サミットでの安倍首相発言に海外から批判相次ぐ

2016年5月28日
【毎日新聞】5月27日 首相、消費増税再延期へ‏
安倍晋三首相は26日、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを再延期する意向を固めた。現在の世界経済の情勢を2008年のリーマン・ショック直前と似ていると分析。予定通り増税した場合は、経済が急速に悪化する懸念があり、政権が目指すデフレ脱却が困難になると判断した。

【毎日新聞】5月28日 伊勢志摩サミット 「リーマン級」(安倍首相発言)に批判相次ぐ
27日閉幕した主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍晋三首相が「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」との景気認識をもとに財政政策などの強化を呼びかけたことに対し、批判的な論調で報じる海外メディアが相次いだ。景気認識の判断材料となった統計の扱いに疑問を投げかけ、首相の悲観論を「消費増税延期の口実」と見透かす識者の見方を交えて伝えている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「世界経済が着実に成長する中、安倍氏が説得力のない(リーマン・ショックが起きた)2008年との比較を持ち出したのは、安倍氏の増税延期計画を意味している」と指摘した。首相はサミット初日の26日、商品価格の下落や新興国経済の低調ぶりを示す統計などを示し、自らの景気認識に根拠を持たせようとした。しかし、年明けに急落した原油価格がやや持ち直すなど、金融市場の動揺は一服している。米国は追加利上げを探る段階だ。英国のキャメロン首相は26日の討議で「危機とは言えない」と反論。FTは英政府幹部の話として「キャメロン氏は安倍氏と同じ意見ではない」と指摘した。
 英BBCは27日付のコラムで「G7での安倍氏の使命は、一段の財政出動に賛成するよう各国首脳を説得することだったが、失敗した」と断じた。そのうえで「安倍氏はG7首脳を納得させられなかった。今度は(日本の)有権者が安倍氏に賛同するか見守ろう」と結んだ。
 仏ルモンド紙は「安倍氏は『深刻なリスク』の存在を訴え、悲観主義で驚かせた」と報じた。首相が、リーマン・ショックのような事態が起こらない限り消費税増税に踏み切ると繰り返し述べてきたことを説明し、「自国経済への不安を国民に訴える手段にG7を利用した」との専門家の分析を紹介した。首相が提唱した財政出動での協調については、「メンバー国全ての同意は得られなかった」と総括した。
 米経済メディアCNBCは「増税延期計画の一環」「あまりに芝居がかっている」などとする市場関係者らのコメントを伝えた。

【三井信託銀行 調査月報】4月号<時論>マイナス金利の行方と待ち構えるリスク
マイナス金利が導入されてから1 ヶ月強が経過した。この間、預金金利はゼロ近辺まで低下し、住宅ローン金利も引き下げられ、国債金利は長期ゾーンもマイナス領域に入り、一部の大企業では超低利の社債発行を検討し始めた。
しかし、企業部門では超低金利を好機と捉えた積極的な設備投資に動く気配は薄く、退職給付債務の増加(=企業収益の圧迫)が懸念されており、家計部門では「貯蓄から投資へ」ならぬ「貯蓄から現金へ」の志向が強まり、家庭用金庫の売れ行きが好調と聞く。金融機関はマイナス金利による減益圧力を緩和すべく、預貸両面における戦略見直しに着手するとともに、システム対応(応急措置としての手作業?)にも追われている。為替市場では円安方向への流れが強まるには至らず、株価の方向感もはっきりせず、MMF は運用停止に追い込まれた。
一般に、新たな政策の評価には年単位の時間を要するとは言え、現時点では日銀に想定や読みの甘さ、準備不足があったことは否めず、2%物価上昇に向けた道筋は依然として不透明であり、欧州の事例と比較しても日本のマイナス金利は成功裏にスタートしたとは言い難い。