GDPのマイナス転落―続く「底冷え」高市政権が追い打ち(「赤旗」)、自維の定数削減法案 理屈も手順もでたらめだ(「毎日」)、衆院定数削減案 期限切り合意迫る横暴(「東京」)

2025年12月7日
【しんぶん赤旗日曜版】12月7日<経済これって何>GDPのマイナス転落―続く「底冷え」高市政権が追い打ち
 7〜9月期の実質GDP(国内総生産)成長率が前期 (4〜6月比0•4%減と6期ぶりにマイナスとなりました。年率換算で1•8%減です。
 原因は、GDPの半分以上を占める個人聾がわずか0•1%増だったうえ、輸出が「トランプ関税」の直撃を受けて1•2%減と大幅に落ち込んだことによるものです。とくに輸出の2割を占める米国向け、中でも自動車が7〜9月期に前年廨比で20%超も減少したことが響いています。 
 雇用や所得環境の悪さ、さらには将来不安を反映して住宅投資も9•4%減と大幅に落ち込みました。 
 前期まで5期連続のプラス成長だったとはいえ、すベて0%台の成長で、個人消費や住宅投資は慢性的に停滞しています。設備投資も増減を繰り返すマダラ模様で力強さ、持続力に欠け、頼みの輸出も2018年頃から前年割れとなり、貿易収支も赤字傾向にあります。日本経済は、いわば「底冷え状態」にあります。
 日本経済の弱さは、他の指標にも表れています。企業倒産件数は、22年から増大し始め24年に11年ぶりに1万件を突破し、増え続けています。失業率は2%台で推移していますが、非正規労働者の比率は高止まりし、雇用不安は続いています。人手不足が叫ばれる中、20年以降、上場企業の早期退職者募集が急激に増え今年さらに加速しています。企業は労務コストの抑制を急いでいます。
 実質賃金も今年9月時点で9ヵ月連続のマイナスです。国民生活の劣化による需要不足で、持続的な賃上げも期待できません。賃金の低迷、高物価、高負担、将来不安が重なって、消費支出も慢性的に低迷しています。とくに、消費全体の約4割を占めるといわれる40〜50代の支出が、賃金の伸び悩みを背景に大幅に減少しています(総務省調査)。賃上げ効果も影を薄めています。
 他方、所得や消費の低迷にもかかわらず、消費者物価は高騰し続けています。物価は21年頃から一転して上昇し始め、25年10月現在、前年比で50カ月連続の上昇、2%超の上昇は43カ月連続です。原因は、戦争などによるエネルギー価格の高騰、円安などであり、経済拡大によるものではありません。 
 経済が停滞する中、24年からAI (人工知能)関連株にけん引されて株価が急騰しています。しかし、経済実態や企業収益からかけ離れた株価急騰はバブルの様相を呈し、早くも乱高下を繰り返しています。 
 日本経済の行く手に厄介な問題が立ちはだかっています。世界経済の停滞、米トランプ政権による一方的な高関税措置、円安などによる物価の高止まり、長期金利の上昇、AI普及に伴う人員削減、そして高市政権の失政などです。とくに高市政権による積極財政や「防衛費」増大、軍事的緊張を高めるような発言、非核三原則の見直しなどは、国民負担の増大だけでなく、いっそう円安や物価高を誘導し、軍事的緊張を高め国民の生命と生活を窮地に追い込む危険な行為です。 
    工藤昌宏 (くどう・まさひろ東京工科大学名誉教授)

【毎日新聞】12月5日<社説>自維の定数削減法案 理屈も手順もでたらめだ
 必要性や根拠を示せないまま、一方的に主張を押し付けようとする。でたらめ以外の何物でもない。
 自民党と日本維新の会が、衆院議員定数の削減に向けた法案を提出する。現行の465から1割減を目標とし、420以下にすると明記している。今臨時国会での成立を目指すという。
 だが、そもそも削減がなぜ必要かは判然としない。人口比でみると、現在の衆院定数は他の主要国に比べて少ない。日本の人口が今より少なかった時代の定数も下回り、戦後最少の水準にある。
 1割という削減幅は前例のない規模である。にもかかわらず、精査した形跡は乏しい。高市早苗首相は「妥当かな、ということで合意した」などとあやふやな国会答弁に終始している。
 削減方法は、衆院の与野党協議会での検討に委ねる。ただし、法施行から1年以内に結論が得られない場合は、「小選挙区25、比例代表20で合計45」を自動的に削減するとの条項が盛り込まれた。
 削減幅と期限をあらかじめ与党が決めてしまう。合意できなければ、具体策についても与党案の実現を強いる。「幅広く議論する」との姿勢は見せかけに過ぎない。極めて乱暴だ。
 国会や選挙のあり方は、議会制民主主義の根幹にかかわる。党派を超えて丁寧に議論することが大前提のはずだ。
 人口の少ない地方の小選挙区や、中小政党が重視する比例の議席をやみくもに削減すれば、少数意見の切り捨てにつながる。
 2大政党制を志向して導入された小選挙区比例代表並立制だが、現状は多党化が進んでいる。民意を適切に反映するための抜本改革を求める声も強い。腰を据えて取り組むことが欠かせない。
 今回の案には、自民が抵抗する「政治とカネ」の改革から論点をすり替える思惑がある。議員歳費などの削減額は限定的だ。
 与党が「身を切る改革」をうたうのであれば、より痛みを伴う企業・団体献金の規制強化や、政党交付金の減額などに踏み込む方が理にかなっている。
 臨時国会の会期は残り2週間を切り、審議時間も限られる。「結論ありき」で拙速に推し進めるようなことがあってはならない。

【東京新聞】12月6日<社説>衆院定数削減案 期限切り合意迫る横暴
 自民党と日本維新の会が衆院議員定数の削減法案を国会に提出した。連立政権合意に基づき、定数1割削減の手順を定める「プログラム法案」だが、国民の代表を選ぶルールを強引に変更しようとするもので、到底認められない。
 法案は、衆院議員を現在の465人から「420人を超えない範囲」に減らすとし、具体的な削減内容は、選挙制度のあり方と併せて各党・会派による衆院協議会で結論を出すと定める。1年以内に結論が出ない場合、小選挙区は25、比例代表は20を自動的に削減する規定も盛り込まれた。
 自動的に削減する規定は、定数削減を主張する維新の意向によるものだが、1年と期限を区切り、野党に定数削減を迫るのは極めて異例で、野党のみならず、自民党内からも反発の声が出ている。
 議会制民主主義の土台となる選挙制度に関する議論は、党派を超えて幅広い合意を得るべきだ。
 結論が得られなければ、政権の方針に従って定数を自動的に削減する「脅し」のような法案に幅広い賛同が集まるとは思えない。自らの横暴さにすら気付けないなら自民党の病根は極めて深い。
 そもそもなぜ定数の1割削減が必要なのか。なぜ合意期限が1年なのか。定数削減に固執する維新からも、追随した自民からも、合理的な説明は聞こえてこない。
 維新は当初、比例代表を50削減する案を主張していたが、中小政党に不利との激しい反発があり、小選挙区も減らすことにした。
 比例代表を減らせば多様な民意が反映されにくくなる一方、小選挙区を減らせば、投票価値の格差である「1票の不平等」を解消しづらくなるとの問題がある。
 本紙の試算では、小選挙区の定数を25削減すれば20都道府県で定数が減ることになる。議員1人当たりの人口が最も多い県と最も少ない県との1票の格差が広がっていくのは確実だ。
 1票の格差に対し、司法が「違憲」「違憲状態」と判断すれば、国会はその都度、都道府県ごとの定数を調整し、格差の縮小に努めてきた。今回の定数削減は、「投票価値の平等」を追求してきたこれまでの取り組みに逆行する。
 選挙制度や議員定数は、民意の反映方法や投票価値の平等など、さまざまな観点から丁寧に議論することが欠かせない。「削減ありき」は最もなじまない。