〝福祉敵視〟のルーツは1960年代の臨調路線

2016年11月19日

【日曜版】11月20日 社会保障予算なぜ抑制 60年代に〝福祉敵視〟のルーツが
予算編成の時期に世論誘導の焦点になるのは、なぜか社会保障費の自然増を削る話です。今は高齢者が増える一方ですから、年金や医療費・介護∫費が増えるのは当然のことです。低成長経済が続くなか、失業者や生活保護の対象者も増えざるを得ません。これらのために増える経費が社会保障費の自然増なのです。
この自然増の金額は大体年8千億円から1兆円に上ります。これは国民生活が必要としている経費ですから、最も優先されるべきです。ところが歴代自民覚政権は社会保障費の自然増削減に熱心な政府ばかりで、安倍政権も例外ではありません。
社会保障費抑制政策のルーツ(根源)は、1960年代後半から始まった国債発行政策に際し、当時の財政当局が唱えた「財政硬直化論」です。「財政硬直化論」とは国家経費のうち「投資的経費(公共事業費)」は「弾力的」に増減できるが、「消費的経費(社会保障費など経常費)」は法律や制度に基づいているため、「硬直化」つま-り「自然増」になるので、「抑制」の必要があるという主張です。その上で、経常費(政府サービス)を「国民全部に等量に及ぶサービス(治安・防衛・外交)Iと「特定者の受益となるサービス(社会保障等)」に分け、前者を優先経費とする一方、後者には「応益原則による負担」を求めました国債発行政策が泥沼状態に陥った80年代、「増税なき財政再建」を掲げたのが「第2臨調路線」です。
第2次臨時行政調査会の指導理念は、新自由主義による「小さな政府」論でした。財界代表というべき土光敏夫第2臨調会長の行革哲学のタネ本が、『文芸春秋』(75年2月弓)の「グループ1984年一の論稿「日本の自殺」でした。
「日本の自殺」は、いわば社会福祉亡国論で、「国民が自らのことは自らの力で解決するという自立の精神と気概を失うときへその国家は滅亡するほかはない。福祉の代償の恐ろしさは、まさにこの点にある」と。8- 1年の第2臨調答申は「真に救済を必要とする者」を除き、国民に「自助・自立・自己責任」を掲げ、社会福祉関係の「行政の縮減・効率化」を求めました。その具体化が毎年の社会保障費の自然増分カットです。また「第2臨調路線」は、社会保障費を抑制する一方で、「国際社会に対する積極的貢献」を押し出しました。「日本の経済力・財政力を国内で無駄に使わず、外へ向け-名誉ある国際的地位を得る」と。これは、軍事費や経済協力費(ODA)の優遇となります。21世紀に入り、小泉純一郎内閣(安倍晋三官房長官)は、「歳出カ・iトに聖域なし」をうたい文句に、社会保障費の自然増の大幅カットを続けました。「消費税を増税してもよいから、カットをやめてくれ」という声が国民から出てくるまで、社会保障制度の「改革」を続けるというのが、その基本姿勢でした。安藤実(あんどう・みのる静岡大学名誉教授)

【東京新聞】11月19日 <社説>憲法審査会 権力が鎖を解かぬよう
「改憲のための改憲」であってはならない。衆院の憲法審査会でこの原点が確認されたとは言い難い。多くの国民から要望が出ているわけでもない。目的があいまいな議論を進めるのに反対する。
みんなで憲法を議論しましょう。よりよい憲法をつくりましょう-。もっともらしい理屈だが、この考え方は実に危険だ。何のために憲法を改正するのか明示せず、「改憲ありき」の議論のスタイルだからだ。
とくにいわゆる「お試し改憲」は権力の目的外使用にあたる。権力の乱用であると憲法学者は指摘している。まず、この点を押さえるべきである。
実際に「よい憲法」とは、十人いれば十通りの考えが出るものであろう。収拾のつかない空想的なテーマ設定といえる。実際に憲法審査会でも各党がばらばらの意見を述べ合うだけにとどまった。
自民党は九条などを、民進党は立憲主義から、公明党は新たな条文を加える「加憲」、共産党と社民党は改憲反対、日本維新の会は統治機構改革や憲法裁判所…。各党の問題意識は理解するが、何のための審議かわからない。
こんな事態になるのは、そもそもなぜ現行の憲法を変えなければならないか、喫緊の事態がないからである。具体的な改憲の必要性に迫られていないからである。
自民党から「国民は今の憲法では家族や国家を守れないと考え始めている」との指摘があった。果たしてそうだろうか。
国民の側からみても今、改憲しないと平穏な暮らしが脅かされる事態が起きているわけでもない。改憲とは幅広い国民層からそれを求める声が湧き上がって初めて着手するべきものである。
むしろ改憲を求めているのは、「改憲派」の国会議員本人たちだ。衆参両院で三分の二以上に達した今、いよいよ改憲発議に向けて動きだしたというのが真相であろう。
いわゆる「押し付け憲法論」を自民党はいうが、同じ与党でも公明党はこの考え方を否定している。占領軍という外圧を利用しつつ、帝国議会で議論し、自らの憲法をつくり上げたと考えるべきである。公布から七十年、連綿とこの憲法は守られ続けている。その重みをかみしめるべきだ。
憲法とは権力が暴走しないように発明された制御装置である。その政治権力者たちが鎖を解くがごとく、自ら装置の改変に没頭すること自体に矛盾がある。

【しんぶん赤旗】11月13日 消費税増税延期法案 参院本会議 大門議員の質問
日本共産党の大門実紀史参院議員が消費税増税延期法案について行った質問(要旨)は次の通りです。
日本経済が停滞から抜け出せない最大の理由は、経済の6割をしめる個人消費の低迷が続いていることです。
消費低迷の第1の要因は、賃金、所得の低下です。賃金の低下は一時的な現象ではなく、非正規雇用の拡大によってつくられた「低賃金構造」に根本的な原因があります。
実収入から直接税や社会保険料などを除いた可処分所得(実質)も、安倍政権発足前と比べて減少しています。年金、介護、医療などの保険料が引き上げられてきたことや、消費税増税や「異次元金融緩和」の円安誘導による物価上昇も実質可処分所得を減少させました。まさに安倍内閣の経済政策、アベノミクスそのものが国民の可処分所得を減少させ、消費を冷え込ませてきたと言わなければなりません。いまこそ、手厚い中小企業支援とセットにした最低賃金の大幅引き上げや年金改悪のストップなど、具体的に国民の賃金、所得を上げる政策に踏み出すべきです。
消費を低迷させている第2の要因は、国民の将来不安の増大です。社会保障制度への不安が消費者意識に重くのしかかり、消費を冷え込ませる要因になっています。社会保障の連続改悪をやめ、むしろ充実することで国民の将来不安を取り除き、景気を回復させ税収も増やすというプラスの好循環に方向転換する必要があります。
消費を冷え込ませた第3の要因は、消費税の増税です。2014年4月の消費税率の8%への引き上げ後、個人消費は2年連続でマイナスとなりました。
安倍政権は消費税率10%への引き上げを延期することにしましたが、それ以降も消費は伸びていません。「増税予定」そのものが経済を停滞させています。消費税増税は延期ではなく、きっぱり断念、撤回すべきです。
だいたい、消費税は、国民にとって一利もない税金です。
第1に、こんなに増税するたびに景気を悪くする税金は見たことがありません。
第2に、所得の低い人に手厚くする社会保障の財源を所得の低い人に重い消費税でまかなうこと自体、自己矛盾であり、所得の再分配に反します。
第3に、社会保障のための消費税という話そのものがデタラメです。
税金は苦しい庶民から取るのではなく、もうかっている大企業や大金持ちから取るべきです。消費税頼みの考え方をあらため、応能負担の原則で税制を抜本的に見直すべきです。

【しんぶん赤旗】11月13日 消費税増税延期のための地方税法 地方交付税法の改定案 参院本会議 山下議員の質問
日本共産党の山下芳生参院議員が地方税法・地方交付税法改定案について行った質問(要旨)は次の通りです。
ひとつは、バブル経済崩壊後、政府が景気対策として地方自治体に単独で公共事業を増やすよう主導・誘導したことです。もうひとつは、消費税の増税が、景気を冷え込ませ、地方財政にも大きな打撃となったことです。
さらに、小泉政権の「三位一体改革」によって、国から地方への税源移譲をはるかに上回る国庫補助負担金と地方交付税の削減が行われ、地方自治体の財政危機を一層深刻にしたことも重大です。
消費税増税が景気悪化と格差拡大を招き、地方財政をも悪化させた事実を直視するなら、増税は延期でなく、きっぱり断念すべきです。
歴代政権がもたらした自治体財政の悪化、「自治体リストラ」の強要は結局、住民へのしわ寄せとなって現れました。
たとえば保育の問題です。「三位一体改革」による地方交付税の削減は、自治体の保育予算縮減に直結し、公立保育所に対する国の運営費補助などが一般財源化されたことにより、全国で公立保育所の削減と保育士の非正規化が加速しました。
さらに、安倍政権によって地方自治体に新たな負担が押しつけられていることは看過できません。
介護保険制度の見直しにより、「要支援1、2」の訪問介護、通所介護が保険給付から外され、市町村の事業に移管されることとなり、多くの自治体が困難に直面し、「要支援」向けのサービスが提供できない心配がうまれています。自治体への財源保障なき事業押し付けはやめるべきです。
安倍政権が今年度から地方交付税制度に導入した「トップランナー方式」も大きな問題です。
「トップランナー方式」は、民間委託や民営化などでコストカットを進めた自治体の低い経費を基準に地方交付税が算定されるもので、地方交付税の削減につながります。
日本共産党は、大企業や富裕層に対する優遇税制を是正し、能力に応じて負担する公平・公正な税制への改革で国・地方の財源を確保すること、地方自治体が「住民福祉の増進」という本来の役割を果たせるよう、地方交付税を拡充することを強く求めます。