黒字リストラ―株主利益を最大化退職の強要も(「赤旗日曜版)、減税と大幅賃上げ―「富の集中」に切り込む政策を(「赤旗」)

2026年3月7日
【しんぶん赤旗日曜版】3月8日 黒字リストラ―株主利益を最大化退職の強要も
 東京商エリサーチの調べでは、昨年は好成績の企業での希望退職の募集、いわゆる黒字リストラが広がりました。業種別では電饗業が4割を占めます。 
 黒字リストラが広がる背景には、会社全体では黒字でも赤字の事業部門を切り離したり、縮小したりして会社の収益を増大させ、企業価値を高めるよう、ファンド(基金)などの大株主が強く圧力をかけていることがあります。とくにアクティビスト(物言う株主)と呼ばれるファンドは、株価引き上げや配当の増大など自らの経済的利益を図る目的で積極的に経営陣にリストラ要求を突きつけるようになりました。アクティビストを納得させる成長戦略を提案できない経営陣は保身もあり、黒字リストラに乗り出しています。黒字リストラは、企業は株主の利益を最大化するのが目的であるという株主資本主義の帰結だと言えます。
 電機企業で黒字リストラが横行しているのは、事業構造の転換を急速に進めているからです。家電やPC、スマホなどを中心に、経営の失敗もあり産業競争力が急速に失われました。そこで、モノづくりを縮小し、デジタルサービスなどへ事業構造を転換するようになっています。日立製作所や富士通などに見られるように、いわゆるDX (デジタルトランスフォーメーション)事業への転換です。
 事業構造の転換では、その事業部門の労働者の処遇が問題になります。以前は正規社員に対しては、基本的には配置転換や職種転換で処遇してきましたが、近年ではいきなり希望退職の募集に踏み切ることが増えています。これは、配置転換や職種転換では時間とコストがかかるので、割増退職金など退職費用を計上しても、希望退職を募集した方が、時間とコストを節約できるからです。
 これまで日本企業は、正規社員に対しては長期勤続雇用を維持するとして人間尊重経営を標ぼうしてきました。黒字リストラの横行は企業が日本的雇用システムを大きく転換したことを意味します。すなわち経営戦略と人事戦略に基づき、雇用はその時々の事業戦略に基づいて決定されるとの宣言です。労働者が事業構造の転換に必要なスキルや能力を身につけなければ、企業は労働者を退職させることをためらわなくなったということでもあります。 
 同時に黒字リストラの横行は、労働組合の変質を意味します。大企業労働組合は、基本的に企業と協調的な関係ですが、それでも業績悪化が何期も続く場合などを除けば、正規社員の雇用維持に注意を払ってきました。ところが現在、黒字リストラにも明確な抵抗を示さず、希望退職を受け入れています。希望退職といっても、何回も面談し退職強要に近いことをしても、労働組合は対応しないことが多いといいます。希望退職を免れても、低業績を理由に賃金や賞与が低く抑えられ、退職せざるを得なくなる場合も出てきます。 
 黒字リストラは、雇用や賃金面で日本的雇用システムを転換させようとする企業の意思を示すものです。 
                 藤田実(ふじた•みのる桜美林大学名誉教授)

【しんぶん赤旗】3月5日<主張>減税と大幅賃上げ―「富の集中」に切り込む政策を
 国民一人ひとりの暮らしを良くすることで日本経済を立て直す―。日本共産党の田村智子委員長は2日の衆院予算委員会で、大企業への投資を「成長戦略」の柱に据える高市早苗政権の経済政策を真正面から批判するとともに、労働者が生み出した利益が大企業や超富裕層に集中することを是正すれば、消費税減税や大幅賃上げが実現できると訴えました。
■超富裕層へ課税を
 所得が1億円を超えると、所得税と社会保険料を合わせた負担割合が低下していく「1億円の壁」。所得1億円を超える超富裕層は3万2000人にのぼります。「なぜ大金持ちを優遇するのか」という声が起こるのも当然です。
 田村氏は「タックス・ザ・リッチ(富める者に課税を)」で財源をつくることで消費税を5%に下げることはできると主張しました。
 さらに、田村氏は大企業にため込まれた富を株主ばかりに回すのではく、働く人に還元すれば、物価高騰を上回る大幅な賃上げが可能だと追及しました。
 2015年度から24年度までの10年間で、大企業は2倍の純利益をあげながら、正社員の実質賃金はマイナス2%となっています。一方、株主配当は2・3倍、自分の会社の株を買って株価をつり上げて株主のもうけを増やす自社株買いは3・8倍へと急増しています。そのうえ、大企業は利益をあげながら、大規模な早期退職募集「黒字リストラ」まで行って、株価をつり上げようとしています。
 労働者がつくった富を株主ではなく、労働者に回さなければ、いつまでたっても賃上げが実現することはありません。ところが、高市首相は「各企業が利益をどのように配分するかは政府による評価にはなじまない」として、大幅な賃上げを実現しようとする姿勢がまったくありません。
 大企業が利益を過度に株主に還元し始めたのは、小泉純一郎政権が2001年に自社株買いを解禁し、第2次安倍晋三政権が15年に大株主にとって魅力ある企業になるための指針を打ち出したためです。行き過ぎた株主還元に歯止めをかけるのは政治の責任です。自社株買いの規制とともに「黒字リストラ」をやめさせることが必要です。
■「まず成長」の誤り
 一方、高市首相は「成長投資だ」「パイを大きくする」といって、安倍元首相が掲げた経済政策「アベノミクス」の二番煎じに突き進もうとしています。しかし、大企業への支援で企業が収益をあげても、賃金は上がらず、日本経済が一向に上向かないことは、この間の経済の低迷をみれば明らかです。
 日本共産党は、賃上げを実現するために、大企業の内部留保の一部に税金をかけ、中小企業への賃上げ直接支援と一体に最低賃金の大幅引き上げをおこなうよう提案してきました。
 日本経済が「失われた30年」という長期停滞から抜け出せない原因となっている「富の一極集中」に切り込まなければ、消費税減税の財源も大幅な賃上げを実現する方策も生まれません。