日本が犯した3度目の過ち、消費増税が経済に打撃—The Wall Street Journal

2020年2月22日
【赤旗】2月18日《主張》10~12月期GDP―消費税増税が経済壊している
 内閣府が発表した昨年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価上昇分を差し引いた実質成長率が、前期(7~9月期)に比べ1・6%低下しました。年率に換算すると6・3%ものマイナスで、事前の民間の予測を上回る落ち込みです。安倍晋三政権が強行した10月1日からの消費税率の10%への引き上げが、家計も経済も直撃しているためです。GDPのマイナス成長は5四半期ぶりで、日本経済が消費税の増税後、新たな消費不況に突入したことを示しています。消費税率を緊急に5%へ戻し、国民の暮らしを応援する政治の実現が緊急の課題です。
安倍経済失政の責任
 実質経済成長率の大幅なマイナスは、消費税増税が日本経済にとって大打撃になっていることを浮き彫りにしています。米中貿易紛争の影響などを受けた輸出の低迷に加えて、消費税増税前の7~9月期が前期に比べ0・1%の伸びと、増税前の駆け込み需要がほとんど見られなかったのに照らしても、増税後の落ち込みはきわめて大きなものがあります。消費税増税の強行によって日本経済に新たな困難をもたらした、安倍政権の失政は明白です。
 主な費目別では、GDPの約6割を占める個人消費(民間最終消費支出)が消費税増税に直撃されて前期に比べ2・9%のマイナスになり、消費の冷え込みを裏付けています。実額で見ても、持ち家の帰属家賃を除く家計最終消費支出は、前回の消費税増税後の2014年4~6月期を下回っています。個人消費の下げ幅は前回増税後のマイナス4・8%に次ぐものです。08年のリーマン・ショック後にもなかった落ち込みです。民間企業の設備投資も前期に比べ3・7%の落ち込み、民間の住宅投資も2・7%のマイナスになりました。米中貿易紛争などの影響を受けた輸出も0・1%の減です。
 消費税増税後、政府や民間が発表した経済指標で見ても、家計の消費支出は、昨年12月前年同月比で4・8%もの大幅下落、勤労者の実質賃金も昨年12月0・9%のマイナス、内閣府の景気動向指数も5カ月連続で「悪化」という判断になりました。
 所得が増えず消費が落ち込んでいるのは、安倍政権が続けてきた「アベノミクス」と言われる経済政策が、大企業や富裕層をうるおすだけだからです。庶民の暮らしは良くなりません。政府は、消費税増税後の反動減は「前回ほどではない」(菅義偉官房長官)といいましたが、消費税増税を強行した安倍政権の責任は重大です。
 安倍政権は消費税の増税に合わせて、複数税率の導入やキャッシュレス決済へのポイント還元などの「十二分の対策」を取ると宣伝しました。しかしその効果がなかったことは、一連の経済指標、とりわけ最も基本的なGDPの大幅な低下で明らかです。「アベノミクス」の中止と消費税の減税が急務です。
安倍政権退陣させてこそ
 消費税を減税し、暮らしを応援する社会保障の充実など国民向けの経済政策を実行する財源確保は、大企業や大資産家の応分の負担、米国製兵器の爆買いなど“無駄な”支出の削減で十分可能です。重要なのはそのための政治の転換であり、安倍政権を退陣に追い込むことが不可欠です。

【The Wall Street Journal】2月18日 日本が犯した3度目の過ち、消費増税が経済に打撃
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
 日本経済は2019年10~12月期に急激な落ち込みを演じた。実質国内総生産(GDP)は前期比年率換算で6.3%減少し、四半期の成長率としては過去10年で2番目に悪い数字となった。政策当局者が犯した3度目の間違いがその原因でなかったとすれば、まだしも受け入れやすかったかもしれない。
 日本政府は昨年10月に消費税率を8%から10%に引き上げた。その結果、消費支出が大幅に落ち込み、家計支出は10~12月期に年率換算で11.5%減少した。
 1997年と2014年に消費税を引き上げた際も同じように経済が大きな打撃を被った。過去25年間に家計消費が最も大きく落ち込んだ3度の四半期は、いずれも消費税が引き上げられた時のことだ。
 幸いなことに、日本は今のところ、さらに消費税を引き上げる考えはなさそうだ。しかし、こうした破壊的な行動につながる考え方は異様なほど根強く残っている。増税が日本経済に与えたダメージが明確になっていた先週も、国際通貨基金(IMF)は今後10年間に税率をさらに15%に引き上げるべきだとの考えを表明している。
 それは比較的小さなものに聞こえるかもしれないが、日本の家計消費は過去10年間に実質ベースでわずか2.6%しか増加していない。こうした微々たる伸びは、消費者が家計の手取り収入やインフレ率が大きく上向くとは予想しておらず、支出も控えめに抑えるとの見通しを強めている。
 2012年末に安倍晋三氏が首相に返り咲いて以来、日本経済は見事な回復を遂げてきた。1990年代や2000年代のデフレは姿を消し、投資は著しい盛り上がりを見せた。失業率も数十年ぶりの水準に低下した。だが、家計消費は景気拡大に全く寄与していない。
 財政を再建する必要性に迫られているのであれば、増税に伴う経済的痛みも受け入れられやすい。だが、日本政府が抱える純債務の利払い負担は、主要7カ国(G7)の中で最も低い水準にある。
  日本政府が積み上げてきた政府債務の利払いは容易になっている。増税や支出抑制を主張してきた当局者は、その理由についてもっと明確な理由を示さなくてはならない。それらの政策は試されてきたが、日本の国民を裏切っている。
 しかも、日本はおそらく他のどの国よりも、財政政策との関係を見直す必要がある。米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年金利を引き下げ、欧州中央銀行(ECB)は独自の景気刺激策を拡大したが、日銀は何の手も講じていない。
 日本では、少なくとも現在の経済的枠組みの下では金融政策に関する選択肢がほぼ尽きているため、今後景気が悪化する場面があれば、財政政策が一段と大きな役割を担わなくてはならない。政策当局者はそうした場面が訪れる前に、財政政策を積極的に活用する術を身につけておく必要がある。