増税の「口実」はなくなった
【赤旗】12月24日〈主張〉消費税導入30年―増税の「口実」はなくなった
安倍晋三政権が来年10月からの消費税率の10%への引き上げに執念を燃やす中、24日は消費税導入法の成立が当時の竹下登政権の下で強行されて、ちょうど30年です。翌1989年4月1日から税率3%で施行された消費税は、その後5%、8%と段階的に増税され、国民を苦しめてきました。直接税と間接税の「比率是正」などの名目で大企業や大資産家の負担は軽減される一方、年金も医療も介護も改悪に次ぐ改悪で、社会保障財源を賄うという消費税導入・増税の口実も破綻しています。前回の増税による不況は続いており、新たな増税はやめるべきです。
低所得者ほど負担が重い
最近、消費税導入当時、衆院事務局で国会対策などに携わり、その後参院議員を務めた平野貞夫氏が日本記者クラブで話したのをインターネットで聞きました。
大平正芳政権が79年の総選挙で大敗し「一般消費税」の導入を断念した後、中曽根康弘政権が87年に「売上税」法案を提出したもののこれも廃案、竹下政権で消費税を導入するまで10年がかりだった舞台裏を生々しく証言しました。同時に平野氏は、秘書として仕えた前尾繁三郎元衆院議長から「簡素・公平・公正」が税の基本と教えられたことを引いて、「軽減税率」の導入やポイント還元などを伴う来年の増税について、「これでは格差が広がるばかり。全部反対だ」と断言しました。
1960年代から自民党政権が「付加価値税」などの名前で画策してきた大型間接税が、「広く、薄く」国民に負担してもらうなどとして持ち出されたのが、大平政権の「一般消費税」でした。原則としてあらゆる商品やサービスに課税し、低所得者ほど負担が重い大型間接税が、消費者や中小商工業者の反発を受けたのは当然です。中曽根政権も竹下政権も、「行政改革」や「政治改革」を看板に掲げつつ、国会での強行を繰り返し、ようやく成立させたのです。
導入時から2018年度までの消費税収は累計372兆円に上りますが、大企業や大資産家への減税で、法人税の減収分だけで291兆円、約8割が消えた勘定です。
5%、8%への増税の際、当時の政権は社会保障の経費に充てるとか「社会保障と税の一体改革」を約束して、国民の反対を弱めようとしました。その建前が成り立たないことは、相次ぐ社会保障改悪の事実が証明しています。
安倍政権が12年末の政権復帰から間もない14年4月から強行した消費税の8%への引き上げは消費を冷やし、いまだに不況を抜け出せていません。直近7~9月期の国内総生産(GDP)も、前期比2・5%減(年率換算)の大幅な落ち込みになりました。こうしたなかでの消費税増税など、まったくの論外です。
「10%中止」一点で声広げ
日本より一足早く「付加価値税」を1977年に導入した韓国では、税率を41年間引き上げたことがありません。韓国を調査した湖東京至税理士によれば、大企業の法人税引き上げで財源を確保しているといいます。
日本でも大企業や大資産家に適切な負担を求めれば、消費税は増税しなくても財源は出てきます。消費税導入から30年を機に、10%への増税中止の一点で、世論と運動を広げようではありませんか。
【東京新聞】12月29日〈社説〉沖縄県民投票 全有権者参加の道探れ
辺野古新基地の是非を問う沖縄県民投票を巡り、一部の市が意義を疑問視し実施を拒否・保留する事態となっている。県、市は協議を重ね全有権者参加の道を探ってほしい。分断と対立は無意味だ。
県民投票は県民有志が約九万三千筆の有効署名を集め県に請求。県議会が条例案を可決し来年二月二十四日に行う。辺野古埋め立てを賛成、反対の二者択一で問う。
県が経費を負担し四十一市町村に投開票を委ねる。ただ十二月議会で、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市など七市町が実施経費を含む予算案を否決した。
予算は義務的経費であり、議会が否決しても市町村長が執行できる。だが、宜野湾、宮古島両市の市長は議会判断を尊重し投開票を行わない意向を示した。与那国町長は否決された予算を執行する考え。残り四市は流動的だ。
六市には県内の約35%に当たる有権者がいる。これらの市で投票が行われないとしたら県民投票の意義は大きく損なわれる。
新基地の是非だけでは、返還対象の普天間飛行場の扱いについて県民の意見が反映されないとの宜野湾市などの反対理由も分かる。
しかし、知事選や国政選挙で繰り返し示された新基地反対の民意を無視し政府は今月から、埋め立ての土砂投入を強行している。
十月の就任後、玉城デニー知事は工事を中止した上で普天間の危険性除去を含む沖縄の基地の在り方について政府に話し合いを申し入れてきた。県民の意思を確認するため、あらためて民意を問う意義は大きい。
県民投票条例は投開票を市町村の義務としている。県は必要に応じ反対派の市長に勧告、是正要求をするが、同時に投票の狙いを粘り強く説明する必要がある。市長側も、直接民主主義の意義などを考慮し慎重に最終判断すべきだ。
二〇一九年度の沖縄関係予算編成で、政府は使途に県の裁量権が大きい一括交付金を大幅に減額する一方、市町村に直接交付できる費用を新設した。基地建設に従順な市町村を、県を飛び越え「一本釣り」するつもりなのかと疑う。県民投票を巡る対立まで沖縄分断策に利用されるとしたら、残念極まりない。
辺野古埋め立てについては、県民投票の実施まで中止を求める米大統領あて嘆願サイトへの署名がきのう現在十七万筆に迫るなど世界が注目する。基地負担軽減に沖縄が一丸となって対応することに、私たちも支援を惜しむまい。