衆院比例削減 少数派切り捨てる傲慢(「東京」)

2026年3月22日
【東京新聞】3月19日<社説>衆院比例削減 少数派切り捨てる傲慢
 自民党の高市早苗総裁(首相)と日本維新の会の吉村洋文代表が衆院議員定数を465議席から、約1割に当たる45議席削減する法案を今国会に提出することで一致した。維新は比例代表のみ削減するよう主張している。
 選挙制度の改革には慎重で公正な議論が必要だ。特に多様な民意を反映する比例代表の削減は少数意見の切り捨てにつながる。断じて容認できない。
 衆院議員定数の1割削減は、高市政権の発足を受けた自民、維新両党による連立政権合意に盛り込まれている。
 両党は昨年の臨時国会に、定数を465から45以上減らすことを明記し、削減の具体的方法を巡る各党・会派の協議が1年以内にまとまらない場合、自動的に「小選挙区25・比例20」を減らす「プログラム法案」を提出した。
 同法案は衆院解散に伴い廃案となったが、衆院選では両党とも衆院議員定数の削減を公約。維新は比例代表の1割削減を強く主張している。
 現行の衆院選挙制度は小選挙区で民意を「集約」して政権交代を可能とし、比例代表で幅広い民意を「反映」することを趣旨としており、比例だけの削減は、多様な民意を反映する機能を弱める。
 比例定数を45削減した場合、2月の衆院選での得票数を当てはめて本社が試算すると、自民、維新の総定数に占める議席割合は75%から80%超に上昇した。8割以上の議席を占めた戦時中の「翼賛選挙」と同水準に達し、少数派を切り捨て、民意を過度に集約することを意味する。
 国民を代表する国会議員の選び方や定数は、議会制民主主義の土台である。選挙制度を見直すなら比例削減ありきで強引に進めるのでなく、衆参二院制の意義やそれぞれの役割、定数の適正規模などを含めて幅広く議論すべきだ。
 吉村氏は「スピード感を持って物事を決めていく政治のために、民意の集約を重視するべきだ」と強調するが、少数派を切り捨てる正当な理由になり得ず、傲慢(ごうまん)さすら感じる。自民党内で定数の自動削減に異論が出るのも当然だ。
 選挙制度はすべての議員や候補に関わる。巨大与党が強引に議論を進めるのではなく、与野党による丁寧な議論を通じて、民意を適正に反映する制度の在り方を探るべきである。