年金運用損5兆円 英離脱で株価急落―東京新聞

2016年7月9日
【日刊ゲンダイ】7月5日 浜矩子氏が警鐘 「EUショックはコストカットの口実に」
日本企業の多くは、「欧州の玄関口」である英国に進出しても、奥の間の大陸欧州に上がろうとはしませんでした。理念とレトリックを並べ立てる大陸よりも、成り行き任せで実利を求める英国の方が、ビジネスをしやすかったからです。EU離脱が決まったといっても、生産活動の拠点を構える日本企業が押っ取り刀で逃げ出すことはないでしょう。
  大陸側に新たな拠点をつくるのもコストがかかります。日本人スタッフを送り込み、現地スタッフもかき集めなければなりません。相当な手間がかかるし、リスクだって大きい。それよりも、離脱に伴う英国の制度変更に細かく対応していく方が現実的です。
  外国企業に出ていかれると困る英国は、出血大サービスをするはず。それこそEUの縛りが解かれたので、自由に引き留め策を講じられます。日本企業が大きなダメージを受けるような姿は想像しにくいですね。
それでも日本で暮らす人たちの生活は影響を受けるでしょう。少しでも理由が見つかればコストを削ろうとしている人たちからすれば、今回の事態は格好の口実になります。「こんな状況では賃金を上げるのが難しい」と言ったり、本当は10人が必要なのに「とりあえず5人で」と判断したりするケースも出てきそうです。雇用環境の悪化は避けられません。中小企業も無理難題を突き付けられかねない。しわ寄せは、いつも弱いところになりますからね。
 ■「びびった雰囲気」が広がっている
  この先、しばらくは世の中が荒れます。離脱交渉はスムーズに進みません。首相交代で保守党内もガタガタします。その先は総選挙で民族主義政党が台頭する恐れも排除できない。嫌なムードはどんどん広がっていきます。
  株価がリーマン・ショックを超える大幅下げになったように、日本国内もかなりびびった雰囲気になっています。消費増税を先送りする際に「リーマン」を口にした安倍首相は、このような事態を想像していなかったと思いますが、「サミット議長国の日本は、すでに準備をしていた」と吹聴しています。チームアホノミクスは、内需の腰折れ防止を優先し、分配に回されるはずの予算を減らして帳尻を合わせにかかる。もともと財政赤字削減の本丸を社会保障費ととらえているのだから、EU離脱を神風として、医療や福祉の予算を刈り込むわけです。「まずは成長」と叫び、生活保護の基礎的な部分なども削るつもりでしょう。
  直接的な影響はなくても、生活は苦しくなっていく。そんな覚悟が必要だと思います。

【東京新聞】7月5日 4~6月も年金運用損5兆円 英離脱で株価急落
 国民が支払う国民年金などの積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が、二〇一六年四~六月期に約五兆円の運用損失を出す見通しとなったことが、専門家の試算で分かった。英国の欧州連合(EU)からの離脱問題で株価が急落したのが主な要因。一五年度も五兆数千億円の損失を出す見込みが既に明らかになっており、一四年度末と比較した場合の損失は約十兆円に膨らむ見通しとなった。
 GPIFは一四年十月に安倍政権の方針を受け、どの資産にどの程度の積立金を投資するかの基準を変更。株式(国内、海外合計)を24%から50%に上げ、国債などの国内債券を60%から35%に下げた。
 試算をしたのは野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリスト。GPIFの一五年度の運用実績について事前に五兆円超の損失を出すと予測した実績がある。
 試算によると、運用資産ごとの損益はマイナスだったのが国内株二兆二千億円、外国株二兆五千億円、外国債券一兆六千億円。国内債券はマイナス金利の導入に伴う金利低下(国債価格の上昇)で含み益が出たため、一兆三千億円のプラスだった。西川氏は「株価が大きく戻すのは当面難しい」と話す。
 日本総研の西沢和彦上席主任研究員は「政府は株の比率を上げる基準変更の際、株価下落で損失が発生する当然のデメリットの説明をほとんどしなかった。あらためて情報公開を徹底し、損失はすぐ処理する仕組みが必要」と指摘する。

【しんぶん赤旗】7月8日 大企業の内部留保急増 上位100社1年間で14.2兆円増 余剰資金活用されず
2015年度中に内部留保を増やした上位100社の内部留保を合計すると、14年度の165・6兆円から15年度の179・8兆円へと1年間に14・2兆円も増やしていることが本紙集計で分かりました。
 15年度の有価証券報告書から各企業の連結内部留保を集計しました。1年間で内部留保を最も増やしたのはトヨタ自動車です。14年度の17兆193億円から15年度は18兆2473億円へと1兆2280億円も増やしました。以下、増加額の多い順に三菱UFJフィナンシャルグループ(FG)の7313億円、三井住友FGの4999億円などと続きます。増加額上位10社で5・2兆円、100社で14・2兆円もの内部留保が増えました。
 内部留保が増加した企業の多くで、資産中の現金預金が急増しています。ただ、金融機関の現金預金の増加については、日銀が大量に国債などを購入してマネーを供給した結果です。上位10社のうち3メガバンクを除く7社について集計すると、内部留保増加額(3兆997億円)の72%に相当する2兆2303億円も現金預金が増加しました。
 安倍晋三政権は法人税を引き下げ、金融緩和をすすめれば、設備投資や賃金に回るとしてきました。安倍政権下で4兆円もの大企業減税がなされました。しかし実際には内部留保が設備投資などに有効活用されず、余剰資金となっています。とりわけ大企業は研究開発減税などを利用して、法人税の実質負担率は中小企業よりも低くなっています。
 日本共産党はもっぱら大企業しか利用できない優遇税制をただし、大企業に中堅・中小企業並みの税負担を求めるとともに、安倍政権がおこなった大企業向けの法人実効税率の引き下げをもとに戻すことで、6兆円の財源を確保することを求めています。

【しんぶん赤旗】7月8日 大企業負担率は16% アベノミクス不公平税制鮮明 法定税率は32.11%なのに、三菱電機0.9%・武田薬品12%
巨大企業が2015年度に支払った法人3税の負担率がわずか16・7%だったことが本紙試算で分かりました。税引き前利益が1000億円以上だった大企業50社が払った法人税、法人住民税、法人事業税の税引き前利益に対する比率を各社有価証券報告書から算出しました。
 法定の法人実効税率(3税合わせた税率)は15年度、32・11%ですが、研究開発減税や受取配当益金不算入などもっぱら大企業だけが利用できる優遇税制によって、実際の負担率は大企業ほど低くなっています。
 15年度、負担率が特に低かった企業は三菱電機0・9%、武田薬品工業1・2%、日産自動車1・7%など。
 安倍晋三政権は「企業が世界で一番活動しやすい国」をめざし、財界の要求に応じて法人税率を毎年引き下げています。
 日本共産党は、「税金は所得や資産など負担能力に応じて」の原則に立ち、アベノミクスで大もうけした大企業を優遇する不公平税制をただすことを求めています。