日本経済は消費税10%に耐えられないかもしれない

2018年6月23日

【Japan Business Press】6月18日 日本経済は消費税10%に耐えられないかもしれない―深刻に低下している日本経済の基礎体力
 政府が策定する経済財政運営の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)に消費税の10%への増税が明記された。景気への影響を最小限にとどめるため、大型の景気対策も実施する。
 本来、増税は景気に対して大きなマイナスにはならないはずであり、消費増税による景気悪化を懸念しなければならないのは、日本経済の基礎体力が弱っていることが原因である。増税を実施しつつ、得られた税収を景気対策につぎ込むという形では、本質的な解決にはつながらないだろう。
▼今、景気が悪いのは消費増税のせい?
 政府は来年(2019年)10月の消費増税に備え、2019年度と2020年度に大規模な景気対策を実施する方針を固め、骨太の方針に盛り込んだ。政府は財政再建を進めることを大前提としているため、この措置は、財政再建とは別枠で処理される。
 8%から10%への増税に対してここまでの対策を講じるのは、前回の失敗を繰り返さないためである。政府は2014年4月に消費税を5%から8%に増税したが、これをきっかけに日本経済は一気に失速してしまった。
 量的緩和策の実施後、消費者物価上昇率が1.5%(総合)を超えるなど、経済は順調に推移するかに見えたが、消費増税をきっかけに物価上昇は一気に鈍化し、年末にはほぼゼロ%まで下落してしまった。2014年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率はマイナス1.8%とボロボロの状況となり、7~9月期も0%にとどまった。今、景気が悪いのは消費増税を強行したことが原因であるとの指摘は多い。
 
【毎日新聞】6月17日 加計と日大問題  似た構図、丸山真男の「無責任の体系」か
 安倍政権のモリカケ疑惑と、日本大学アメリカンフットボール部の悪質タックル問題は似ている--と、ちまたで言われている。本当か。加計学園問題に焦点を絞り、日大の問題と実際に比べてみた。すると、トップやその周囲が現場の告発を否定する構図は共通し、関係者の発言までそっくりだった。二つのケースの奥に潜む日本の政治や社会の病理を探る。【和田浩幸、宇多川はるか/統合デジタル取材センター】
▼加計学園ありきだったのか
 簡単に加計学園問題を振り返っておく。
 文部科学省は、全国で獣医師が足りているなどとして、獣医学部の新設を長く認めてこなかった。安倍晋三首相は「岩盤規制に穴を開ける」として、自身が議長を務める国家戦略特区諮問会議で、愛媛県今治市を特区に指定。応募した加計学園はこの春、同市に岡山理科大獣医学部を開学した。しかし、加計学園理事長の加計孝太郎氏は首相の「腹心の友」で、その穴は最初から加計学園しか通れないものだった--と批判されている。
 この問題で、前川喜平・前文科事務次官は「和泉洋人・首相補佐官から、国家戦略特区における獣医学部新設の対応を早く進めろ、と指示があった。その際に『総理は自分の口から言えないから、代わって私が言う』という話があった。これは加計学園のことだと確信した」と国会で証言した。
 一方、和泉氏は「総理からの指示は全くない。(獣医学部の問題は岩盤規制の象徴という前提で)『しっかりフォローしてほしい』という趣旨で申し上げた」と釈明した。
 また、愛媛県職員が記録した文書で、加計学園の獣医学部新設について、地元自治体に「首相案件」「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」など述べたとされる柳瀬唯夫元首相秘書官も「自治体の熱意が前提ということは閣議決定事項なので、その趣旨は申し上げた」などと国会で説明。柳瀬氏の発言を、首相も「死ぬほどがんばれ、という精神論だ」と片付け、自身の指示や関与はないとしている。
▼加計問題がもしアメフットなら
 一方の悪質タックル問題。日大の宮川泰介選手は井上奨(つとむ)元コーチから「相手クオーターバック(QB)を潰せ」と指示された。宮川選手は「特別な指示だった」とするが、井上元コーチは「思い切り行け」という意味だったと釈明。内田正人前監督は自分の指示ではないと主張した。
 二つの問題に登場する関係者の発言を並べて表にすると、似ているのは一目瞭然だ。問題の当事者(政府と日大アメフット部)のカウンターパートに相当する愛媛県知事、関西学院大アメフット部監督の発言まで似かよっている。
 加計問題をアメフットにたとえると、登場人物の主張はこうだろうか。
 前川選手「和泉コーチを通じて安倍監督から岩盤規制をタックルで潰せと言われました。加計学園を念頭に置いた特別の指示でした」
 和泉コーチ「監督からの指示はありませんでした。前川選手に『思い切りタックルしろ』と一般的な意味で言ったにすぎません」
 柳瀬コーチ「『死ぬ気で行け』と言ったのは、思い切りタックルしろという意味です」
 安倍監督「加計学園のために潰せ、と指示したり働きかけたりしたことはありません。柳瀬コーチの発言は精神論でした」
▼大学アメフット界に劣る政府の対応
 だが、二つの問題のその後の方向は正反対だった。
 関東学生アメリカンフットボール連盟は、宮川選手と内田前監督、井上元コーチの主張が出そろって間もない5月29日、前監督と元コーチを事実上の永久追放である除名処分にすると発表した。選手の主張を「具体的で迫真性がある」と全面採用。内田前監督が否定した「やらなきゃ意味ないよ」とする試合前の発言はあったとし、「立派な指示」と認定。井上元コーチの指示は「けがをさせてこいとの意味が込められていた」と判断した。
 加計問題はどうか。「総理のご意向」という内閣府職員の発言が文科省職員の作った記録に残され、愛媛県職員も柳瀬氏が「死ぬほど実現したいという意識で」などと発言したとの記録を作っていた。だが、安倍首相は「記録よりも記憶」を重視して自身の関与を否定し、疑惑の幕引きを図っていると野党から批判されている。
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 類似する二つの問題をどう見るか。3人の専門家に見方を聞いた。
戦前から続く「抑圧の移譲」
◆高千穂大経営学部の五野井郁夫教授(政治学)の話
 多くの人が日大アメフット部の対応に安倍政権を重ねたのではないか。本来なら組織を代表する者が率先して謝ったり責任をとったりすべきところを、末端が責任をとったり、場合によってはかばったりする姿だ。
 この姿には既視感がある。丸山真男が1949年の論文「軍国支配者の精神形態」で指摘した戦前のファシズムの特徴だ。丸山は論文の中で、権力に近いほど罪が許され、遠いほど法が適用され責任が問われる現象を「抑圧の移譲」と呼び、権力側の責任逃れを「無責任の体系」と表現した。安倍政権も日大アメフット部も、この「無責任の体系」そのもの。日本のある種のOS(オペレーション・システム=パソコンを動かす基本ソフト)は戦前から変わっていないのではないか。
 日大アメフット部は最終的に長が責任をとる機能が働きつつある。加計問題でも珍しく前川さんのような「フェアプレー」をする人が出てきたが、報われたわけではない。安倍政権がこのまま居直って責任をとらず幕引きしては、子供たちに与える影響は大きいと思う。権力があれば、責任逃れができて、ひたすら逃げて、責任は下に押しつけることができるとなれば、子供たちは何が人として正しいのか分からなくなってしまう。
 「無責任の体系」を、現役世代だけでなく将来の世代にもまん延させるのは、恐ろしいことだ。安倍首相は「美しい国」と言う。国のトップが率先してモラルの高さを示し、国民の多くが「やっぱりこうだよね」と納得できるものを提示して、かつ憲法72条で示されている指揮監督者としての責任が問われれば潔く身の処し方を示していくことが、本当の意味で美しい国ではないのか。
加計問題の被害者は納税者だ
◆関西大社会安全学部の亀井克之教授(リスクマネジメント論)の話
 日大アメフット部の一件と安倍政権の加計学園問題は、構図としては全く同じ。圧倒的に権力が集中した状態で問題が生じ、組織の監督的な立場が本来は道義的な責任をとるべきところを、「指示を出した、出していない」に論点をすり替えたという構図だ。
 大きな違いは、被害を受けた人の明確さだろう。日大の問題では、相手チームの選手がけがをし、勇気ある発言をした宮川選手もいた。けがをした選手も宮川選手も本来最も大事にされるべき学生という存在だったが、ないがしろにされた点において、監督やコーチが道義的責任を問われるのは当然と世間にみなされた。最終的な対応にも、こうした判断が働いただろう。
 一方、加計学園問題では周辺情報がこれだけ出ていて、安倍首相は指示の有無にかかわらず道義的責任を問われるべきだが、本来の被害者である納税者(国民)がないがしろにされているという点を、野党を含む外野が十分に指摘してこなかったのではないか。宮川選手と違い、愛媛県の中村時広知事も拳を振り上げかけたが、下ろしてしまったようだ。
 最終的に道義的責任に応えた対応をとった日大の場合は、他の運動部も風通しが良くなるなど、良い方向に変わっていく可能性があるだろう。誰かが言っている「うみを出し切って」改革してくださることを祈っている。雪印や英会話教室のNOVAなど、これまで不祥事を起こした民間企業も、クライシスに向き合い、コンプライアンス(法令順守)を徹底させ、立ち直っている。
 安倍政権がこのまま「おとがめなし」としてうみを出し切らない状態が続けば、社会に与える影響は大きい。権力側が本来問われるべき道義的責任を問われない社会になる可能性がある、ということだ。国民は安倍政権に厳しい目を向け、道義的責任の有無を問う必要があると思う。
政権に第三者の調査機関なし
◆上場企業約300社を支援し、テレビドラマ「リスクの神様」(フジテレビ系)を監修した危機管理コンサルタント、白井邦芳さんの話
 日大アメフット部それ自体に自浄力はなかったが、信ぴょう性が高い勇気ある内部告発者である宮川選手が現れた。日大は、内部だけでは調査しきれない部分を追及する第三者委員会を設置した点で、安倍政権とは異なる。関東学生アメリカンフットボール連盟の調査は部だけにとどまっていたが、今回の問題は大学の体制的な問題もあるとみられ、第三者委は関東学連より厳しい調査になるだろう。
 加計学園の問題では、悪質タックル問題における第三者委の役割を期待できる機関が司法以外にないのが現状だ。ただ、金銭の授受が発生していないとされる忖度(そんたく)の問題では検察も動きようがなく、司法でも問えない。
 権力側がのらりくらり逃げ回る態度は残念だ。国民から納得されない政権という状態が続いているが、政権の公正な行政運営を監視するかつての行政監察局のような機関がなければ、忖度を巡って同じ問題は繰り返されかねない。構造上の問題で、企業だったらガバナンス(社内統治)が問われるだろう。

【DIAMOD online】6月19日 共産党・小池&宮本コンビがダメ野党で唯一光っている理由
▼他野党の新人議員が口をそろえる「小池さんと会って話を聞きたい」
 鈴木氏は16年の参院選後、小池氏を取材する機会があった。その時、参院選の候補者調整を枝野幸男氏(当時、民進党幹事長)と小池氏が水面下で進めた話に触れた際に、象徴的なセリフを聞いたという。
「枝野氏について『弁護士出身だけにリアリストですよね』と話を振ると、医師出身の小池氏から『いやいや、医者の方がもっとリアリストですよ』と返ってきたんです。小池氏の覚悟を感じる強烈な一言でした」
 こうした共産党の現実的な対応もあり、今、野党各党のなかで小池氏の存在感が高まっているのだ。
「実は、立憲民主党や国民民主党の新人議員はもちろん、昨年の衆院選で落選した元職のなかにも『小池さんと会って話を聞きたい』と言う人がかなり多い。そのくらい存在感があり、注目されているんです」
 小池氏と並び、もう1人、注目を集めるのが宮本岳志衆議院議員だ。今国会では、宮本氏を中心とする共産党のモリカケ問題の追及チームの活躍が目立っている。6月5日には、このチームが、財務省と国土交通省の局長が会計検査院の報告への対応について、昨年9月に協議した際のメモとされる文書を公表している。
「宮本議員は、独自の調査能力を持ち、独自の資料を元に政府を追及できる数少ない野党の議員です。かつて社会党や社民連に所属した楢崎弥之助さんを彷彿とさせる存在ですね」(以下略)