還付金 消費税収19兆円から6兆円―輸出戻し税 トヨタなど12社に1兆円
【東京新聞】10月13日<社説>白紙領収書 「問題ない」とは何事か
白紙領収書に自分の事務所で金額を書き込む。菅義偉官房長官と稲田朋美防衛相が国会で認めた慣行は常識とかけ離れている。総務相も「問題ない」と追認するのは、法の趣旨からの逸脱だ。
領収書とはお金を受け取った側がその証明のために発行する証拠である。偽って書けば、文書偽造ばかりか、詐欺や脱税などにも問われることがある。
白紙領収書のやりとりは、税務当局などから徹底追及を受けるだろう。
政治資金パーティーならどうか。菅、稲田両氏の二〇一二年から一四年の政治資金収支報告書に添付された領収書は「白紙」に自分の事務所で金額などを書き込んだものだった。菅氏は約二百七十枚で千八百七十五万円分、稲田氏は約二百六十枚で五百二十万円分にのぼる。筆跡が同じだった。
金額が正しくとも、発行者でない者が書き込めば証明力を持たないと考えるのが普通だ。政治資金規正法で領収書の添付が求められるのも、報告書の記載が正しいことの証拠とするためだ。
ところが、高市早苗総務相は「規正法に領収書の作成方法は規定されておらず、法律上の問題は生じない」と国会答弁をした。驚くほかはない見解だ。領収書の書き方が法律に書いていないから違法でない-、社会通念としてこんな理屈が通るはずがない。
総務省の手引には領収書は支出を受けた者が発行し、宛名も発行者が記載すべき旨の記述がある。日付や金額も同様だ。空欄に後から書き込む行為も「適当でない」とする。高市氏は答弁を撤回すべきである。
菅氏や稲田氏の説明はこうだ。白紙領収書はパーティーの受付が混乱するのを避けるためで、主催者の了解があり、金額の水増しはない-。確かに手引には例外がある。「発行者から追記の要請のある場合」で、パーティー主催者からの「受付の混乱回避」との要請がそれに該当するのかもしれない。しかし、それは制度の抜け穴と呼ぶべきである。
そんな理屈が通るなら、証拠能力が疑わしい領収書を氾濫させる。政治資金の流れを透明化するという規正法の趣旨を骨抜きにしてしまう。税金が入っている重みをもっと考えねばならない。
世間の人は犯罪同然と思う。それを正当化する答弁は国民の規範意識さえ揺さぶる。自民党が改善通知で幕引きと考えるなら国民はただあきれ果てるしかない。
【しんぶん赤旗】10月9日 白紙領収書“問題ない”の強弁 自民の常識は国民の非常識
日本共産党の小池晃書記局長が6日の参院予算委員会で追及した稲田朋美防衛相、菅義偉官房長官ら安倍内閣の主要閣僚の「白紙領収書」問題は、「これが大臣の『常識』か」(「朝日」8日付社説)、「政治家の非常識に驚く」(「毎日」同)など批判の声が広がっています。自民党の「常識」は、国民からみて非常識そのもの。通用しません。
「ありえないじゃないですか、普通の会社だったら」(40代・男性会社員)、「なんでも偽造できちゃうじゃないですか」(20代・女性会社員)
7日放送のTBS系番組「NEWS23」は、小池氏の国会論戦を交えながら、「白紙領収書」に怒り、疑問をなげかける街頭インタビューの声を紹介しました。番組キャスターの星浩氏は「民間は税務署のチェックが非常に厳しいので、とっくにこの“白紙領収書”というやり方はやっていない。国会議員だけがオッケーという制度はどうみても不合理」とコメントしました。
短文投稿サイト・ツイッターでも「もう法律の意味がなくなってしまう」など批判が飛び交っています。
国会議員の政治資金パーティーにお金を払って出席した際に、主催者側から白紙の領収書を受け取って、後から金額を書き込む―稲田氏らはこの事実を認めましたが、小池氏に追及されると「法律上、領収書の発行側の作成方法は規定されておらず、法律上の問題は生じない」(高市早苗総務相)と居直っています。
「金額が白紙のものは領収書とは言わない。総務省発行の政治資金収支報告の手引きにも(領収書の金額は)後から追記してはいけないと書いてある」(小池氏)という、そもそものルールさえ、政治資金を所管する閣僚がわからない異常。
社説でも、「領収書をめぐっては、富山市議が白紙の領収書を偽造して政務活動費を架空請求した不祥事が判明したばかりだ。パーティーの白紙領収書も、裏金作りなどに悪用される懸念は否定できない」(「毎日」8日付)と指摘しています。
【全国商工新聞】10月10日 還付金 消費税収19兆円から6兆円―輸出戻し税 トヨタなど12社に1兆円
中小企業が苦労して納めた消費税19兆円の3割以上、約6兆円もが国庫に入らず、還付金として輸出大企業に払われている輸出戻し税の実態を、元静岡大学教授・税理士の湖東京至さんが推計しました。輸出大企業12社だけでも還付金は1兆円を超え(2015年度)、輸出企業全体への還付金で毎年6兆円もの税収が失われています。
(略)
いま、ヨーロッパではEU委員会を中心に輸出還付金制度を抜本的に見直す動きが出ています。EU委員会は輸出還付金制度を悪用して不正な還付金を受け取っている詐欺集団がいるとして、輸出企業に対する還付金制度(輸出ゼロ税率制度)を廃止し、輸出企業にも輸出先国の税率で課税する仕組みを提案しています。
(略)
EU委員会は輸出還付金制度の廃止とともに、ヨーロッパ諸国で広く採用されている食料品などに対する軽減税率も廃止すべきだと提言しています。
【東京新聞】10月8日 8月の現金給与総額、減少 雇用は好調なのに 賃金への波及なく
賃金が、伸び悩んでいる。厚生労働省が七日発表した八月の毎月勤労統計調査(速報、従業員五人以上の事業所)によると、基本給や残業代などを合計した一人当たりの現金給与総額は前年同月比0・1%減と、三カ月ぶりに減少した。雇用情勢は好調なのに賃金への波及は鈍く、政府と日銀が目指すデフレ脱却を停滞させる一因となっている。
物価の変動を加味した実質賃金は0・5%増と、七カ月連続のプラスを維持。しかし、これは消費者物価が下落したことで伸び幅を押し上げた影響が強い。安倍晋三首相は臨時国会の所信表明演説で「雇用の拡大、賃金の上昇による経済の好循環が生まれている」と強調したが、給与総額の伸びは弱いまま。個人消費も低迷し、目標とする2%の物価上昇のめどは立っていない。
雇用は改善傾向にあり、八月の完全失業率は3・1%と、バブル経済の余韻が残っていた一九九五年並みの水準。だが、みずほ証券の上野泰也氏は「人口減少で国内の市場は縮小しており、賃金や物価を持続的に2%上昇させる目標は、達成が難しい」と指摘する。
一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士氏は失業率は低いがまだ、働きたい人が全員雇われた状況になる「完全雇用」には達していないと分析。「政府と日銀が需要を持ち上げる政策を加速させ、完全雇用までいけば、雇用を確保するために賃上げ競争が起きる。そうなれば賃金上昇は本格化する」と予想する。