岸田予算―軍拡・収奪・ばらまき、思いやり予算合意―対米従属の「強靱化」許せない(「赤旗」)

2021年12月31日
【赤旗】12月28日<気流>岸田予算―軍拡・収奪・ばらまき 
 岸田文雄政権初の2022 年度予算案が決まりました。消費税で国民から収奪し、10年連続の大軍拡、大企業にはばらまき、諜報(ちょうほう)機関の体制も強化しています。同政権が掲げる「新しい資本主義」の内実が示されています。(記者3人による分析―引用者)

A) 経団連の十倉雅想本長は、「『新しい資本主義』を実現する強い決意が示されている」とコメントした。しかし、岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の予算の特徴は、増大する消費税収頼みで、アジアでの軍拡競争を激化させるものだよ。

◆3割が消費税で
B) 国の一磐本計の税収に占める消費税収の割合は33・1%だ。消費税が導入された1989年時は6%だったから、5・5倍以上膨らんだ計算だ。

C) 岸田首相は、「聞く耳」を自慢しているけど、消費税減税を求める声には、単に「聞くふりだけ」だね。

A) 経団連の十倉会長は岸田政権が重要視する「経済安全保障」にも触れて政権の姿勢を評価していた。

B) 予算案では、各省庁の説明資料に「経済安全保障」という文言が並ぶ。

C) 経済安全保障という言葉に、いまだ定義がないため、さまざまな事業に看板を掲げることができるようだ。

A) 総務省では、「経済安全保障への対応・戦略的な経済連携の強化」という名目で112・1億円が計上されている。経済産業省では、大きな項目で「経済安全保障の確立」がうたわれ、「重要技術を『知る』『守る』『育てる』」とことや、「半導体産業の基盤強化」、「レアアース等の重要資源の確保」などに取り組むとしている。

B) 防衛省では、「情報収集・分析能力の強化」として、「情報本部等の国際軍事情勢や経済安全保障等に関する情報収集・分析能力強化のため、所要の体制を整備」することがうたわれている。

C) 諜報機関の体制も強化されるわけか。

◆公安に予算増額
B) 予算案では、公安調査庁関係経費も増額されているよ。21年度予算よりも2・5億円増え、159・6億円となっている。

A) 前国家安全保障局長の北村滋氏は、経済安全保障について、著書(『情報と国家』)の中で、三つの局面を提起している。①経済を、安全保障政策の「力の源泉」として利用する政策(勢力均衡政策の一環としての経済の利用「エコノミック・ステート・クラフト)②国家・国民経済体系の存続・維持・発展への脅威に対処するための規制をはじめとする各種政策③相互依存の深まった自由で開かれた国際経済システムの維持―についてだ。

B) 中でも②の国家・国民経済体系に対する脅威の評価においては、「インテリジェンスが極めて重要な意味を有することになる」としているね。新たな情報源の開拓、情報収集・分析体制の充実強化がもとめられるという。

C) 6月に閣議決定された「骨太の方針」でも「インテリジェンス能力を強化するため、情報の収集・分析・集約・共有等に必要な体制を整備する」と強調されているところだよ。

A) 公安調査庁は、「経済安全保障の確保に向けて」と題したパンフレットを作成している。技術・データ等が流出した場合、日本の技術的優位性が喪失し、経済的損失は計り知れない、と強調していた。

B) パンフでは、「技術・データの流出」として①人材リクルート②投資・買収・合併③共同研究・事業④留学生・研究者等の送り込み⑤不審なアプローチ⑥サイバー攻撃⑦物資の輸出ーの七つのルートを例示しているよ。

C) 経済安全保障問題が、諜報機関の役割を強化する役割も果たしているんだね。

【赤旗】12月27日<主張>思いやり予算合意―対米従属の「強靱化」許せない
 日米両政府は2022~26年度の5年間の米軍「思いやり予算」(在日米軍駐留経費の日本側負担)の内容について合意しました。従来の基地の施設整備費を増やすのに加え、「訓練資機材調達費」を新設します。日本政府は、今回の合意に基づく負担を「日米同盟を一層強化する基盤を構築する」とし、通称を「同盟強靱(きょうじん)化予算」にするとしています。しかし、日米地位協定上、米側が負担すべき経費を日本側が肩代わりするという「思いやり予算」の本質は変わりません。対米従属をさらに「強靱化」する重大な合意です。
◆米から一層の増額要求も
 日米両政府が21日に結んだ合意では、5年間の負担総額を1兆551億円、年平均で約2110億円としました。これを受けて岸田文雄政権が24日に決定した22年度当初予算案には、「思いやり予算」として21年度比39億円増の2056億円を計上しました。
 このうち、新たな負担となる「訓練資機材調達費」は10億円を盛り込みました。政府は「在日米軍の訓練のみならず、自衛隊と米軍との相互運用性を高める共同訓練にも資するような資機材を調達する」(林芳正外相)としています。具体的には、戦闘訓練のための最新鋭シミュレーターの導入費などとされます。しかし、「所有権は米軍側にあり、自衛隊が使える頻度などは未知数」(「東京」22日付)と指摘されています。
 従来の負担である日本人従業員の労務費や基地で使う光熱水費には一定の限度があります。これに対し、「訓練資機材調達費」は際限がありません。今回の合意では5年間で総額200億円とされていますが、今後、米側から増額を要求される恐れがあります。
 22年度予算案の基地の施設整備費は、21年度比50億円増の267億円となりました。合意では5年間で総額1641億円とされます。「在日米軍の即応性向上、施設・区域の抗たん性強化に資する施設整備を重点的に推進していく」(林外相)とし、米軍機の掩体(えんたい=シェルター)などを整備します。
 「抗たん性強化」とは、敵の攻撃に耐えて基地の機能を維持する能力を高めることです。「台湾海峡などの有事の際には、前線となる在日米軍基地は急襲を受けるリスクがある」(「毎日」22日付)ためと指摘されています。在日米軍基地への攻撃を現実的な危険として想定したものです。
 22年度予算案の「思いやり予算」はこのほか、労務費1533億円、光熱水費234億円、硫黄島への米空母艦載機の着陸訓練移転費11億円となっています。合意では、アラスカへの米軍機の訓練移転費にも負担対象を広げます。
◆肩を並べて戦争するため
 岸信夫防衛相は今回の合意について、中国や北朝鮮の軍事力強化を挙げ、「厳しい安全保障環境に(日米が)肩を並べて立ち向かっていく決意を示すことができた」と述べています。まさに自衛隊と米軍が「肩を並べて」戦争するための態勢づくりの一環です。
 米国の同盟国の中でも異常突出している「思いやり予算」を増やす道理はどこにもありません。岸田政権は、合意に基づく特別協定を来年早々に締結し、承認案を通常国会に提出しようとしています。その成立を許さない運動と世論を広げることが必要です。