ノーベル賞受賞者50人以上が書簡―軍事費2% 削減求める(16日)、<主張>半導体支援法案―特定企業への巨額助成やめよ(同)、デジタル課税で国際合意―巨大IT企業の税逃れ防止へ転換(19日)いずれも「赤旗」

2021年12月18日
【赤旗】12月16日 ノーベル賞受賞者50人以上が書簡―軍事費2% 削減求める―コロナ・気候・貧困解決に回せ
 世界のノーベル賞受賞者50人以上が15日までに、各国政府に軍事費を年間2%削減するよう求める公開書簡を出しました。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)、気候危機、極度の貧困の解決に向けて資金をまわすよう求めています。
 書簡は「世界平和の配当」という活動の一環として、イタリアの物理学者カルロ・ロベリ氏が呼びかけたもの。2011年に平和賞を受賞したイエメンの女性活動家タワックル・カルマン氏、19年に物理学賞を受賞したカナダの宇宙論研究者ジム・ピーブルス氏などが参加。日本からは天野浩氏(14年、物理学賞)、梶田隆章氏(15年、同賞)が名を連ねています。
 書簡は、世界の軍事費が年間2兆ドル(約225兆円)近くに上り、00年から倍増したと指摘。「各国が軍事費を増大させていることが他国に圧力をかけ、軍拡競争の悪循環を持続させている。より賢明な方法で使えたはずの資金が無駄にされている」と述べました。
 国連加盟国に対し、軍事費の削減に共同で取り組むため交渉するよう呼びかけ、これにより30年までに1兆ドルが確保できると主張。この資金の半分を、世界で共通する危機を打開するための国連の基金として配分すべきだと提案し、「人類が直面する危機を食い止める唯一の方法は協力することだ」と訴えました。

【赤旗】12月16日<主張>半導体支援法案―特定企業への巨額助成やめよ
 岸田文雄政権は、半導体製造拠点を国内に建設する企業に助成金を出す法案を、わずか2時間半の経済産業委員会の審議で衆院を通過させました。2021年度補正予算で6170億円の基金を設けます。特定の大企業に巨額の税金を投入することに批判が相次いでいます。質疑の中で助成に上限がないことも明らかになりました。外資・大企業へのばらまきを、おざなりな審議で押し通すことは許されません。
◆上限の歯止め規定されず
 法案は、特定高度情報通信技術活用システム開発供給導入促進法(5G促進法)と新エネルギー・産業技術総合開発機構法(NEDO法)の二つの法律を改定するものです。高速大容量通信規格(5G)に対応できる半導体を製造する工場の建設に、最大で経費の2分の1を助成します。
 補正予算による助成金の大半は、世界最大手の半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)とソニーの子会社が熊本県で計画している新工場建設に投入されることが想定されています。萩生田光一経産相が建設予定地を視察し、支援に向けて動いています。
 助成額は投資額約8000億円の半分、約4000億円と見込まれます。特定企業の一工場への助成としてかつてない大きさです。国の中小企業対策費1745億円の2倍以上にあたる国費を注ぎ込むことになります。
 1件当たりの助成額の上限を設定する条文は法案にありません。設備投資額が増えれば、事業者の要求に応じて助成額が膨らむ恐れがあります。歯止めない国費投入に道を開くものです。
 電機や自動車に不可欠な半導体は各国で不足が問題になっています。政府は国内生産の必要性を強調しています。しかし半導体の確保はそれを必要としているユーザー企業が自己責任で行うべきものです。
 電機、自動車大企業は54兆円もの内部留保を抱え、半導体確保に充てることのできる潤沢な資金を持っています。にもかかわらず政府は業界に確保の努力を求めることもしていません。
 そもそも日本の半導体産業を衰退させた原因をつくったのは自民党政権です。日本の半導体の世界シェアは1980年代に5割を超えていましたが、今や10%程度です。86年に締結した日米半導体協定は米国の圧力に屈して日本市場での外資系製品のシェア引き上げなど不利な競争条件を取り決めました。政府はその後、国家プロジェクトを立ち上げたりしましたが半導体産業は結局、落ち込んでいきました。
◆国民の理解は得られない
 失政に真剣な反省もなく「経済安全保障」を名目に法外な大企業支援を重ねても過去の失敗を繰り返すことになりかねません。
 半導体製造装置や素材供給では日本は今も強みを持っています。こうした分野を支える中小企業へのきめ細かな支援によって、ものづくり技術全体を底上げすることこそ政治の役割です。
 コロナ危機で苦境にある中小企業向けの事業復活支援金は持続化給付金の半分です。その一方で特定の外資・大企業に至れり尽くせりの支援をすることは国民の理解を得られません。法案は参院で徹底的に審議し廃案にすべきです。

【赤旗日曜版】12月19日 <経済 これって何?> デジタル課税で国際合意―巨大IT企業の税逃れ防止へ転換
 今年10月、多国籍企業に対する法人税の新たなルールを導入することに136の国・地域が合意しました。
 主な内容は①フェイスブック、グーグルなどの巨大IT(情報通信)企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」の導入②法人税に世界共通の最低税率15%を導入し減税競争に歯止めをかける―の2点です。
 G20(20カ国・地域)とOECD(経済協力開発機構)を舞台にデジタル課税の論議が始まって間もなく10年。ようやく実った合意ですが、課題も残されています。
 現在の国際課税の原則では、工場や事務所といった物理的拠点がないと法人税がかかりません。一方、ネット広告などインターネットビジネスは顧客がいる国(市場国)に物理的拠点が無くても顧客と取引ができます。巨大IT企業は低税率国に拠点を置き、世界でビジネスを行います。そのため市場国を含め、どこにも税金をほとんど納めずに済ませてきました。
 この100年前にできた課税原則をデジタル課税は転換します。市場国に、物理的拠点の有無に関わらず多国籍企業への課税権を配分します。
 課税対象は売上高が200億ユーロ(約2・6兆円)を超え、かつ利益が売上高の10%を超える世界100社程度の多国籍企業です。
 課税される利益は売上高の10%を超える部分に限定されました。そのうちの25%だけを市場国に割り当て(75%は企業所在地国で課税)、それをさらに複数の市場国に売上高などに基づいて分けます。OECD によると課税利益の規模は世界合計で1250億㌦(約14兆円)です。
 対象となる企業数、利益の範囲は極めて小規模となり、市民団体、途上国などからも批判の声が上がっています。
 合意を踏まえ、2022年に多国間条約を策定し、23年の実施を目指しています。具体化の中で抜け道ができないか点検も求められます。
 当初、日米財界はデジタル課税に反対しました。日本政府も「日本に巨大IT企業の税逃れはない」として経団連と歩調を合わせました。
 変化をもたらしたのは税逃れを許さない国際世論です。これを背景に18年3月、欧州委員会(欧州連合=EUの執行機関)がデジタル課税の具体案を提言。日本でも市民団体や有識者から賛同の声が上がり、国会でも繰り返し取り上げられました。
 ついに日本政府も巨大IT企業に課税できていない事実を認め、対処の必要性を表明しました。
 (18年2月3月の衆院財務金融委員会、日本共産党の宮本徹議員に対する財務省の答弁)
 世界はコロナ禍、貧困と格差、気候危機など重大な問題に直面し新たな国際協力を模索しています。その財源が課題となり、特に途上国は困難です。今回の合意にとどまらず、国際的な課税ルールの抜本改革は不可欠であり、世論と運動の強化が求められます。 丸井龍平(まるい・りゅうへい日本共産党国会議員団事務局)