税逃れ 年間44兆円―多国籍企業と個人―国際NGOが試算 他に高齢者の医療費負担、菅政府のマイナンバーカード問題

2020年11月22日
【赤旗】11月21日 税逃れ 年間44兆円―多国籍企業と個人―国際NGOが試算
 公平な税制をめざす国際NGOタックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)などは20日、国際的な法人税回避と個人の脱税によって全世界で毎年4270億ドル(約44兆4080億円)以上の税収が失われているという試算を発表しました。3400万人近くの看護師の年収に相当するとしています。
 TJNによれば、多国籍企業が税務当局に提出する国別データの集計値を経済協力開発機構(OECD)が今年7月に公表したため、租税回避から生じる税務上の損失を測定できるようになりました。世界中で毎年失われている税収は、多国籍企業の法人税回避によるものが2450億ドル。個人の脱税によるものが1820億ドルとなっています。
 多国籍企業は1兆3800億ドル相当の利益をタックスヘイブン(租税回避地)に移転して課税を回避。個人の脱税者は10兆ドルを超す金融資産を海外で保管して課税を逃れているといいます。

【赤旗】11月20日 75歳以上の医療費倍増―窓口負担1割→2割 対象200万~605万人―厚労省提示
 厚生労働省は19日、75歳以上の後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担について、最小で約200万人、最大で約605万人を現行の原則1割から2割に引き上げるなどとした、患者負担増の複数案を社会保障審議会の部会に示しました。受診控えを懸念する医療・地方団体の委員と、「不十分だ」としてより幅広い対象設定を迫る財界側の委員とで応酬が続きました。
 後期高齢者の窓口負担は現在、年収約383万円以上の人は「現役並み」だとして3割にしています。全体の7%を占める約130万人が対象です。それ以外は1割負担で「一般所得」の人(全体の52%、約945万人)と非課税世帯が対象の「低所得」の人(同41%、約740万人)に分かれています。
 1割負担の人で「一定所得以上」を2割にするとした政府方針に基づき、厚労省は2割負担の対象として「年収240万円以上(単身世帯)の約200万人」から「年収155万円以上(同)の約605万人」まで5案を提示。外来患者は、窓口負担の上限月額を定めた高額療養費に毎回該当するのは3%にすぎず、残りの6割はすべての受診月に、同3割はいずれかの受診月に2倍の負担増が直撃します。
 厚労省は増額分に上限を設ける「配慮措置」を示しましたが、抑制額は1人あたり年平均4千円にとどまり、同3万1千円の負担増です。しかも、2年間だけの経過措置です。
 同省は、紹介状なしで大病院を受診した患者に窓口負担と別に5千円以上(初診)の追加負担を義務付ける制度について、7千円以上に引き上げるなどの案も提示。政府は、12月にまとめる全世代型社会保障検討会議の最終報告に結論を盛り込もうとしています。

【東京新聞】11月22日 「持たなきゃ生きていけない」 マイナンバーカード普及に躍起の菅政権 「強制化」に警戒も
 菅義偉首相が目玉政策に位置付けるデジタル化推進の一環として、マイナンバーカードの普及促進に力を入れている。2022年度末までの全国民の取得を目標に掲げ、来年3月には健康保険証としての利用を開始し、運転免許証との一体化も計画。利便性の向上を図るが、国民には個人情報の漏えいなどを不安視する声も根強く、任意のはずの取得が事実上の強制になるのではないかとの懸念もある。(井上峻輔)
◆「安全安心利便性」をアピール
 「マイナンバーカードは安全安心で利便性の高い『デジタル社会のパスポート』だと認識いただきたい」
 平井卓也デジタル改革担当相は17日の参院内閣委員会で国民に呼び掛けた。
 マイナンバーカードは、裏面に個人を認証できるICチップを搭載し、オンラインで本人確認が可能。政府は「あらゆる手続きが役所に行かなくてもできる社会」の実現に不可欠としており、首相は来秋にも設置予定のデジタル庁に普及推進を担わせる方針だ。
 カードは16年に交付を開始したが、コンビニでの住民票取得といった使用場面に限られることなどから普及が進まず、今年4月1日時点の交付率は16%と伸び悩んでいた。政府は7月、普及策として、カードを持つ人を対象に食事や買い物に使える最大5000円分の「マイナポイント」を還元する申し込みの受け付けを開始。申請数は急増し、交付済みを含めた今月17日現在の申請率は25.3%となった。
◆保険証や免許証と一体に
 政府は、健康保険証に加え、26年までに運転免許証と一体化させる方針。今月下旬から、未取得者にスマートフォンから申請できるQRコード付きの交付申請書を送って申請を促す。
 平井氏は取得を義務付ける法制化について「強引ではうまくいかない」と否定しつつも「もっと有効に使えることが増えたら、自然と持たなければ生きていけない世界になる」と普及に躍起。自民党は17日にまとめたデジタル政策に関する提言に、カードとの一体化による保険証の将来的な廃止を盛り込んだ。
◆任意のはずが…
 こうした政府・与党の動きに、市民団体「共通番号いらないネット」事務局の宮崎俊郎さん(59)は「任意のはずのマイナンバーカードが強制になってしまう」と警戒。「これだけの人数しか取得していないのは、カードで生活が豊かになるという実感よりも、落としたり不正利用されたりする不安の方が勝っているから。そういう気持ちを持っている人が多いことの表れだ」と指摘する。