消費税の引き上げ口実、こんどは「教育」か

2015年7月11日

【NHK】7月7日 政府の教育再生実行会議は教育への投資は未来への先行投資であり、充実させるべきだとして、将来的に消費税の在り方が見直される場合、税収の使いみちに教育を加えることも検討するよう求める提言案をまとめました。
提言案では、「教育は経済成長や少子化の克服、格差の改善など、日本が抱える課題を解決する鍵となるもので、教育への投資を『未来への先行投資』として位置づけ、充実を図っていくことが必要だ」としています。
そのうえで、少子化の克服や世代を超えた貧困の連鎖の解消につなげるため、幼児教育の段階的無償化と質の向上や、高等教育段階の教育費の負担軽減に優先して取り組むべきだとしています。
そして、提言案は、こうした教育分野の財源を確保する具体策として、消費税率を10%からさらに引き上げるなど、将来的に消費税の在り方が見直される場合、税収の使いみちに教育を加えることも検討するよう求めています。
また、資産の格差が次世代の教育の機会の格差につながることがないよう、資産や個人所得への課税の在り方などを見直すとしています。
教育再生実行会議は、8日の会合で提言を正式に決定したうえで、安倍総理大臣に提出することにしています。
《編集者から一言》これまで、消費税実施と引き上げの口実は「社会保障」でした。今度は「教育」を口実に引き上げようというのでしょうか。(K)

【毎日新聞】2015年07月09日 東京夕刊から一部抜粋
特集ワイド:成長戦略の「虚構」 改訂版を閣議決定
 日本経済は、かつての強さを取り戻しつつある−−6月末、閣議決定された成長戦略「日本再興戦略」の改訂版はこんな言葉で始まる。アベノミクスによって企業業績は好転、消費も持ち直しの兆しを見せているとして「経済の好循環は着実に回り始めている」ともアピールする。だが、この戦略で本当に日本経済は狙い通りに成長していくのだろうか。【小林祥晃】
 ◇「実力」不相応の高すぎる数値目標/第一、第二の矢が妨げる構造改革
 甘利明経済再生担当相は6月30日、経済財政運営の指針「骨太の方針」と成長戦略の改訂版が閣議決定された後の記者会見で、成長戦略の効果と方向性の正しさを強調した。
 鋭い分析と歯に衣(きぬ)着せぬ論評で知られるBNPパリバ証券チーフエコノミストの河野(こうの)龍太郎さんにこのような政策で経済成長を果たせるのかを尋ねると「どうでしょうか」と首をかしげた。/「歴代政権が成長戦略に取り組んできましたが、潜在成長率は右肩下がりです」。河野さんによると、日本の潜在成長率は1980年代は年率4.4%。ところがその後は下がり続けている。/「少子高齢化に伴って労働力人口が減少し、90年代以降は『労働投入』のマイナスが続いています。これが潜在成長率を押し下げているのです」「労働力人口の減少は需要減少を招き、設備投資を鈍らせます。90年代以降の低成長は、人口動態の変化がもたらす構造的な現象なのです。この影響で10年から14年の潜在成長率は0.3%にとどまっている。これが今の日本経済の実力です。それを考えると安倍政権の目標は高すぎる。成長どころか、税収を読み誤って財政破綻を招く恐れもあります」/「アベノミクスの第一の矢(金融緩和)と第二の矢(財政出動)こそが、本質的な経済成長を妨げている」。
そもそも本末転倒な経済政策だと手厳しく批判するのは、経済政策や国際関係の問題に幅広く発言している津田塾大教授の萱野稔人さん(政治哲学)。「金融緩和と財政出動で国内総生産(GDP)が増えるのは当然です。でも公共事業で景気を刺激しても、財政出動が終われば需要は止まる。むしろ景気を刺激している間に、これから人手が必要となる成長産業へ労働力が移らず、産業構造を固定化してしまう。第一の矢、第二の矢の副作用で構造改革が進まなくなるのです」金融緩和による円安誘導は「日本の労働力の安売り」とも批判する。海外で日本製品の価格が下がるということは、製造に必要な労働力も安く買われることを意味するからだ。
「円安に頼るだけでは、人件費の安い新興国との価格競争から抜け出せない。長期的な見通しを描けない政策を戦略とは呼べません」と萱野さんは嘆く。
 元大蔵省(現財務省)官僚で「成長戦略のまやかし」の著者である慶応大准教授の小幡績さんも、第三の矢である成長戦略の内容について「短期的な景気拡大にしかならず、むしろ長期的には日本経済を衰退させる」と警鐘を鳴らす。

【東京新聞】6月22日コラム 英知軽視せず生かせ
「政治家は理論を述べる者をバカにして、頭でっかちのモノ知らずとみなしている。国家のことは何よりも経験がいちばんで、理論など無力(中略)と考えている」。哲学者カントの『永遠平和のために』(池内紀訳)の一節だ。憲法学者がそろって安全保障関連法案を「違憲」と指摘したのに対し、「理」では勝てない議論から逃げ、「自衛措置を考えるのは学者でなく政治家」などと開き直り、学者ひいては知性を露骨に軽んじる政権や与党幹部らの態度を描写したかのようだ。
―中略―
安保関連法案は自衛隊のリスクを増大させ、命の問題にもかかわる。次世代への影響も大きい。憲法学者を含めた英知を集め、検討し直してみてはどうか。 (熊倉逸男)「私説・論説室から」