河野洋平元衆院議員が安倍晋三首相に苦言

2017年9月23日

【産経新聞】9月21日 「権力者側が自分の都合で解散するのは果たして良いものか」 河野洋平元衆院議員が安倍晋三首相に苦言
 河野洋平元衆院議長は20日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、安倍晋三首相の28日召集予定の臨時国会冒頭に衆院を解散する意向について「権力者側が自分の都合の良いときに、自分の都合で解散するのは果たして良いものか」と苦言を呈した。要旨は次の通り。
≪衆院解散≫
 臨時国会は3カ月前に野党が要求した。(森友・加計学園など)問題がいろいろあるから、臨時国会で国民の持つ懸念、不安を説明すべきだと。野党が要求していた臨時国会をずっと開会せずに引っ張ってきて、ここにきて臨時国会を開いて、しかも冒頭に解散するという。問題の説明もしなければ、懸念を払拭しようという努力もしない。安倍さんはこの問題について「できるだけ丁寧に説明する」とずっと言ってきた。それが一度も丁寧な説明もしないで冒頭で解散する。私には理解できない。
 権力者側が自分の都合の良いときに、自分の都合で解散するのは果たして良いものか。私に言わせれば、権力者が自分の都合で解散する場合は、解散後の態勢は残余の任期をつとめるということでないとおかしい。4年間の任期を2年近く残して、解散するならば、新しい態勢は残りの任期をつとめる。本来の任期4年ごとにきちんとやるべきだというのが本当じゃないだろうか。
 ここまで(臨時国会召集を)引っ張ってきて、自分の都合で解散するというのは、解散の仕方としては過去になかったことだ。野党が「何だ」と思うのは当然だ。(首相は)本当の意味の議会制民主主義の本旨をもう少しきちんと踏まえて議会運営をやってほしい。
 国民はそんなに忘れっぽくない。昨年、一昨年、国会に対して国民はどのぐらい怒っていたか。どのぐらい国会に対する期待を裏切られ、そうあってはならないという願いが届かなかったか。その時にどれだけ悔しい思いをしたか。国民の気持ちは、そう簡単に忘れ去れていないだろう。
 有権者はその思いを忘れていないと思うが、どうも野党が忘れているのが非常に残念だ。野党もあの時、どれぐらい地団駄踏んで悔しがったか。あの悔しがっていたのは本当でなかったのかと思いたくなるような昨今の状況は、非常に不思議でならない。
≪北朝鮮問題≫
 話がパターン化している。北朝鮮がミサイルを撃つ。核実験する。国際的な挑戦で暴挙だ。北朝鮮をやっつけないといかん。制裁しないといかん。次に、中国がまじめに制裁をやらないからだめだということになる。それがぐるぐる回っているだけで、問題は解決しない。中国が警戒感を解かないのもわかる。北朝鮮問題を解決するために、どういう仲間が組み合ってやるか、しっかりとまとめないといけない。
 北朝鮮の問題でわれわれが真剣に考えるのは、中国であり、日本であり、韓国だ。日中韓がこの問題で大きなダメージも何かあれば受けるし、被害も受ける。そして問題が解決すれば、われわれが一番安心できる状況になる。この日中韓が一体になって北朝鮮を説得しなければ駄目だ。
 だが、なかなか日中韓が話し合う状況にない。3カ国が話し合える態勢にないことが北朝鮮につけ込まれる一つの理由になっている。政治的努力が足りない。米中の緊密な話し合いも必要だ。その仲立ちを日本は積極的にやるべきだ。

【日本経済新聞】電子版9月20日 財政黒字化目標先送り 消費増税、教育に1兆円超  安倍晋三首相は2019年10月の8%から10%への消費増税の増収分のうち、1兆円超を教育などの充実策に振り向ける検討に入った。幼児教育の無償化などの財源を大胆に確保し、教育環境を整える狙いだ。財政再建にまわる税収が減るため、20年度としてきた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標の達成も先送りする意向だ。25日にも表明する。財政規律の緩みとの批判は避けられない。

【毎日新聞】9月21日 安倍政権 国会無視「沈黙の解散」質疑ゼロなら戦後初
安倍政権は28日召集予定の臨時国会冒頭での衆院解散を検討している。野党は8月の内閣改造後も森友、加計学園問題などを究明するため臨時国会の開催を要求してきたが、政権は応じてこなかった。このままでは戦後初めて、国会の本格論戦を経ない新内閣による「沈黙の解散」となる。【福永方人、佐藤丈一】
 「国会軽視との指摘は全く当たらない。安倍晋三首相は『帰国後に判断したい』と述べており、これに尽きる」。菅義偉官房長官は20日の記者会見で臨時国会のあり方への言及を避けた。首相は23日の帰国後に政権幹部と協議し、解散の手続きを最終判断する。
 過去の内閣発足や閣僚を入れ替える内閣改造の後は、首相が施政方針や所信表明演説を行い、各党の代表質問に答えてきた。これに対し、「真摯(しんし)な説明」を誓ったはずの首相は、内閣改造後に国会に立っていない。
 冒頭解散には野党の追及を避ける狙いがあり、与党内では首相の所信表明直後の解散や、所信表明の省略も検討されている。
 ただ、衆院事務局によると現憲法下で改造も含む新内閣発足後、国会で質問を受けずに解散した例はない。召集初日の冒頭解散は1966年の「黒い霧解散」など3例あるが、いずれも発足後初の国会ではなく、それ以前の国会で所信表明と質疑に応じた。
 政治評論家の森田実さんは「内閣は国会を通じて国民にメッセージを送るのが議会制民主主義の基本だ。これほど国会を軽視した首相は記憶になく、もはや国会無視だ」と批判。「今なら衆院選で勝てると見込んだのだろうが、支持率急落前の傲慢さが戻ってしまった」と話す。
 衆院解散は権力の行方を左右する。解散権は内閣にあり、過去の政権も時期や手法を巡ってギリギリの判断を下してきた。
 新内閣発足後初めて迎えた国会で解散に踏み切った例に、55年の「天の声解散」がある。鳩山内閣は54年12月の通常国会初日に発足。「造船疑獄」を受けて「55年3月までに総選挙を完了する」と表明していた。1月に施政方針演説を行ったが、野党が閣僚の疑惑を追及する姿勢を示すと、野党の代表質問への答弁の途中に解散に踏み切った。
 安倍政権は今年6月、野党が反対する「共謀罪」法を委員会での採決を省く「中間報告」で成立させた。改造後初の国会で冒頭解散に踏み切れば、再び「奇策」と指摘されるのは間違いない。
 東京大の牧原出教授(政治学)は「2院制では政権が国会に対して常に説明する責任がある」と指摘。特に加計学園問題に関し「首相の資質や信頼感に起因する問題だ。仮に与党が勝っても首相個人が支持されたということにはならない」とクギを刺した。
野党「全く無責任」「あまりにせこい」
 民進、共産、自由、社民の野党4党の幹事長・書記局長らは20日会談し、臨時国会冒頭にも衆院解散に踏み切る安倍晋三首相の方針を巡り、「国会の議論を逃げており、全く無責任だ」との考えで一致した。4党は大島理森衆院議長に対し、臨時国会で首相の所信表明や、各党の代表質問などの質疑を行うよう申し入れた。
 また民進党の松野頼久国対委員長は自民党の森山裕国対委員長と会談し、首相が所信表明直後の解散も検討していることを念頭に、「あまりにもせこい。国会をないがしろにし過ぎている」と反対姿勢を示した。【真野敏幸】