(「東京」)「本音のコラム」戦争を招く報道 齋藤 美奈子(高市首相の答弁とマスネディアの責任ー筆者)、医療・介護の改悪―保険外し拡大の“国家的詐欺”(「赤旗」)

2025年11月21日
【東京新聞】11月19日「本音のコラム」戦争を招く報道 齋藤 美奈子
 中国の台湾侵攻が「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、存立危機事態になり得る」。7日の高市首相の国会答弁で、中国政府が国民に日本への渡航自粛を呼びかけるなど日中関係が急激に悪化している。
 中国の対応は過剰だとする意見もあるが、いやいや高市首相は、安倍、菅、岸田各氏を含む歴代首相が「触らぬ神に祟りなし」で来た相手にいきなり爆弾を投げたのだ。そりやここぞとばかりに反撃してくるでしょ。 
 こういう時はメディアの対応も問われる。新聞各紙の社説は中国も牽制しつつ喧嘩両成敗風に両国に冷静な対話を求めているが、火をつけたのはこちらである。首相が発言を撤回して謝罪するか辞任しない限り、もはや火消しは無理だろう。まして「首相発言はまっとうな内容で評価できる」などと書いてる産経新聞の社説は火に油を注いでいるとしか思えない。 
 さらに由々しきは共同通信の世論調査だ。首相が答弁した「台湾有事」で集団的自衛権を行使するとの考えについて「どちらかといえば」を含めて賛成48•8%、反対44•2%。反中感情を煽るような質問をなぜ今するかな。国民も戦争に賛成だという結果を示して首相を援護したい?
 「存立危機事態になり得る」とは「戦争状態に入る可能性がある」ってことですからね。危機状態を招いているのは誰なのよ。 (文芸評論家)

【しんぶん赤旗】11月21日<主張>医療・介護の改悪―保険外し拡大の“国家的詐欺”
 自維連立政権のもとで、自己負担の拡大、病床削減をはじめ医療・介護制度の改悪メニューが目白押しです。自公政権の社会保障切り捨て路線をさらに推し進めるもので、長年保険料を徴収しながら、いざというときに保険が使えないという“国家的保険詐欺”を拡大します。
 すでに、▽窓口負担・利用者負担を重くし受診や利用をさせない▽診療報酬・介護報酬の抑制・引き下げによる医療機関や介護事業所の倒産・廃業、統廃合、病床削減で提供体制が縮小・崩壊し受診や利用ができない―という事態が起きています。それをいっそう広げる方向です。
 加えて重大なのが、保険の適用範囲を狭める“保険外し”の拡大です。
■サービス不足顕著
 介護では2014年の法改悪で、要支援1・2の訪問介護と通所介護が保険から外され市町村が行う総合事業に移されました。全国一律の保険給付と違いサービスの基準や単価は各市町村任せ、しかも予算に上限がつけられているため「サービス不足が顕著な自治体が多数」(全国介護事業者連盟)なのが現状です。
 高市早苗政権はこれをさらに要介護1・2に広げ保険から外そうとしています。介護保険の重大な切り崩しです。
 国は要介護1・2の人を「軽度者」と呼びますが決して軽度ではありません。認知症の人は要介護1・2の時期にもっとも専門的なケアが必要です。自立支援・重度化防止からも必要な訪問・通所介護の保障が重要です。総合事業への移行で「事業継続が困難な事業所が激増し、介護難民の増加が見込まれる」(同連盟)との声も上がっています。
 介護保険創設時には、特養など3施設とショートステイ(短期入所など)の居住費(水光熱費と室料)や食費は保険給付でしたが、05年の改悪で保険から外されました。保険外し=自己負担化の対象は累次の改悪で広がり、いまさらなる拡大が狙われています。
■自己責任論の強化
 医療でも、保険給付だった入院時の食費のうち食材費が給付から外れ自己負担となるなどの改悪が行われました。
 いま自維政権が標的にし、今年度中の制度設計を狙うのが、解熱鎮痛剤、咳(せき)・痰(たん)の薬、花粉症、アトピー性皮膚炎の薬などの保険外しです。同じ効能の市販薬を自分で買えというものです。保険がきかず市販薬を買うと、厚労省の試算でも患者の負担額は8倍から50倍に跳ね上がります。
 維新は、そうした市販薬のある医薬品(OTC類似薬)をはじめ「薬剤の保険適用除外」や「セルフメディケーション」の推進を掲げます。政府の言う「セルフメディケーション」とは、軽い病気やケガは医者にかからず市販薬ですませろということです。日本医師会は重い病気の見逃しや副作用を懸念しています。
 維新は「民間保険の活用方法を含めた医療保険システムのあり方の検討」も掲げます。病気を自己責任とし、社会保障としての公的保険を縮小する方向です。大企業・超富裕層の優遇税制見直しと大軍拡中止によって財源をつくり、国の責任での医療・介護制度の維持、拡充こそ必要です。