国際課税新ルール―意義と課題(中)
2021年8月29日
【赤旗】8月25日 国際課税新ルール―意義と課題(中)
20力国・地域(G20)会議で合意されたもうーつの柱は、法人税率の引き下げ競争を止めるめるために、国際的な最低税率を股定することです。
法人税の税率引き下げ競争は、1980年代以降、英米両国が主導して進められたものです。それまで40%、50%台だった税率が、今日では20%前後となり、2分の1 、あるいはそれ以下の税率となりています。
国家が法人税率を下げる理由はさまざまですが、高い法人税は投資を抑制し、経済成長を妨げるという固定観念がありました。しかし、この数十年の一方的な税率引き下げは投資を呼び起こさなかったばかりか、企業は減税で余剰となづた
資金をため込み、タックスヘイプン(租税回避地)に移転してきました。
税率引ぎ下げの傾向を止めるには、最低税率に関する国際的な合意が求められます。バイデン政権がそれを提起し、G20で合意が成立したことは、まさに歴史的な出来事といわなければなりません。
◆税収は先進国に
しかしそれが本当に歴史的な転換点となるかどうかは、設定する最低税率の水準によります。低すぎる最低率績率は、引き下げ競争をさらにあおる結果をもたらしかねません。
バイデン政権は「米国雇用計画」の財源として、法人税の税率を現行の21%から28%に引き上げる計画を示し、英国も現行の19%から25%へ引き上げる計画を発表しています。
G20によって合意された「少なくども15%」という税率は、あまりに低すぎるといえます。世界の法人税率の国内総生産(GDP)加重平均である25%前後が望ましい水準です。少なくとも米国が自国の多国籍企業に適用しようとしているめている最低税率の21%を目指すすべきです。
15%の最低税率によって期待できる税収は1500億㌦(約16・5兆円)とされています。しかし、最低税率に謄ない分を多国籍企業の母国が上乗せ課税する方式のため、低税率国での課税強化が進まなければ、新たな税収の大半を米国など先進国が得ることになります。
◆多国籍企業配慮
最低税率15%という提案に対しては、多くの国欝な市早一体かA 批判と寿の声がト赤っています.
オックスファム・インターナショナルは、「バーが低すぎて、どんな企業でも乗り越える」とし、次のように批判しています。
「いま世界は高まる不平等と気候変動とたたかうために、公正な税の交渉を求めている。しかし交渉の結果は主要7カ国(G7)によるマネーの横取りに他ならない」
「G7と欧州連合(EU)は15%の最低税率が生み出す収入の3分の2を手に入れる一方、世界の人口の3分の1以上を占める貧困国に入るのは3%以下だ」と。
また経済学者のジョセフ・スティグリッツらが参加する国際企業課税改革独立委員会(ICRICT)は次のように批判します。t
「15%の最低税率はあまりにも低い。それはアイルランドやシンガポールなどの最悪の行動を正当化するものだ。底辺への競争を加速し、15%の税率をニューノーマル(新しい常態)にするりスクがある」
「第2次大戦時、フランクリン・ルーペルトは企業に40~50%の法人税を課し、高税率その後十年続けられた。それこそ、パンデミックで税収が不足しているいま、最も必要どされていることだ」と。
また『20世紀の資本』の著者トマ・ピケティは次のように主張しています。
「15%の税率は、最も強力ななプレーヤー に詐欺のライセンスを公認するようなものだ」
「アメリカの億万長者はほとんど税を払りておらず、法人税が富裕者にとって最後の納税となっている。利益は企業にため込まれ、あるいはトラストや持株会社の仕組みのなかに隠され、税を逃れている」と。
こうした批判にもかかわらず、G20が15%の低税率に固執するのは、アイルランドなどのタックスヘイプンの温存を望む多国籍企業への配慮があるものと考えられます。(つづく)