消費税率引き上げ―「反動減」対策より増税中止を

2018年9月1日

【赤旗】8月30日 <主張>消費税率引き上げ―「反動減」対策より増税中止を
 安倍晋三政権は今月末までに、2019年度予算案の各省庁の概算要求をまとめ、財務省に提出する予定です。19年度予算編成で最大の焦点の一つが、同年10月実施予定の消費税率の8%から10%への引き上げです。消費税の増税は国民の負担を増やし、消費を冷え込ますため、安倍政権はその対策を検討することを7月に決めた概算要求方針で打ち出しています。具体的な対策が出てくるのは年末の予算編成過程ですが、麻生太郎副総理・財務相は今週改めて予算編成を担当する財務省の主計官に対応を指示しました。
あくまで強行するために
 安倍首相は12年12月に政権に復帰した後、14年4月にそれまで5%の消費税率を8%に引き上げ、経済の底が抜けたといわれたほど、景気を悪化させました。原則としてすべての商品やサービスに課税される消費税は、家計を直撃し、消費を落ち込ませ、とりわけ低所得者ほど負担が重いためです。国内総生産(GDP)は14年度マイナスになりました。個人消費はその後も回復が遅れ、家計の消費支出は増税後ほとんどの月で前年同月比マイナスが続いています。
 安倍政権は、当初15年10月に予定した消費税率の10%への引き上げを、景気の悪化を理由に、2回にわたって延期しなければなりませんでした。しかしその後は、食料品などへの「軽減税率」の導入や消費の反動減対策をとることを口実に、来年10月からの増税を強行する構えです。
 麻生財務相は反動減対策を指示した会合でも、「間違いなくやれる状況になっている」と発言したものの、前回増税の際「大きな景気後退を招いたのは事実だ」として、「予算編成にあたっては、きちんとした対応をやっておかないといけない」と述べています。
 暮らしと経済に有害なことは百も承知で、安倍政権が消費税増税に固執するのは、歳入と歳出を抜本的に見直して、消費税に頼らず財源を確保する姿勢と政策に欠けているからだけでなく、法人税などの負担が増えることを嫌う財界が「税率10%超の消費増税も有力な選択肢」(経団連)と国民の増税を要求し続けているからです。
 しかし、安倍政権がいま持ち出そうとしている住宅や自動車の購入支援は、それだけの資金力がない消費者には何の恩恵もありません。むしろ住宅メーカーや自動車会社を喜ばす、大企業本位の政策です。増税前の駆け込み需要と増税後の落ち込みをならすために、値上げを前倒しして増税より早くしたり、「消費税還元セール」を解禁したりするなどというのは全く小手先の対策で、便乗値上げや値引き競争などを招くだけです。
選挙向けに10兆円規模も
 安倍政権の周辺には「前回の増税時の負担増は8兆円、今回は『軽減税率』などがあるので負担増は2・2兆円」という見方もあります。一方で政権内には来年の選挙対策を考えれば、「反動減対策に10兆円は必要」という議論もあります。増収見込みを上回る対策までとって増税を強行するのはまさに本末転倒です。
 国民本位の経済政策に転換し歳入と歳出を見直して、増税は中止すべきです。自民党総裁選では安倍首相も石破茂氏も増税前提に議論しています。自民党に政治をゆだねることはいよいよ危険です。

【赤旗日曜版】9月1日 海外頼み、国内は長期停滞―4~6月期GDPプラス
 4~6月期のGDP(国内総生産)統計速報が8月10日に発表されました。4~6月期の実質GDP成長率は前期比0・5%のプラス。安倍晋三首相をはじめ政府関係者はほっと胸をなでおろしたことでしょう。
 前期、1~3月期はマイナス成長でした。もし4~6月期もマイナスなら、「景気は緩やかに回復している」と言えなくなり、アベノミクスヘの信頼が揺るぎかねない状況にあったからです。
 「景気は緩やかに回復している」というのは、ここ数年、政府が使い続けている常套(じょうとう)句です。景気に関しての月々の政府の見解を示す「月例経済報告」では、第2次安倍内閣の発足後、少したった13年9月から直近の18年7月まで、政府は毎月、「景気は緩やかに回復している」という表現を使っています。実に59ヵ月も連続しています。本当にそうでしょうが。
 景気の動きを示す代表的な指標である「景気動向指数(一致指数)」(内閣府作成)を見ますと、14年4月(消費税率引き上げの月です)に落ち込んで以降、若干の上げ下げはありますが、ほとんど横ばいです。ちなみに直近(18年6月)の指数は116・3で、落ち込み前(14年3月)の指数117・5をいまだ下回っています。
 景気は「ほとんど横ばいで推移している」というのが正しい見方というべきでしょう。この4年余り、景気は全く良くなっていないのです。
 今回発表されたGDP統計でもその様子が見てとれます。18年4~6月期の国内総生産の実質値(年換算値)は536兆円で14年1~3月期の517兆円に比べ19兆円、3・7%しか増えていません。1年当たり4兆円ほど、1%以下しかふえていないということになります。
 しかも増えた中身が問題です。GDP統計を需要面から見ますと、民間消費支出は14年1~3月期は306兆円であったものが、18年4~6月期には301兆円と5兆円ばかり減っています。これに企業の設備投資などを合わせた国内需要の合計はこの4年と1四半期の間で7兆円の増加にとどまっています。それにもかかわらず、GDPが19兆円増となった最大の要因は、輸出が15兆円増加したことです。
 輸出の増加は海外経済の好調に依存したものですから、アベノミクスの成果ではありません。
 「異次元の金融緩和」をはじめ鳴り物入りで大々的に展開されているアベノミクス。それにもかかわらず景気がほとんど良くなっていないのはなぜでしょう。
 一つは、国民の所得低迷を打開する「矢」がないなど、アベノミクスが「的外れ」の政策だからです。いま一つは消費税増税、社会保障制度の改悪など人々の暮らしに悪影響を与える政策を安倍内閣が取り続けているからです。
 景気を良くするためにも、安倍内閣の退陣、根本からの経済政策の変更が必要です。
                    山家悠紀夫(やんべ・ゆきお暮らしと経済研究室) 

【JIJI.COM】9月1日EU、夏時間廃止の方針=市民調査で84%希望-欧州委、加盟各国に提案

 【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州委員会は31日、EUが採用している現行の夏時間制度の廃止をEU加盟各国と欧州議会に提案すると発表した。欧州委が実施したEU市民への意見調査で、約460万件の回答のうち、夏時間の廃止希望が84%に上ったことを踏まえた。 ユンケル欧州委員長は同日、ドイツの公共放送ZDFに対し、「何百万人もの市民がもう時間を変更したくないと言っており、欧州委は彼らの言う通りにする」と語った。 EUは現在、3月の最終日曜日に時計を1時間進め、10月の最終日曜日に元に戻す制度の実施を加盟28カ国に義務付けている。 欧州委が31日公表した調査結果(速報)では、84%が廃止を要望。76%が夏時間制度による年2回の時間変更を「非常に悪い」あるいは「悪い」経験だと回答した。廃止を希望する具体的な理由としては、健康への悪影響や交通事故の増加、省エネ効果がないことなどを挙げた。 調査結果や欧州委の判断は、2020年の東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として夏時間導入を検討している安倍政権の議論にも影響を与えそうだ。(2018/08/31-21:12)