予算要求への各社 社説(「東京」、「毎日」、「朝日」)
2026年9月6日
【東京新聞】9月2日〈社説〉予算要求の膨張 責任なき積極財政では
2027年度予算編成に向けた各省庁による概算要求が締め切られた。一般会計の要求総額は前年度の122兆4454億円を大幅に上回る140兆円超の見通しとなり、4年連続で過去最大を更新した。
予算要求が異例の規模に膨張した背景には、高市早苗首相の「責任ある積極財政」により、従来の要求ルールを転換したことがあるが、金融市場は野放図な財政支出につながるとの警戒を強める。
政府は年末の予算編成では真に必要な事業に絞り込み、市場の懸念を払拭しなければならない。
概算要求にはこれまで各省庁の要求を一定程度に抑え、予算の肥大化を食い止めるシーリング(天井)の役目があった。
しかし、高市内閣は首相肝いりの「強く豊かな日本」投資枠を新設し、人工知能(AI)や半導体など戦略17分野を中心に「天井」のない要求を容認。金額を示さない事項要求も引き続き認められ、予算額の増大は避けられない。
日本経済の長引く低成長は国内投資の不足が要因として、大規模な財政支出で経済を成長軌道に乗せようとする狙いは理解する。
当初予算の成立後、査定が比較的厳格でない補正予算で歳出を積み増す従来の予算編成を改めることにも一定の意義はある。
ただ、野放図な歳出は許されない。新たな投資枠だけで予算要求は10兆円を超える見通しで、過大なものや本来の趣旨とは異なるものが紛れ込んでいないか、徹底した査定が必要だ。
増大する防衛予算や来春実施予定の飲食料品の消費税減税などに加え、少子高齢化に伴う社会保障費の増加で歳出圧力は強まる一方だ。税収は増えているが、赤字国債頼みの財政運営が続き、財政支出の選択と集中が欠かせない。
27年度概算要求が過去最大に膨らんだことは、金利上昇を受けて過去に発行した国債の返済や利払いに充てる「国債費」が前年度より5兆3千億円多い36兆6千億円に増えたことも一因だ。
高市氏の財政拡張路線などを背景に、長期金利は30年ぶりに一時3%台に乗り、円安も続く。財政運営への懸念が強まれば、金利上昇と円安がさらに進み、国民の暮らしを圧迫する。高市内閣は、歳出の無駄を徹底的に省き、持続可能な財政運営の道筋を示す重い責任から逃れてはならない。
【毎日新聞】9月2日社説 140兆円超の予算要求 借金財政顧みぬ急膨張だ
巨額の借金を顧みず、財政を急膨張させる。野放図な政策に金融市場は不安を募らせ、長期金利は30年ぶりに3%の大台を超えた。政府は警鐘に耳を傾けるべきだ。
2027年度予算の編成に向けて各省庁が提出した要求は、総額140兆円超と4年連続で過去最大を更新する見通しとなった。26年度からの増加額は約20兆円と異例の大きさである。
高市早苗首相の積極財政路線を反映したものだ。首相が抜本的な強化を表明している防衛費などでは金額を示さない要求が相次ぎ、実際は更に増える。
政権が重視する成長分野への投資枠には、10兆円を超す要求が殺到した。これまでは歳出の肥大化を防ぐために上限を設けてきたが、撤廃して「青天井」を認めた。
経済規模を拡大して税収を増やす狙いだが、投資先の人工知能(AI)、半導体、造船などは米国や中国に後れを取っている。過去に国主導でてこ入れしようとした事業は失敗を繰り返し、検証も置き去りにされている。
成長投資枠に盛り込まれても、従来の要求の看板を替えただけのケースが目に付く。地方の高速道路整備は、政権が目指す「強い地域経済」のためとされるが、人口減少が進む中、費用対効果が疑問視される事業に変わりはない。
要求が膨らんだのは、常態化している補正予算を、当初予算に一本化する首相の方針を反映したためという。だが、補正予算は必要性などのチェックが甘いと指摘されてきた。単に当初予算に上乗せするようでは、放漫財政に拍車をかけるだけだ。
金利の上昇に歯止めがかからなければ、借金がかさみ、財政運営の重荷となる。国債の元利払い費は27年度に36兆円強と26年度より5兆円超も多くなる見通しだ。
首相が物価高対策とする消費税減税も財源はあいまいだ。国債発行が大幅に増えると、円が売られて物価上昇が加速し、国民生活が更に苦しくなる恐れがある。
予算の3割以上を占める社会保障費は、高齢化に伴って増加が続く。借金漬けでは、超高齢社会を乗り切れなくなる。
財政規律の空洞化は経済や社会の土台を揺るがす。首相は健全化の道筋を示さなければならない。
【朝日新聞】9月2日(社説)膨らむ概算要求 野放図正す道筋見えぬ
予算は国がめざす経済の姿を示す。政策を優先付けし、税金を無駄なく、有効に使うことが政府の役割だ。
だが、高市早苗政権がまとめる2027年度当初予算案は、編成の起点となる各省庁の概算要求で、一般会計で前年度を大きく上回る140兆円前後と膨らみそうだ。額が示されない「事項要求」も目立ち、実際はさらに多くなると見込まれる。要求が野放図になれば、今後の査定や国会審議で切り込み不足に陥らないか。歳出の大幅拡大が前提の財政運営は、経済の土台を揺るがすリスクを高める。
政権は、27年度を「責任ある積極財政元年」と位置づけ、予算編成のあり方を抜本的に見直すとした。大型の補正予算への依存から「脱却」し、当初予算の重視を各省庁に指示。経済成長のための「強く豊かな日本」投資枠も新設し、首相も財務相も要求額の「シーリング(天井)」は「もはやない」とした。
成長関連の要求が拡大した。半導体やエネルギー分野を増やした経済産業省の要求総額は、26年度当初と25年度補正の合算を2兆円以上も上回る。目的に合わぬ政策が紛れていないか精査が必要だ。
事項要求は、防衛費で少なくとも160項目にのぼる。年末までに予定する安全保障関連3文書の改定で、防衛費の増額を打ち出す方針が背景にある。少子高齢化で伸びが続く社会保障費や、自然災害への対策など、生活に直結する予算の要求も増える。
来春から実施予定の食品消費税の減税には、年約5兆円かかる。政府の借金である国債の利払い費は金利の上昇が響き、前年度から3・5兆円増の16・5兆円を見込む。
歳出拡大路線が鮮明になる一方、既存予算を削りこむなど、財源を主体的に確保しようという動きは鈍い。政権はインフレなどによる税収増や税外収入を当てにするが、恒久財源とは言えない。企業などへの特例的な減税や優遇制度の見直しも進んでいない。
国債の発行額は、当初と補正を合わせた近年の平均と同程度の40兆円程度に抑える方針とみられる。だが、補正はコロナ禍以降に急増した。補正分を単に上乗せするだけでは、脱却と言えない。
政府の投資を、成長に結びつけるのは簡単ではない。政権の積極財政への金融市場の懸念も一因となり、金利上昇や円安が続く。米国も波及を恐れ、懸念を伝えたり、協調して為替介入したりした。予算編成に楽な道はない。歳出と歳入のバランスある予算の道筋を描かなければ、無責任な積極財政となる。
消費税をなくす全国の会