コロナ対策の財源づくり―大企業・富裕層増税へ新たな動き(「赤旗日曜版」)
2021年7月17日
【赤旗日曜版】7月11日 コロナ対策の財源づくり―大企業・富裕層増税へ新たな動き
新型コロナ対策の財源をめぐり、大企業や富裕層に負担を求める新たな動きが広がっています。
イギリスは半世紀ぶりに法人税を増税します。英政府は「経済回復後に借金をコントロールしなけれぱ次の危機で大胆な行動ができなくなる」(スナク財務相、3月3日の英下院演説)として、23年4月からの法人税増税を決断しました。
増税の主な対象は大企業です。利益が3700万円以上の企業は税率19%から25%へ増税、利益が750万円未満の企業は19%の現行税率を適用。利益が750万~3700万円未満の企業には19%超~25%未満の税率とする累進税率の導入です。
スナク財務相は、財源調達に法人税を選んだのは「利益を上げた大企業に貢献してもらう」ためだと述べました。
アメリカではバイデン政権のもとで財政政策が大きく変わろうとしています。大きく二つの計画打ち出しています。
一つは「米国雇用計画」。コロナ禍からの復興を目指すインフラ(基盤)投資計画です。その中で連邦法人税率を21%から28%に引き上げる企業増税を提案。15年で2・5兆㌦(約275兆円)の財源を生み出すとしています。(この提案は6月24日の超党派の合意案で、ひとまず見送りになりました)・
もうーつは「米国家族計画」。子育て・教育支援策です。財源は富裕層増税で、10年間で1・5兆㌦(約160兆円)を調達。①連邦個人所得税の最高税率を37%から39・6%に引ぎ上げる②年収100万㌦(約1・1億円)超の富裕層の株式譲渡益の税率を20%から39・6%に引き上げる、としています。
パイデン大統領は4月の施政方針演脱で、「企業と1%の最富裕層に公平な負担をしてもらう時が来た。(中略)富がこぼれ落ちるトリクルダウ・ン理論はこれまで一度も機能しなかった。底辺を引き上げ、中間層を起点に経済を成長させる時だ」と訴えました。
タックスヘイプン(租税回避地)に拠点を置く多国籍企業が増えています。そうした企業を呼ひ込むため、「底辺への競争」と呼ばれる各国・地域の税率引き下げ競争が、財政悪化の一因になってきました。
そこでG20 (20カ国・地域)などが主導し、約140カ国が参加する「包括的枠組み」が国際的最低税率の具体案を示してきました。最低税率の導入は「底辺への競争」に一定の歯止めをかけ、企業の「課税逃れ」を防ぐ狙いがあります。
主要7カ国(G7)財務相会議は6月6日の共同声明で、法人税の最低税率を「15%以上」とすることを明記。デジタル課税についても、多国籍企業の利益の一部に対する課税権を消費地である市場国に与えることで合意しました。
コロナ対策、社会保障の財源は、利益を上げている大企業、富裕層からの税金で賄い、多国籍企業の税逃れは許さないという流れが世界的潮流になってきています。菅隆徳(すが・たかのり税理士)