月期決算をみると、軒並み過去最高の純利益や経常利益を記録しています。円安の恩恵を受けて海外でのもうけが円建てで大きくなるのに加え、輸出も有利になった結果です。グローバル大企業が大もうけしても国内経済に還流しない構造になってしまっています。
 こうした構造を正すことが日本経済の成長に不可欠です。大企業と中小企業の取引条件を安定させることもそのーつです。内部留保課税を実施し、それを原資に中小企業に手厚い支援をしながら、最低賃金を引き上げることも経済の好循環につながります。