先見の明を欠いた菅首相 他に安倍政権の事実と異なる答弁139回など

2020年11月28日
【SANSPO.COM】11月23日 <甘口辛口>先見の明を欠いた菅首相 「Go To」どころか「Back to…」の後手後手対応、揚げ句に噴飯ものの対策も飛び出した
 ■11月23日 「ガマンの3連休」のはずだった初日の21日、我慢しきれずに多くの人々は旅に出た。その夕方に菅首相が表明した「Go To」事業の見直し。「…トラベル」に関しては感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止するとかで、あまりのチグハグさに失笑してしまった。
 「現時点では見直しをする状況にはない」と菅首相が言明したのは13日だった。10日ほど前はそうだったかもしれないが、刻一刻と感染状況は変わっていく。10日後、2週間後はどうなるか先を見通すのが政治家の仕事。専門家の危惧の声にも耳を貸さなかった。先見の明に欠けていたといわれても仕方ない。
 ようやく21日の対策本部会合で方針転換を打ち出した。その後の官邸での会見は「感染防止策の基本をもう一度…国民の皆さんに心よりお願い申し上げたい」とメモを読み上げただけで、質問も受け付けずにきびすを返した。お願いされた国民としてはもっと具体的なことを知りたいのに背を向けられた感じだ。
 見直し時期や地域など、肝心な点は不透明。「…トラベル」の予約済み旅行について西村経済再生相は「キャンセル料のために解約を躊躇(ちゅうちょ)することがないようにする」と話したが、テレビで見ていると「キャンセル料がバカバカしいから来た」という観光客も多かった。これ一つとっても感染の輪が広がる要素といえないか。
 秋冬の感染再拡大は春頃から指摘されていたが、先見の明もなくGoToどころか「Bace to…」の後手後手対応。揚げ句に「マスク着用の会食」と“竹やり戦術”のような噴飯ものの対策も飛び出した。これでは国民の方こそ背を向けたくなるだろう。 (今村忠)

【朝日新聞DIGITAL】11月23日 安倍政権が「事実と異なる国会答弁」森友問題で139回
 衆院調査局は24日、森友学園問題に関して、2017年2月から18年7月に安倍政権が行った事実と異なる国会答弁が計139回あったと明らかにした。
 衆院財務金融委員会で、調査を求めた立憲民主党の川内博史氏の質問に答えた。
 調査の対象は、17年2月15日から18年7月22日までの衆参両院の国会質疑で、当時の安倍晋三首相や佐川宣寿財務省理財局長(辞職後の証人喚問を含む)らが行った答弁。財務省が18年6月にまとめた森友問題に関する決裁文書改ざんに関する調査報告書と、会計検査院が同月に参院予算委に提出した報告に照らして内容が異なる答弁を数えた。
 その結果、財務省の報告書と異なるものが88回、会計検査院の報告と異なるものが51回の計139回に上った。
 この結果について、財務省の大鹿行宏理財局長は同委員会で、「何をもって虚偽(答弁)とするかは議論の余地があると思うが、答弁が行われたことは事実。深くおわび申し上げる」と述べた。

【47NEWS】第3波の急拡大は「国民のせい」か―GoToにしがみついた政権の姿勢、「気の緩み」招く
 新型コロナウイルスの感染が急拡大していることを受け、政府は21日の新型コロナ感染症対策本部で「GoToトラベル」事業の運用見直しを決めた。「遅すぎる」ことも、旅行需要の喚起を目的とした施策の変更を3連休の最中に発表したセンスのなさも、ここではあえて繰り返さない。だが、筆者が言いたいのはそれだけではない。菅政権が打ち出した経済対策が、事実上GoTo事業「ほぼ一択」であることに対する、深い失望である。GoTo事業とは「国民を健康被害の恐怖にさらしてまでも、そのポケットマネーに頼って経済活性化を図る」ことであり、つまりは「旅館や飲食店が助かるかどうかは国民の行動にかかっており、助からなくても政府の責任ではない」という「究極の『自助』政策」なのではないか。(ジャーナリスト=尾中香尚里)

【赤旗】11月24日<主張>中小企業の「淘汰」―コロナ下で政府が進める異常
 コロナ危機で苦境に陥っている中小企業をどう淘汰(とうた)するか―菅義偉政権内でこんな異常な議論が行われています。政府の成長戦略会議には「日本の中小企業数は今の半分でいい」と公言する企業家デービッド・アトキンソン氏がメンバーに入りました。中小企業庁は中小企業の集約化について検討を始めました。中小企業は日本の企業数の99・7%を占め、従業員数は日本企業全体の68・8%と、文字通り地域経済と雇用の根幹です。中小企業なくして日本経済は成り立ちません。政府が今なすべきことは淘汰ではなく支援です。
「生産性低い」と退場迫る
 2020年の企業の廃業件数は過去最高となる恐れがあります。民間信用調査会社、東京商工リサーチによれば、コロナ感染が長引いた場合、廃業を検討する可能性がある中小企業は8・8%です。30万社超が廃業の危機にひんしていることになります。にもかかわらず、すでに政府の補正予算で決まった支援の多くが届いていません。持続化給付金も1回だけの支給にとどまっています。
 このさなかに菅首相は前政権の未来投資会議を引き継いだ成長戦略会議で「中小企業のM&A(合併・買収)」を議題に取り上げました。アトキンソン氏は、日本の中小企業は生産性が低く「コロナ前の現状維持は不可能」だとして成長する企業を中心に支援する政策に変えるよう求めました。宿泊業者には「84%の経営者は転換の意向がないということは大変問題だ」と廃業、転業を迫る冷酷さです。「中小企業半減」を持論とする同氏を会議の有識者メンバーに指名したところに菅政権の方向性があらわれています。
 「生産性が低い」とする中小企業に退場を求める主張は同氏だけのものではありません。安倍晋三前政権が決定した20年の成長戦略は、中小企業の廃業率が高いことを問題にしてきたこれまでの表現を削除し、淘汰を促す方向を示しました。中小企業庁が11日に「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」の第1回会合を開いたのも、低い生産性などの解消に向けて中小企業の統合、再編を推し進めるためです。
 ここで持ち出されているのは労働者1人当たりどれだけの付加価値を生み出したかを示す労働生産性です。もうけの大きい大企業は高く、大企業と比べて不利な中で営業している中小企業は低くなります。優遇税制など大企業に手厚く、中小企業に冷たい経済政策こそ改めなければなりません。
 労働生産性は労働者数を減らせば高くなります。生産性向上ばかり追求するのは“リストラの勧め”にほかなりません。
憲章と基本法を生かせ
 業者の運動が実り、10年に中小企業憲章が閣議決定され、14年には小規模企業振興基本法が施行されました。これを生かし、コロナ禍の中、雇用と地域を守って懸命に営業を続ける中小企業を経済の主役にふさわしく支援することが政府の役目です。
 淘汰を進めるなど憲章や同基本法に真っ向から反しています。中小企業家同友会全国協議会は菅政権発足にあたって「1社もつぶさない覚悟での強力な振興策」を求めました。中小企業は淘汰など望んでいません。菅首相は業者の声を無視すべきではありません。